講演会「万有連関の世界認識研究」が開催されました。

芝崎厚士氏

2025年7月9日、創価大学中央教育棟にて芝崎厚士氏(駒澤大学グローバルメディアスタディーズ学部教授)を講師に迎え、講演会「万有連関の世界認識研究」が開催されました(主催:文学部科目「哲学思想特講A」、担当:伊藤貴雄)。

芝崎厚士氏は、東京大学大学院にて朝永三十郎の思想研究により博士号を取得され、現在は国際関係論・国際政治学・国際文化交流史を中心に、哲学・思想史との学際的連携を視野に入れた研究を進めておられます。

講演の冒頭では、芝崎氏がこれまで取り組んできた国際関係論をはじめ、近代日本における新カント派哲学の受容史、そして現代倫理の中核をなす「尊厳」概念に関する学際的研究が紹介されました。

続いて、17世紀初頭に日本へ漂着したオランダ船の部材として伝来したエラスムス像が、栃木県の龍江院に「貨狄(カテキ)さま」などの名で親しまれてきたという、興味深い文化交流の歴史が語られました。この像が、日本において新たな宗教的・民俗的文脈を獲得しながら、近年では再びオランダやスイスとの国際的な対話へと結びついている経緯についても詳しく解説され、聴講者の関心を集めました。

講演会の様子①

このように、ルネサンスの人文学、ドイツ哲学、現代倫理学、さらには日本の民俗信仰をも射程に収めながら、複雑に絡み合うローカルとグローバルの関係性を読み解こうとする試みは、哲学と国際関係論の交差点に立つ「関係性の哲学」の可能性を示すものとなりました。

講演後の質疑応答では、学生や教員から多くの質問が寄せられ、活発な議論が交わされました。学際的かつ国際的な視野から、思想・歴史・文化の相互連関を問い直す貴重な機会となりました。

受講者からは「《謎との出会いが歴史を創る》という視点に惹かれました。エラスムス像が日本で親しまれてきた事実に、人と人、場所と場所をつなぐ不思議な力を感じました」、「「万有連関」という視点から、尊厳と社会のつながりを見つめ直すことができました。哲学が現代にも通じるものであることを実感しました」等の声が寄せられました。

講演会の様子②
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