SDGsを体現する「金融」の仕組みを学んで世の中を変える強力なツールを手に入れよう!

2020年12月01日 09時36分

教員インタビュー!第17弾・中村先生に聞いてみました!

    世界をめぐり動かしている
    お金の流れを知る 


     私が専門としているのは「金融(ファイナンス)」です。金融というと難しく感じるかもしれませんが、要するに、お金がある部門からない部門へと流し、社会経済を成り立たせる仕組みのことです。このことを理解することは、社会を変革する金融の方法を考えたり、提案するベースとなります。

     簡単に説明しましょう。みなさんが銀行にお金を預けると、そのお金は企業に貸し付けられ、様々な商品・サービスを生み出します。また働く人たちに賃金が支払われると、そのお金は消費や貯蓄にあてられ、お金は循環していくのです。それが「銀行」を中心としたお金の流れです。
     一方、私が授業で教えているのは金融でも「証券」です。こちらは預金者の代わりに投資家が、国の発行する国債や、企業が発行する株式を購入します。これによって国や企業は必要なお金を調達できます。たとえば、国はこの国債で国家財政を賄い、社会保障も行うことから、結局、私たちに戻り、お金は循環します。

     このようにお金は、私たちの体の「血液」と同じような役割をしており、それがきちんと循環していることが大切です。どうやったらよりうまく循環させられるかを考えることが「金融」という学問なのです。

     たとえば、2008年のリーマン・ショックでは、サブプライムローン問題に端を発するアメリカの大手証券会社(リーマン・ブラザーズ)の破綻が回り回って日本の大学生の内定取り消し騒ぎにまでつながりました。グローバル化の時代の金融は世界の動きと連動し、金融を知ることは世界を知ることと同じなのです。
     現在、金融の世界は大きな岐路にあり、SDGsやESG金融へと一気に舵切りを始めています。日本でもここ数年でかなり進展しました。日本銀行や財務省はSDGs/ESG金融に注目し始め、年金基金はESG運用を宣言し、また小泉環境大臣がESGを社会に浸透させるためにESGファイナンス賞の創設をしたことも記憶に新しいです。

     私は学生の皆さんにまず金融を身近に感じてもらいたいと考えています。そこで、野村證券や三井住友銀行などの専門家の方々とともに金融の社会的課題について考え、提案をしていく「ビジネス&ロー・ワークショップII」、「ビジネス&ロー・ワークショップIII (金融ワークショップ)」という授業を作りました。
     たとえば、ひと口に銀行といっても世界的インフラ融資を行うプロジェクト・ファイナンス部門もあれば、事業の後継者がいない企業をコンサルしていく部門もあり、業務は多様です。この授業では、受講学生たちは金融機関の第一線で活躍する専門家と一緒になって、貧困、食糧、環境問題など世界に山積するさまざまな社会問題を考え、最終的に提案していく力を身につけていきます。
    ジャーナリストになりたくて
    大学では経済学部を選択

     
     私は、本ばかり読んでいる子どもでした。社会科も好きで、小学校のころにジャーナリストになろうと決め、それなら英語が必要だろうと中学生でアメリカに短期留学もしました。
    高校はエスカレーター式の女子高で自由な校風だったので、ディケンズやブロンテ姉妹、パール・バックやスタンダールなど欧米の作家の本を読み耽っていました。
     将来の選択の時期なると、英文学部も関心がありましたが、やはり大学ではジャーナリストの仕事につながるように経済学部を受験しました。経済学部なら社会のあり様を広く学べるのではないかと思ったのです。



    ゼミ旅行で行ったシンガポールが
    その後の一貫した研究テーマに


     学部では経済を学ぶゼミナールに入りました。ゼミの先生は、理論はもとより、学問とは何か、学ぶとはどういうことか、また社会科学全般について折々に教えてくださいました。それが心に残り、卒業したのちにもとても役に立ちました。
     またゼミ旅行ではシンガポールに行きました。欧米社会にばかり関心が向いていた私にとっては初めてアジアに触れる機会となりました。欧米の成熟社会とは異なり、若い人たちが一生懸命働き、街の喧騒が夜遅くまで続く躍動感に圧倒されました。「発展する国ってすごいんだな」と率直に思い、それをきっかけにアジア経済についての本をいろいろ読むようになりました。

     就職活動はマスコミ一本でしたが、まさかの最終面接で落ちてしまいました。ゼミの先生に相談したところ「大学院進学という道もある」と言われ、大学院を受験することにしました。
     大学院では、専攻を経済学から、より現実に即した企業対象の研究をする経営学に変え、シンガポール経済発展の基盤となっている金融システムの研究か企業分析をやろうと思いました。
     研究を始めた当時、アジア諸国は経済発展や企業についての先行研究がほとんどありませんでした。さらにインターネットが現在ほど発達しておらず、とにかく現場に行って足で稼ぐことが研究の基本でした。
     シンガポールでは大学の先輩方などのツテを頼ってMAS(金融庁)、シンガポール証券取引所、金融機関の資料を入手し、戻っては分析することを長年繰り返しました。思うように資料が集まらず苦労しましたが、その中で新しい発見をして、論文や本を書いたりすることができました。大変な日々でしたが、それが私の研究者としての基礎を作ってくれたと思います。



