文学部教員・文学部生より:この夏、学生の皆さんに読んでもらいたい、触れてもらいたいもの(2024) 17
2020年度から行ってきました文学部HPの夏企画「この夏、学生の皆さんに読んでもらいたい、触れてもらいたいもの」を今年も実施いたします。高校生やHP閲覧者の皆さんの夏休みが充実するような作品を紹介していきたいと思います。
17.中堀正洋 准教授 推薦: 『ロシアの思考回路 その精神史から見つめたウクライナ侵攻の深層』 三浦清美著 扶桑社新書
本書は、中世ロシア史を専門とし、この分野の研究をリードする早稲田大学教授三浦清美氏によって著されたロシア正教を軸とした歴史と宗教史の専門書でありながら概説書である。従来あまり取り上げられなかった切り口、たとえば、神の代理人(アウトクラトール)となろうとしたアンドレイ・ボゴリュプスキイ、それに批判的なトゥーロフのキリル、タタールの軛(モンゴル支配)に反旗を翻したトヴェーリ公ミハイル、逆にモンゴルに取り入って勢力の拡大を図ったイワン・カリターなどから、ロシアおよびロシア正教の歴史を辿る。こうした歴史の過程で、ウクライナがどのように誕生したかも理解でき、現在のロシアとウクライナの関係も分かってくるでしょう。学生の皆さんにぜひ読んでもらいたい好著です。