リーダーシップ研究で学ぶ、SDGs時代のマインドセット

2022年02月11日 11時00分

教員インタビュー!泉谷先生に聞いてみました!

    リーダーシップの本質を探り、
    一人ひとりがいきいきと働ける社会へ 


    みなさんは「リーダーシップ」という言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
    「あの人にはリーダーシップがある」「私にはリーダーシップが足りない」といったように、生まれ持った資質だと考える方が多いかもしれません。ですが、これまでのリーダーシップ研究によって、リーダーシップは誰でも発揮できるもの、経験や教育によって育てることができることが分かっています。また、リーダーだけが指示を出し、積極的に動く組織よりも、一人一人がリーダーシップを発揮する組織の方がパフォーマンスも高く、まとまりもあることが多くの研究で明らかになっています。
    私はこのことに着目し、経営学や組織心理学の観点から研究しています。
    なぜリーダーシップ研究が重要なのか?
    リアルな声から目す社会貢献
    私が専門的に研究している分野は「リーダーシップの発達」です。
    周りに良い影響を与えるリーダーシップがどのように身に付くのかを調べるために、実際に優れたリーダーとして評価されているビジネスパーソンや学生にインタビュー調査を行いました。そこで明らかになったのは、良いリーダーとみなされている人たちは、集団経験の中での成功体験、また自分の生き方を問い直すような、対立・失敗・苦労を経験しており、その中で仲間や周囲の大人からアドバイスや励ましを受けながら前に進み、信頼関係を構築しながら周囲を巻き込み、新しいことを興すリーダーへと成長しているという事実でした。
    このような研究を重ね、それらの結果について広く発信していくことで、効果的なリーダーシップ教育や人材育成方法についても議論が深まり、企業や団体の構成員一人一人がイキイキと活躍できる組織づくりに貢献できると考えています。

    またリーダーシップの発達には段階的なプロセスがあるという認識が広がれば、人を「できる人」「できない人」と最初から分けるような考え方が無くなると思います。その人の今のあり方を受け入れた上で、成長を促すための適切な機会を提供するというアプローチが一般的になると思うのです。

    リーダーシップ発達に関する研究は、たくさんの方の「生き様」を知ることができるという点で、大変面白く、私自身の生き方にも大きな影響を与えています。
    私には一人一人が主体的に自分らしく、そして幸せに所属組織の活動や社会貢献活動に参加できる社会をつくりたいという願いがあるのですが、そのためにもこの研究を続けていきたいと思っています。
    「コミュニティのために何ができるのか?」
    リーダーシップ研究につながった、
    ニューヨーク留学時のボランティア経験
    私は英語が好きな学生だったので、10代の頃は漠然と留学に憧れていました。兄がアメリカに留学していたことや、当時大好きだった洋楽の影響もあるかもしれません。地元の短期大学卒業後いったん就職したのですが、留学の夢を諦めきれず、22歳の時にニューヨーク市立大学に入学しました。心理学を専攻し、世界中から来た学生たちと勉強した日々はとても刺激的でしたね。

    私にとって留学中、最も印象的な体験はボランティア活動です。アメリカ人の友達が課題やアルバイトで忙しい中でもボランティアに勤しんでいて、私にはそれがとても不思議でした。その疑問を友達にぶつけてみると「アメリカでは家族や学校だけでなく、地域コミュニティでの自分の役割を意識する人が多いんだよ。だからボランティアをするんじゃないのかな」と教えられ、とても驚きました。自分はニューヨークというコミュニティに対して何も貢献できていないのではないか。そんな問題意識から、エイズ患者に食事を提供するボランティア活動に参加しました。実際にエイズ患者の方と触れ合うことで、エイズ関連のニュースがグッとリアリティを持って感じられるようになり、これをきっかけに他のボランティア活動やNGOでの活動を始めるようになりました。

     
    ボランティア経験によって社会課題が身近に感じられた経験は、私にとって大きな衝撃でした。アメリカでは社会課題に対して、学生でも物怖じせずに自分の意見を発信します。市民一人ひとりが自分以外の他者に想いを馳せ、行動を起こすことで社会課題の解決に繋がるのではないか……アメリカでの経験は「社会の課題解決に主体的に取り組む人を育てたい」という私の人生のミッションを形づくり、後のリーダーシップ教育・研究に繋がっていきました。

    ただ、学生時代は将来自分がリーダーシップについて研究するなんて全く想像していませんでしたし、30代後半で大学でのリーダーシップ教育に携わるまで、大学で学んだ心理学の知識を意識的に活用したことはありませんでした。自分の人生を捧げたいと思う仕事に出会うのは、人それぞれのタイミングがあるのかもしれません。
    SDGs達成に欠かせない、
    ウェルビーイングという視点  

