再掲載!教員インタビュー!第10弾・望月先生に聞いてみました!

現代経営に欠かせない情報処理技術と 人材開発の手法を学ぶ

経営を学ぶうえで
情報処理技術の知識は欠かせない!


 私は情報工学、教育工学を専門としています。今、企業や組織の経営にはデータ分析が欠かせません。現代社会で生活していくうえでも、情報を読み解き、それを理解することがとても大切になっています。また、数理・データサイエンス・AIについてのリテラシーレベルの知識は、文系や理系を問わず学ぶことが求められるようになっています。

 たとえば、今、みなさんは、スマートフォンを当たり前のように使っています。スマートフォンは、インターネットをとても身近なものにしました。インターネットで検索をするとたくさんの情報が一瞬で出てきます。しかし、そうした情報をきちんと整理して、取捨選択できているでしょうか。自分に都合のよい情報や好きな情報だけ、無意識に取り上げていないでしょうか。

 具体的な例でいうと、「朝ごはんを食べる子は、成績が良い」という話を耳にしたことはありませんか。あるいは、そのことを鵜呑みにした大人から「朝ごはんを食べると成績がよくなる」と言われたことがあるかもしれません。

 しかし、これは、「成績が良い人は、朝食を食べていた」ことでしかありません。朝食を食べる(原因)と成績(結果)が良くなるとは限らないのです。朝食と成績の間には、隠れた他の要因があるとも推測できます。たとえば、「決まった時間に寝て、決まった時間に起きるような生活のリズムが安定していて、余裕を持って朝ごはんを食べることができている。さらに生活のリズムが安定していることで、予習や復習も決まった時間にできている」ともいえるのです。

 このように情報を読み解けないと、こうした相関関係(密接にかかわり合い、一方が変化すれば他方も変化する関係)と因果関係(2つ以上のものの間に原因と結果の関係があること)を混同してしまいます。

 せっかく情報を検索しても、出てきたデータをきちんと読み解けなければ、間違った行動をしてしまうかもしれません。私の授業では、こうした身近な話を糸口として、「情報の読み方」や「統計データの読み方」などを学んでいきます。



高校生のころにコンピューターと出合い
大学時代は研究に没頭する


 現代の高校生のみなさんにとってはスマホやタブレット、パソコンなどは身近な存在だと思います。しかし、私が高校生だったころは、まだまだコンピューターは研究者やプログラマなど、ごくごく一部の人のためのものでした。80年代にパソコンブームで(当時はパソコンがマイコンといわれていました)、いろいろなメーカーから、パソコンが販売されました。その魅力にひきつけられ、親に頼み込んで買ってもらい、たちまち夢中になりました。高校の先生からコンピューターは大学に入ってから学べばいい、受験勉強の邪魔になるといわれたことが懐かしいです。
 その後、進学した大学で念願のプログラミングや情報工学を学びました。ちょうどインターネットの黎明期であり、その発展を間近にみることもできました。インターネットを使った遠隔授業に携わることもでき、コンピューターの進歩を肌で感じられたのは、大変幸せなことだと思っています。

 私が大学院で学んでいたころ、ちょうど「第二次AIブーム」のまっただ中でした。とある企業との共同研究のプロジェクトに携わり、私も寝食を忘れてAIの開発に没頭しました。専門家の持つ知識をコンピューターで取り扱うことができるようにするために、専門家の持つ知識を表現する手法や知識モデル化の手法を研究しました。しかし、当時のコンピューターの処理速度に限界があり、徐々に下火になっていきました。

 このとき、「AIでできることがあるといっても、人間が長い間に培った知識や経験の蓄積があり、さらにそれをコンピューターで構造的にすることではじめてAIが機能し、人の役にたつのだ」ということを痛感しました。自動化が実現できた段階で、人がそこから離れてしまうと進歩が止まってしまうのです。

 近年、「AIが人間の仕事を奪う」といわれていますが、あまり意識しすぎるのはよくありません。歴史を振り返ると、技術の進歩に合わせて無くなった仕事はたくさんあります。それに合わせて新しい仕事が生まれています。
 AIの進歩で社会の何が変わるのか、どのような影響があるのかを見極めることが大切です。情報を入力したりシステムをつくりあげたりするのは、そもそも人間です。また、AIが提案した情報などを読み解いて活用するのも、やっぱり人間です。AIやコンピューターはあくまでも便利な道具にすぎません。そう考えていくと、AIが人間の仕事を奪うのではなく、「ともに働く世界がやってくる」といった方が正しいのではないかと思っています。

