• NEWS
  • 法学部・岡部教授がスペインのサラゴサ大学で開催された国際科学会議で報告

2015年02月27日

法学部・岡部教授がスペインのサラゴサ大学で開催された国際科学会議で報告

サラゴサ大学で開催された国際会議
サラゴサ大学で開催された国際会議
2015年2月25日から27日までの3日間、スペインのサラゴサ大学で開催された国際会議において、本学法学部の岡部史信教授が研究報告を行いました。同会議は日本研究調査班が主催したものであり、その研究活動・内容・規模等の点でスペイン最大級の日本研究の拠点とも言えるものです。
今回の会議は「Japón y el individuo: Análisis comparado multidisciplinar(日本と個人:学際比較研究)」という主題の下に、スペイン、日本その他の国から特に法律・文学・歴史学等の研究者が参加して、多角的な分析や考察に基づく貴重な研究成果が多く披露されました。
岡部教授の出席の経緯は、同教授のこれまでの研究活動に関係しています。2005年に日本スペイン法研究会の設立メンバーの一員となり、その後2007年に在外研究で半年間ナバラ大学に留学しています。
サラゴサ大学で開催された国際会議
サラゴサ大学で開催された国際会議
そこで、著名な日本法研究者であるフランシスコ・バルベラン氏(弁護士、サラゴサ大学講師)と出会い、日本スペイン法研究会とサラゴサ大学法学部教員との共同作業でスペイン法概論を日本で、また日本法概論をスペインで刊行することを計画しました。これらは2010年に『現代スペイン法入門』、2013年に『Introducción al Derecho Japonés Actual(現代日本法入門)』となって、出版さました。「サラゴサ大学等の主要な方々との作業を行えたことが、今回、同会議に参加させていただくきっかけになりました」と岡部教授は語っています。

今回の研究報告は、「Reforma Laboral del Gobierno de ABE: Su incidencia en la vida social y los derechos de los trabajadores japoneses(安倍内閣の労働改革:社会生活と労働者権に及ぼす影響)」と題して行われました2012年から継続的に検討されている安倍内閣の労働改革について、日本の雇用・労働状況の現状・問題点・改善の方向性を考察の基軸として、1.Sobre las “ABENOMICS”(アベノミクスとは何か)」、2. Flexibilidad en las relaciones laborales individuales(個別的労働関係の弾力化)、3. Aprovechamiento de la fuerza laboral femenina(女性労働力の活用)、4. Conclusión: Los requerimientos hacia las ABENOMICS(結論:アベノミクスに求められる視点)の4つの視座から考察しています。

岡部教授は今回の報告について、「日本は20年以上にも及ぶ景気の低迷、そして他方でグローバル化を基盤とした経済メカニズムや労働市場の急激な動きの中で、新たなパラダイムの構築が急務の課題となっています。この点、スペインも国内の経済危機とEUにおける諸問題を目の当たりにして歴代内閣は経済対策や労働市場改革に頭を悩ませていますが、安倍首相が就任した2012年にスペインのラホイ首相はそれまでの労働者保護路線に比重を置いていた労働法の思い切った改革を行っています。その改革の意図や手法は、現在の日本に参考になる試行錯誤や提案が多く含まれていると感じます。スペインの労働市場、雇用環境、労働者気質などを慎重に分析した上での比較分析が成功すれば、そこで得られる結果は日本に多くの貴重な示唆を与えると考えます。その意味で、スペインの労働法や労働経済の専門家との様々な議論を深めるためのきっかけになることを期待しました」と述べています。
今回の会議以外の場でも、岡部教授は、例えばマラガ大学法学部のフランシスコ・ビラ(Francisco Vila)労働法教授と共同作業を行って、「Reforma Laboral 2012(2012年スペイン労働改革)」、「スペインの若年者雇用」を発表しています。前者では、2012年労働改革の中の特に雇用改革の概要が明らかにされ、また後者では実に50%を超えている若年者の失業問題の背景と動向を明らかにしています。
岡部教授は、「この会議の経験を踏まえ、また現在継続中のスペインの雇用現場の諸問題の分析を通じて、当面は特に日本でも職場環境の劣化が指摘されており、採用差別、職場いじめ、不当解雇などが目立っているが、こうした数々の不当待遇にどう予防策を講じていくか、日本に比較的類似した状況にあるスペインその他の国との比較分析を進めていきたいと思います。」また、「私の今回の報告に多大な助力をいただいた、バルベラン氏とアルベルト松本氏(イデアネットワーク社長、神奈川大学等講師)に対して特に記して感謝申し上げたい」と語りました。
ページ公開日:2015年02月27日