ヒューマングライコームプロジェクトにおける連携・協力に関する覚書が締結されました

創価大学は、東海国立大学機構並びに自然科学研究機構とともに生命科学研究の重要事業として、ヒューマングライコームプロジェクトを開始するため、本プロジェクトの連携・協力に関する覚書を締結しました。締結に伴い、11月11日(木)に文部科学省記者会見室において、3機関による記者会見を実施しました。

糖鎖は、細胞表面やタンパク質に結合している糖がつながった構造であり、「ヒューマングライコーム」とは、ヒトの網羅的糖鎖情報を意味します。本プロジェクトは、ヒトの糖鎖情報をデータベース化し、国内外の研究者・研究機関に公開することで、次世代生命科学への飛躍的な発展と、医療・ヘルスケア革新の実現を目指します。

本プロジェクトは、科学技術・学術審議会が2020年9月に公表した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップの策定 -ロードマップ2020-」に掲載され、東海国立大学機構の名古屋大学及び岐阜大学が共同で設置する糖鎖生命コア研究所、自然科学研究機構生命創成探究センター及び創価大学糖鎖生命システム融合研究所の3つの研究施設が連携し、中核となって推進します。

記者会見では、文部科学省の共同利用・共同研究拠点に認定された、上記3つの研究施設で構成する「糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点」についても説明するとともに、12月6日に実施予定のヒューマングライコームプロジェクト特別シンポジウムの開催についても紹介しました。

本学の田代康則理事長は、「糖鎖の分野で世界をリードしゆくために、その中核拠点の使命を果たせるよう本学としても全力で取り組んでまいりたい」と述べました。また、本学糖鎖生命システム融合研究所の西原祥子所長(教授)は「糖鎖生物学(糖鎖が関わる生物学)と糖鎖情報学(糖鎖に関わる情報学)の融合を標榜する研究所として、ヒューマングライコームの推進に向け、頑張っていきたい」と述べ、木下フローラ聖子副所長(教授)は「我々がこれまで開発してきた糖鎖科学ポータルGlyCosmosを活かし、世界的に糖鎖研究に役立つよう、さらに拡張・改良していきたい」と語りました。

教員情報

教授

西原 祥子

ニシハラ ショウコ

専門分野

機能生物化学、細胞生物学、発生生物学、医化学一般、糖鎖生物学、幹細胞生物学、生化学、分子生物学

研究テーマ

生体における糖鎖の役割を明らかにすることを目的として、研究を行っています。ショウジョウバエ個体やES細胞、iPS細胞、癌細胞、癌幹細胞、ヒトモデル細胞、オルガノイドにおいて、様々な遺伝子工学の手法を用いて、糖鎖関連遺伝子の発現を調節して糖鎖機能の解明をしています。また、一部の遺伝子については、ノックアウトマウスを作製し、解析を行っています。

(1) ショウジョウバエを用いた糖鎖関連遺伝子の解析;生物種を越えて保存されている糖鎖の生理機能の解明
ショウジョウバエは、最も遺伝学の進んでいるモデル実験動物です。「生物種を越えて保存されている糖鎖の生理活性」に焦点を置いて、ショウジョウバエの糖鎖関連遺伝子の変異体やノックダウン体の表現型の解析や生化学的分子生物学的解析から、生物の発生における糖鎖の役割を明らかにしていきます。特に、血液幹細胞の維持と分化に必要な糖転移酵素、神経の軸索形成に必要な糖鎖構造などについて、現在、解析を行なっています。

(2) ヒトや哺乳類の多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)、オルガノイドにおける糖鎖機能の解明
(1) で明らかになった糖鎖機能がヒトや他の哺乳動物にも共通するものであるか、胚性幹細胞を中心とした培養細胞で検討していきます。具体的には、ES細胞やiPS細胞を対象に、「糖鎖の幹細胞維持や分化における役割を解明する」することを目的とします。このプロジェクトでは、2008年に『ES細胞の維持に糖鎖(ヘパラン硫酸)が関与する』ことをはじめて明らかにしました。それをさらに押し進め、上述の4つの糖鎖構造がナイーブな多能性状態を維持に必要なことを明らかにしました。現在、それ以外の様々な糖鎖にまで解析の範囲を広げています。胚性幹細胞における糖鎖の機能解析の例は、今なお多いとは言えず、この分野でパイオニアとしての役割を果たしています。

(3) PAPS輸送体ノックアウトマウスの機能解析
PAPS輸送体は、糖鎖やタンパク質の硫酸化に必須であり、これがないと各々の分子は硫酸化修飾を受けられません。私達は、2003年にこれを初めて単離・同定しました。現在、ノックアウトマウスを作製して解析を行なっています。このマウスが様々な疾病を誘発することを見いだし、それらの発症機構について解析をしているところです。

(4) 未診断疾患に関わっている糖鎖関連遺伝子の機能解析
これまでの解析から、糖鎖が多くの希少な未診断疾患に関わっていると予測されたので、それらの解析も開始しました。疾病との関連が見いたされた変異をもつ糖鎖関連遺伝子の機能の喪失を、モデル生物や幹細胞からの分化系、オルガノイドなどを用いて解析し、病気との関係を明らかにしていきます。

教授

木下 フローラ聖子

キノシタ フローラキヨコ

専門分野

計算機システム・ネットワーク、生体生命情報学、応用ゲノム科学、生物分子科学

研究テーマ

糖鎖の機能解明のための糖鎖インフォマティクスリソースの開発

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