     
    私の研究がSDGs(持続可能な開発目標)に貢献できるとすれば、8番の「働きがいも経済成長も」が当てはまると思います。持続可能な社会を作るには、一人ひとりが持続可能な状態=その人自身のウェルビーイングが維持された状態を目指す必要があります。日本ではウェルビーイングが「幸福」「健康」と同じように位置付けられていますが、ポジティブ心理学の父と言われているマーティン・セリグマンはウェルビーイングを構成する要素として「ポジティブ感情(嬉しい、感激、希望など)」「没頭・没入(時間に忘れて何かに没頭する)」「豊かな人間関係」「生きていく意味・意義」「達成」の5つを提唱しています。

    これらを見ると、ウェルビーイングや幸せは、決して喜びや快楽だけでなく、努力したり、耐えたり、打ち込むなど、ネガティブ感情を伴うことも含まれることが分かります。しかしここに示されていることが深いレベルの喜びや充足感をもたらすことは、みなさんも受験勉強や部活動など、何かを成し遂げた経験を通して知っているのではないでしょうか。真のウェルビーイングや生き甲斐のある状態は社会のためであると同時に、経済的な豊かさの追求が行き詰まる世の中において、自分の中に自分で幸せを生み出すためにも重要な視点でだと考えます。

    そして、これからの時代はウェルビーイングを組織全体へ広げていく視点が大切です。例えば地球の未来に関わるビジョンなど、他者の利益を願うようなマインドセットですね。似たような問題提起がリーダーシップ研究でも起こっており、近年は「サスティナブルリーダーシップ」という、社会や未来の持続可能性を重視したリーダーシップが注目されています。自社やステークホルダーの増益や発展だけでなく、もっと大きな使命感を持って組織が成長と地球規模の真の豊かさと存続を目指す姿勢が、どんな企業にも求められる時代です。

    また、企業活動のグローバル化や地球規模の課題解決への取り組みが進む中で、世界中の人たちと仕事をする機会は今後どんどん増えていくことが予想されます。異なる文化背景を持つ人たちと仕事をする上では、多様性を尊重し、異なる価値を組織の力に変えるリーダーシップが必要です。そのような点でも、リーダーシップ研究はSDGs全体を実現する上で重要であると考えています。

    リーダーシップという言葉自体はありふれたものですが、実は科学的なエビデンスに基づいたリーダーシップの発達に関わる研究は歴史が浅く、2000年代以降に本格化しました。ですからこれから学ぶ学生にとっては、とてもやりがいを感じられる研究分野だと思います。
    個人から組織、そして社会へ
    あなたの視点を広げる学びを創価大学で


    SDGsを達成するには複雑な問題に取り組む必要があるので、中高生の方には「これから世の中はどうなっていくのだろう?」「大変そうだな」と大きなプレッシャーが生まれているかもしれません。一方で企業がSDGsに真剣に取り組むことで、10年間で数兆ドルの経済効果が生まれ、何億人もの雇用が生まれるとも予測されています。SDGsは大変な目標ですが、それだけ大きな可能性に満ちたものでもあるということですね。企業経営が社会に与えるポジティブなインパクトは無限大だと考えます。

    最後にどうすればSDGsを達成できるのかと考えると、結局は一人ひとりの行動を変えるしかありません。リーダーシップや個人のウェルビーイングを追及する学問は、SDGs達成のための第一歩と捉えることができるでしょう。SDGsのようなマクロの目線と、心理学のようなミクロの目線。大学ではその双方から考えることで、深い学びを経験してほしいと思います。

    <経歴>
    1996年 ニューヨーク市立大学シティカレッジ教養学部心理学専攻(学士課程修了)
    2009年 松山大学言語コミュニケーション研究科英語コミュニケーション専攻(修士課程修了)
    2013年 九州大学大学院人間環境学府博士後期課程行動システム専攻修了
    2009年 愛媛大学・教育学生支援機構 教育企画室(特定研究員)
    2010年 愛媛大学・教育学生支援機構 教育企画室(特任助教)
    2012年 松山大学経営学部(特別任用講師)
    2016年 合同会社 Nourish Japan 設立 代表社員就任 現在に至る
    2017年 愛媛大学国際連携推進機構留学生就職促進プログラム推進室副室長着任 現在に至る
    2019年 愛媛大学国際連携推進機構准教授
    2021年 創価大学経営学部准教授 現在に至る
    ページ公開日:2022年02月11日 11時00分
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