教育学部・飯村周平講師の研究成果が国際的な学術誌で発表されました
教育学部・飯村周平講師らによる論文「Key taxa of the gut microbiome associated with the relationship between environmental sensitivity and inflammation-related biomarkers」が、2025年1月17日に国際的な学術誌Microorganismで発表されました(注1)。
最近の研究では、抑うつや不安などの精神症状が、体内の炎症反応や腸内細菌叢の構成と関連することが指摘されています。私たちの以前の研究では、環境感受性(注2)という気質的特性が高い個人は、腸内細菌叢の多様性が低いほど、高い炎症反応(C-reactive protein)や腸管透過性(lipopolysaccharide-binding protein)を示していることがわかりました(Iimura et al., 2024)。それを受け、今回の研究では、具体的にどの腸内細菌種が環境感受性と炎症指標の関連に関与しうるのかを探索的に検討しました。
Iimura et al.(2024)で収集したデータを2次分析した結果、科(Family)レベルでは、Marinifilaceae、Barnesiellaceae、Akkermansiaceae、属(Genus)レベルでは、Family XIII AD3011 group、GCA-900066225、Ruminiclostridium 1による関与が示唆されました。さらに詳細な検討の結果、環境感受性が高い個人ほど、これらの菌種の保有量が少ない場合に高い炎症反応や腸管透過性を示していることがわかりました。
今回特定された細菌種を保有していることが、環境感受性の高い人の炎症や腸管透過性にとって保護因子になる可能性がありますが、その因果関係は明らかではないため、さらなる研究の進展が期待されます。
(注1)Microorganismは微生物に関する研究成果を出版する国際誌の一つで、スイスの出版社MDPIから発行されています。
(注2)ここでの環境感受性とは、ネガティブ・ポジティブ両方の環境刺激に対する被影響性の個人差を説明する気質やパーソナリティ特性のことを指します。環境感受性の詳細は、飯村講師が運営するウェブサイト「Japan Sensitivity Research」(https://www.japansensitivityresearch.com/)をご覧ください。
■論文情報
Takasugi, S., Iimura, S., Yasuda, M., Saito, Y., & Morifuji, M. (2025). Key taxa of the gut microbiome associated with the relationship between environmental sensitivity and inflammation-related biomarkers, Microorganisms. 13(1), 185, doi: https://doi.org/10.3390/microorganisms13010185
■ジャーナルの論文掲載ページ
https://www.mdpi.com/2076-2607/13/1/185
教員情報

講師
飯村 周平
イイムラ シュウヘイ
- 専門分野
発達心理学、青年心理学
- 研究テーマ
環境感受性理論にもとづく心理社会的発達の個人差メカニズムの解明