高性能なコンピューターも、今までの人間の膨大な知識の蓄積があって、はじめて機能します

文系と理系で分けることなく
幅広く学ぼう


 みなさんが高校生になってしばらくすると、「数学が苦手だから文系に」「古文や漢文が苦手だから理系に」などと進路選択をすることになったと思います。近年、「文理融合」などともいわれていますが、まだまだ浸透していません。ただ、経営学や経済学を学ぶうえで、統計学や数学は必須です。文系/理系といった分け方は学問の幅を縮めてしまいます。まずは自分がやりたいと思える学問を純粋にめざしてください。

 また、語学はあたりまえで、数理、AI、データサイエンスが必要になってきます。数学に苦手意識を持つ人もいることでしょう。苦手意識があると学びが止まってしまいます。私も英語の先生が苦手だったことで、英語が嫌いになったこともありましたから、気持ちはよくわかります(笑)。

 ただ、数学が嫌いになるのは、子どものころからの算数のドリルや問題を繰り返し解く勉強法が良しとされているからではないでしょうか。統計学の授業で平均値の計算の仕方を聞くと、多くの学生が答えられます。続けて、「なぜ合計を求めて、個数で割るのですか?」と聞くと、戸惑う学生がほとんどです。これは平均値が持つ意味をきちんと理解できていないからでしょう。計算はできるが、意味がわかっていない。それでは興味を持って勉強できません。

 数学・統計学や経営にまつわる知識がないと、信頼のおけないデータに騙されてしまうかもしれません。だからこそ、今の世界では数学や統計(データサイエンス)も避けて通ることはできません。「私は苦手」「得意じゃない」と決めつけることなく、しっかりと学力を身につけることが将来の糧になると信じています。



ゼミでは「アクションラーニング(質問会議)」を採用
チームビルディングの手法を学ぶ


 私のゼミでは、プログラミングやデータ分析手法の知識はもちろん、問題解決能力やリーダーシップの養成にも力を注いでいます。
 このときに用いているのが「アクションラーニング(質問会議)」という独特の会議方法です。

 実際の企業の会議では、声の大きな人、発言力のある人ばかりが演説してしまい、一方通行でコミュニケーションが成立しないということがよくあります。
「アクションラーニング(質問会議)」は、会議でしてよいのは「質問のみ」です。相手の考えをどうやったら引き出すことができるか、相手の立場になって考えるよい練習になります。
 また、会議の参加者を引っ張れる立場である「コーチ」として成長するには、どうしたらいいのかもあわせて学んでいきます。

ゼミの様子と、集合写真(2018年度生と2019年度生)。ゼミ終了後には、花火も楽しみました。

地域連携事業にも携わり
ゼミで地域の課題を取り上げることも


 私は2008年度から文科省の補助事業である「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」に参画し、その後、地域連携事業にも関わっています。最近では、「はちおうじ学園都市ビジョン」の策定にあたり、八王子市の学園都市ビジョン検討委員会の副座長を務めました。八王子地域の25大学等が参加する大学コンソーシアム八王子の立ち上げ時から、主要事業の1つにも関わっていて、地域の課題をゼミのテーマとして取り扱うこともあります。たとえば、八王子市は都市農業が盛んです。写真はパッションフルーツの花とその実ですが、これを八王子の名産にする取り組みをテーマにしたこともあります。ある学会の全国大会が創価大で行われた際には、情報交換会の席で提供し、全国から来た大学の先生に知っていただきました。

パッションフルーツの花
パッションフルーツの実
パッションフルーツを会場で提供したときのイメージ

 また、今回のコロナ禍で注目されたオンライン授業やeラーニング教材の整備にも関わっています。今後、教育の世界では、子ども一人ひとりの習熟度に合わせた課題を提供するような学習スタイルが確立されていくことでしょう。

 情報処理技術は、経営はもちろん、金融、教育、人材開発など、幅広い分野で役立っています。情報処理、分析はあくまでも手法であり、思考の材料のひとつであるともいえます。情報処理の技術を生かして、世の中をどうより良く変えていけるか、みなさんとともに考えていきたいと思います。

 私の研究については、https://mmochi.jp/ を参照してください。


<ご経歴>

望月 雅光教授 プロフィール
1991年 近畿大学卒業
1996年 九州工業大学大学院 博士後期課程修了 博士(情報工学)、
1996年 - 2001年 九州工業大学 情報科学センター 助手、
2002年 創価大学 経営学部 専任講師
2007年 創価大学 経営学部 准教授
2012年 創価大学 経営学部 教授

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