    金融や貿易の要として
    独自の道を行くシンガポール

     
     シンガポールはかつてイギリスの植民地総督T.ラッフルズ卿によって発見された地域ですが、イギリスが自由放任(レッセフェール)の植民地支配をしたこともあって自由でコロニアルな雰囲気で、多民族の文化が入り混じるとても面白いところです。
    1965年に独立後は「国の発展には人材こそが全て」と教育に力を入れ、他のアジア諸国とは異なる独自の路線を歩みます。リー・クアンユーをはじめ賢いリーダーたちに率いられ、考え尽くされた経済政策で、短期間で発展を遂げてきました。この興味深い国を研究する関心は尽きません。

     
    長期的な利益を得たいからこそ
    社会的責任を果たす企業に投資するーESG って何?


     今、先進諸国では少子高齢化が進み、将来国民に十分な年金を支給できるよう巨額の年金を盛んに運用しています。もちろん国民のお金なので、大切に運用するという受託者責任を守らねばなりません。
     ただし欧米の年金基金は、その範囲内においてESG(環境・社会問題・ガバナンス)を重視している企業に投資をすべしという法律を設けています。ESG金融は企業の健全な成長を促し、投資家も長期的に大きな利益を得られると考えられているからです。金融の視点から見たSDGs(持続可能な開発目標)と言えるでしょう。

     投資家には機関投資家と個人投資家の2種類があります。個人投資家と比べて機関投資家(年金基金、財団、大学、保険会社など)の投資額は莫大で、それによって企業に圧力をかけることができます。例えばアメリカのハーバート大学は国際金融市場では有名な投資家です。いま世界中の機関投資家は「脱炭素」社会を目指し、炭素を排出する企業には投資しません。企業は機関投資家からの投資がほしいので、その意向に沿っていかざるを得ないのです。つまり、「ESG」とはより良い社会を目指す投資家と企業の橋渡しと言えます。

     機関投資家だけではありません。日本ではまだ、自分が預金したお金がその後何に貸し出投資されているかに関心を持たない人が多いですが、ヨーロッパの人々は金融においても意識が高く、ソーシャルバンクという自分の預金の投資先を選べる銀行もあります。オランダのトリオドス銀行は、「Know where your money goes.(あなたのお金がどこに行くのか知っていますか?)」と謳っています。
     新型コロナウイルスの流行以降、金融の分野もさまざまな変化をし、あるいは現在ある流れがさらに強まるでしょう。今後は個人ベースでも、自分の預けているお金の使われ方により意識的になり、最後まで責任を持とうという考え方が広がるのではないでしょうか。
    金融には良い方にも悪い方にも
    世界を変えられる力がある – ゼミ学生たちの熱い思い   


     金融はみなさんが思っている以上に身近なものです。もし大学で奨学金を利用しようと考えているなら、それも金融の成果の一つです。金融は社会を回すインフラです。まずそのことを知って、金融の理論や具体的な仕組みについて学んでほしいです。
     私のゼミでは3年次に、全国の金融ゼミが競い合う「日経STOCKリーグ」(日経新聞主催・野村ホールディングス協賛)というコンテストに参加しており、数々の入賞もしています。企業分析をして投資先などを提案するので、ぐっと金融についての知識がつきます。
     ゼミの学生たちは金融知識を使い、自由な発想で提案を行っています。地域金融とマイクロファイナンスの理論を用いて災害後の地域に資金を回す研究、ユニークな地方創生策の「おつり投資」や奨学金問題を解決する「教育は百年の計ファンド」、他にも長寿企業や食品ロスなど、毎年、さまざまなテーマで分析・提案を行っています。現在、こうした経験をした多くの学生が金融機関、ゼネコン財務担当者やコンサルタントとして活躍しています。
     このように金融の仕組みを理解すれば、社会を良くするための効果的な手段として使うこともできます。実際に低金利で貧しい人に融資して経済的な自立を促してきた貧者の銀行「グラミン銀行」や、発展途上国の子供たちの予防接種を後押しするために世界銀行とジョイントしたワクチン債券の発行など、たくさんの事例があります。
     もしもあなたが発展途上国の社会における貧困をなんとか良くしたいと思っているなら、金融を勉強することをお薦めします。ボランティア活動もいいですが、金融を学べば、具体的にどういう道筋で貧困を変えていけるのか、その仕組みをきちんと考えられるようになるからです。
     ほんとうに世の中を変えたいのなら、金融を勉強することで変えてみませんか、というのが、私からみなさんにいちばんお伝えしたいメッセージなのです。


    <ご経歴>
    中村 みゆき教授 プロフィール
    1996年3月九州大学経済学研究科経営学専攻 単位取得満期退学
    1996年 - 1997年 九州大学経済学部助手
    1998年 - 2002年 西日本工業大学講師
    2002年 - 2006年 創価大学経営学部講師
    2006年 - 2013年 創価大学経営学部准教授
    2013年 経済学博士 (博士号) 創価大学
    2013年〜 創価大学経営学部教授
    ページ公開日:2020年12月01日 09時36分
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