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2019年06月11日

本学で「第86回仏教学懇話会」が開催されました

本学の国際仏教学高等研究所(所長:辛嶋静志教授)が主催する「第86回仏教学懇話会」が、5月29日(水)に本学中央教育棟第8会議室で開催されました。

今回は、オランダ・ライデン大学教授のジョナサン・シルク博士とフランス極東学院准教授ヴァンサン・トゥルニエ博士を講師にお迎えして講演を頂きました。
シルク博士は「敦煌におけるシナ・チベット浄土思想の実践への窓」というテーマで発表されました。敦煌で発見された文書の中には、チベット文字と漢字が併記された二言語文書があり、それらは経典が二つの言語を行き来しながら伝承されていたことを示しています。チベット語経典にはインドのサンスクリット語から翻訳されたもの以外にも、漢文経典から翻訳されたものもあり、中にはチベット文字で中国語を音写したものもあります。これはチベットの人々が漢文を通して、翻訳だけでなく音写によっても仏教思想の実践を行っていたことの証しであり、敦煌における様々な地域の仏教文化の融合をあらわしています。発表後は、経典の書写がどのようにして行われてきたのか、誰がその書写をしていたか等について活発な議論がなされました。

トゥルニエ博士は「“南路”に見られる仏教の系譜」とのテーマのもと、発表されました。南インドに栄えたアーンドラ王朝期の初期(紀元前2世紀)から後7世紀にかけて作成されたとされる、仏塔や仏像などに刻まれた様々な碑文があります。仏教は歴史の中でおよそ二十の部派に分かれたとされていますが、碑文には寄進者の名前、寄進する対象者、祈願の内容だけではなく、所属する部派の名前も見つかっています。それらの碑文を集め、どこにどれだけの仏塔・僧院があり、それぞれどの部派に所属していたのかをマッピングすることによって、仏教の伝播した歴史や部派の分布などが明らかになっていくということです。発表後は、碑文の読みかたや、それを他の資料(経典など)とどう照らし合わせて研究していくのかについて、参加者と活発な意見交換が行われました。
ページ公開日:2019年06月11日