経済活動に無関係な人はいない 簿記を通して社会を学ぼう

2022年10月27日 10時47分

再掲載企画!教員インタビュー!第9弾・前田先生に聞いてみました!

    企業の取引を記録する簿記は
    ビジネスに欠かせない


     私は企業や組織の運営に欠かせない簿記原理や会計学を教えています。簿記というと、言葉は聞いたことがあっても、実際にどういうものかイメージをつかめない人がほとんどでしょう。

     「簿記」は企業の売上や仕入などの取引を、帳簿として記録したものです。もし簿記がなければ、企業の経営状態を正しく把握することができません。これでは経営計画も立てられないし、正しい経営戦略を立てることができません。

     たとえばA社という会社があり、過去最高の売上を記録したとします。でも売上以上に仕入や販売経費がかかっていたら「赤字」、つまり儲けは出ていません。「売上があるから」と錯覚して、どんどん販売を続けていったら赤字が膨れ上がり、経営は大変なことになってしまいます。このように経営状態を把握して正確な判断を助けていく、それが簿記の役割なのです。

     私は簿記のことを「大人の算数」だと伝えています。四則演算、つまり足し算、引き算、かけ算、割り算があれば理解し計算できるので、微分積分などは必要ではありません。難しそうと構えることなく、多くの人にしっかりと学んでほしいと思っています。
    創価大学1期生として入学
    在学中に公認会計士試験に合格


     私は兵庫県尼崎市の出身で、創価大学経済学部に1期生として入学しました。この大学入学時に、「大学在学中に公認会計士になろう」と決心しました。実家が裕福とはいえないので、収入が高く安定していること、社会的な地位が高いことなどがその理由です。また、これから続く創価大学の後輩たちのために、道を切り開きたいという思いもありました。

     当時は先輩がいなかったため、他大学では3年生で公認会計士に合格している人もいると聞き、「どうせなら3年生で公認会計士に合格しよう」と決め、毎日8〜10時間の猛勉強に取り組みました。1年生で簿記3級と2級、2年生で1級に合格すると目標を定め、それをひとつずつクリア。そして計画通り3年生の7月に公認会計士試験に合格することができました。

     ただ、後日、まわりの学生から「変人」と噂されていたと聞きました(笑)。当時はいつも早足でしたし、勉強に必死だったので、まったく余裕がなかったんですね。でも、本気になって試験に取り組んだ日々に悔いはありません。
     公認会計士試験合格後は、後輩の勉強のサポートにも注力しました。私は独学で勉強したことも多かったので、理解するのに時間がかかったところも多々ありましたが、私がつまずいてしまった箇所については、特に噛み砕き、わかりやすく教えようと気を配りました。これは現在、本学の伝統となって受け継がれていて、今も先輩が国家試験合格を目指す学生を支えています。

     卒業後は外資系会計事務所に就職しました。当時、国際会計基準はアメリカのほうが20年ほど進んでいると言われていて、待遇もよかったんですね。アメリカにも赴任して2年ほど生活し、アメリカでの在職中に米国公認会計士資格も取得しました。



    税理士試験に挑む学生も応援
    強豪・野球部の部長も務める


     現在、私のテーマゼミでは、難関資格のひとつ「税理士試験」に挑む学生を応援しています。税理士試験は全5科目ありますが、私は本学在学中に「簿記」「財務諸表論」の2科目合格を目指すように指導しています。税理士試験に何年も費やすのでは、本人やご両親など周囲の負担も大きいものです。ですから、このゼミに在籍するからには、「在学中に必ず結果を出す」という強い覚悟が必要になります。今在籍している学生も、卒業していった学生もみな精鋭ぞろいで、毎年、科目の合格者を出していますし、10年間で20名以上が税理士となって活躍しています。

     また、先ほども紹介したように、本学では先輩が後輩の勉強を支えています。勉強は孤独なので、一人ではくじけそうになるものです。先輩や友人たちと共に教え合い、学び合うことで、人間としても大きく成長していくことでしょう。

     もう一つのゼミでは「企業研究」を扱っています。みなさんが聞いたことのある大手企業の有価証券報告書を読み込んで、経営状況を分析していきます。こちらは野球部の学生や外国人留学生なども多く在籍し、多彩な顔ぶれとなっています。また扱う内容も企業だけでなく、社会問題をテーマにすることもあります。創価大学野球部の部長も務めており、かつてゼミに在籍していた学生がプロ野球球団に入団したこともありました。
    自分の目標を決めて
    有意義な学生生活を送ろう


     私自身、過去に20年、本学で国家試験研究室を担当してきました。ゼミでの税理士のほかに、公認会計士、弁護士など難関資格の合格者が続いているのは、卒業生として大変誇らしいことです。

     私は強気で「公認会計士合格」を目標としましたが、もちろん、資格取得だけが道ではありません。学生一人ひとり、それぞれの夢と目標を決めて、有意義な学生生活を送ってほしいと思います。経営学部の勉強に加えて、読書やディスカッションなどにも取り組んでほしいですね。

     ただ、就職活動や将来の人生設計のためにも、簿記と経済観念、経済感覚はしっかり養ってほしいと思います。たとえば、コンビニエンスストアなどのフランチャイズ契約、株式投資、賃貸住宅のサブリース契約など、私たちの生活のまわりにはたくさんの企業と経済活動があります。それがどんな契約で、どんな売上で、どんな経営状況になるのかを一度シミュレートする力があれば、契約相手の言っていることを鵜呑みにせず、自分の頭で意思判断できることでしょう。

     ビジネスでも自分の人生でも役立つ、それが簿記という学問です。私も今まで培った経験を精一杯教えたいと思いますし、歴史を継いでくれる頼もしい後輩たちを待っています。

    <ご経歴>
    前田 清隆教授 プロフィール
    1975年 創価大学経済学部卒業、外資系公認会計士事務所就職
    1998年 創価大学経営学部 教授
    ページ公開日:2022年10月27日 10時47分
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