教員インタビュー!鈴木先生に聞いてみました!

企業の収益を最大化させる

最適な価格設定を研究

私は、「マーケティング」「消費者行動論」「流通論」という授業を担当しています。

特にマーケティングの中でも「価格」に焦点を当てて、「ダイナミック・プライシング(変動価格)」について研究しています。ダイナミック・プライシングとは簡単にいうと、その商品にどれくらい需要があるかということに応じて、自由に価格を調整することです。

例えば、ホテルの宿泊料金は、同じ部屋でも平日と週末で値段が違いますよね。平日より金曜日や土曜日のほうが宿泊客は多いため、その分値段を高く設定している、これがダイナミック・プライシングのやり方の一つです。JRの指定席の特急料金が繁忙期と閑散期で異なっているのもダイナミック・プライシングなのですが、最近ではプロスポーツの観戦のチケット料金や、オンラインショッピングでもダイナミック・プライシングが導入され、価格を変動させるタイミングが1日単位あるいは数時間単位と間隔が細かくなっています。

なぜダイナミック・プライシングが注目を集めるようになったのかというと、背景にAIの普及があります。AIを使うことで繁忙期と閑散期の予測をし、その結果に応じて最適な価格の設定を柔軟に行うことができるようになりました。最適な価格設定を行うことで企業側の収益を最大化させる、というのがダイナミック・プライシングの目的なのです。

ただ、ダイナミック・プライシングというのは全く同じモノに対して、人によってその時々で支払う価格が違う、ということなんですよね。そのため、高い値段で買った人が値下げされているところを見てしまうと、損をした気分になって不公平さを感じてしまうでしょう。売り手に対して不信感を持ち、インターネットでネガティブな口コミを流すことがあるかもしれません。

企業が収益を確保するという意味では、ダイナミック・プライシングは非常に効率の良い価格設定の方法なのですが、場合によってはお客様が離れてしまう危険性があります。不公平感をゼロにするのは難しいのですが、できるだけそれを抑えたうえで、「より効果的なダイナミック・プライシングを行うためにはどうすればいいのか」ということが、私の研究テーマです。

マーケティングの面白さを知って

研究者を志すようになった

 小学2年生から中学3年生まで野球をやっていましたが、高校では新しいことに挑戦したいと思って、弓道部に入部。毎朝早く登校して朝練をし、放課後は帰りの最終バスの時間ギリギリまで練習をして、土曜日も日曜日も高校の道場へ通う、という毎日で部活動をするために高校へ行っていたようなものでしたね。結果は高校3年生の最後の県大会で負けてしまい、インターハイには出られませんでしたが、弓道に熱中した高校生活でした。

部活動を引退してからようやく大学受験に向けた勉強に本腰を入れるというスタートの遅さもあり、第一志望の大学をはじめとして行きたかった学部は全部不合格。法学部か文学部・歴史学科を志望していましたが、合格したのは経済学部・商学科でした。両親からは浪人しても構わないと言われたものの、私自身は二度と大学入試センター試験(現在の大学入学共通テスト)を受けたくなかったので、進学することに決めました。

 

大学時代はスキーサークルに所属して、合宿など楽しく過ごしました

大学ではもともと法学部に進学して、将来は法律関係の仕事をするか公務員になりたいと考えていたので、正直経済学に興味を持てなかったのですが、「マーケティング」には面白さを感じたんですね。それまでは何も考えずに買い物をしていて自分の好みに合うか、値段を見る程度でした。しかし、マーケティングを学ぶことで、消費者に無意識に買い物をさせるため、売り手がどんな工夫や努力をしているのかが分かってきたのです。値段を付けるには、その商品を作るためにかかったお金だけじゃなく、買う人がその価格を受け入れてくれるのかまで考えて決めています。もちろんモノを作るときにも、どんな形にすれば売れるのか、といったことを全部、売り手が、作る側が、毎日のように考えて、努力をして、作り上げた商品なのだということが分かり、非常に興味を持ったんですね。

しかし、大学の学部だけで学ぶのは時間的にも不十分で、もっと高いレベルで研究をしたいと思って早稲田大学大学院に進学。修士課程で2年間しっかり勉強していくなかでこの道に進んでみようと決心し、研究者を目指すようになりました。

二度と受験生にはなりたくないと思って大学へ入学したのに、その4年後に大学院を受験。さらに大学教員になって、大学入学共通テストを監督する側にまわるとは、「当時の自分は夢にも思っていなかったな、世の中どうなるか分からないものだ」というのが正直な気持ちです。

 

大学でマーケティングを学んだことが大きな転機になりました

データ分析のスキルは

社会人として幅広く活かせる!

 私のゼミでは、3年次の最初の2~3カ月で、まず統計専用のソフトを使ってデータ分析を学びます。今の世の中、特にビジネスではデータを扱えないと話にならないので、まずはしっかり扱うことに慣れるところから始めているのです。

データ分析は道具であって学んだものは使わないと意味がないので、毎年、『マーケティング分析コンテスト』に出場しています。大学生だけでなく社会人も参加するコンテストで勝負をして、学外から評価を受けるので、とてもハードルの高いコンテストですが、やりがいは大きいと思います。ゼミのチームでコンテストに出場するため、共同作業に楽しみや面白さを感じている学生も多いようです。

ゼミの学生たちは、マーケティングがどういうものかを学べる、モノを売ること、モノを作ることをより深く研究できるところに魅力を感じていると思います。

 学生達には卒業後、一人の社会人として先の見えない不透明な世の中を力強く生きていけるようになってほしいと願っています。そのためには知識を身につけるだけでなく、その知識を使って周りに流されることなく、自分なりに考えたうえで行動できることが大切です。知識そのものはどうしても流行廃りがありますが、データを分析してその結果を基に考えるというスキルは廃れることがないので、「分析をして考える力」というのを学生のうちにしっかり身につけていってほしいと思います。マーケティングの専門知識は本を読めば勉強できますが、分析能力は独学ではなかなか身につけられないので、さまざまな企業や公務員でも社会人として幅広く活かせるデータ分析のスキルをゼミで習得してください。

 

人に向き合って、人を大切にする

人間主義のマネジメントを学ぶ

創価大学経営学部は、「人間主義経営」に力を入れて教育をしています。企業経営は人が人を相手に行うものなので、どういうふうに接していくのかを考え、人を大切にしていかないと会社は成り立ちません。いかに人を大切にしてマネジメントをするのか、経営は数字を重視する傾向がありますが、創価大学経営学部では「数字だけでなく、人というものにしっかり向き合う」ということを重要視しているのが、大きな特長だと思います。

ビジネスに興味関心があり、普段何気なくやっていることに対して「なぜだろう」という疑問を持てるような人は、ぜひ私のゼミに来てほしいですね。今、流行っているものが「なぜ流行っているのだろう」と考えることも、マーケティングの研究対象になります。創価大学経営学部は、データを使ったビジネスの手法だけでなく、人に対して真剣に向き合うことも学べ、英語教育にも力を入れているので、グローバルに活躍したいという人にもおすすめです。

 

〈経歴〉

鈴木 拓也 教授プロフィール

2006年3月 早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学
2006年4月 東海大学短期大学部 講師
2012年4月 静岡大学人文社会科学部 准教授
2023年4月 創価大学経営学部 教授

 

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