文学部・伊藤貴雄教授が「ベートーヴェンと高田博厚」をテーマに講演

         復刊された高田博厚訳『ベートーヴェン』

2025年10月26日、埼玉県内の会場にて、第三文明社主催による文化講演会が行われ、本学文学部の伊藤貴雄教授が「ベートーヴェンと高田博厚」をテーマに講演しました。

今回の講演は、第三文明社よりロマン・ロラン著『ベートーヴェン』(高田博厚訳)が第三文明選書として復刊されたことを受け、その訳者である彫刻家・高田博厚を記念して企画されたものです。同書の解説を執筆した伊藤教授が講師として招かれました。

高田博厚(1900–1987)は石川県鹿島郡矢田郷村(現・七尾市岩屋町)出身で、フランスに渡り、彫刻家として国際的に活躍しました。ロマン・ロランと直接交流し、ロランとガンジーの会見に立ち会ったことでも知られています。

埼玉県中部に位置する東松山市は、「高坂彫刻プロムナード~高田博厚彫刻群~」をはじめ高田作品を多数所蔵しています。そのことから今回、東松山市近隣地域の会場を用いて講演が実現しました。講演会には東松山市森田光一市長からメッセージが寄せられ、同吉澤勲教育委員会教育長をはじめ多くの来賓が参加しました。

また、創価大学で2024年に開催された「ベートーヴェンと《歓喜の歌》展」では、創立者・池田大作先生が青年期に高田訳『ベートーヴェン』を書写した資料が展示され、注目を集めました。これが今回の復刊と講演企画の一因にもなっています。

講演では、高田博厚が26歳でロランの『ベートーヴェン』を翻訳した経緯や、1930年代にロランと直接交流し、ロランとガンジーの会見に立ち会った歴史的背景が紹介されました。また、ベートーヴェンの理念「苦悩を通じての歓喜(Durch Leiden Freude)」がロラン、高田、そして創立者へとどのように受け継がれたかについても語られ、聴衆の大きな関心を集めました。

伊藤教授は講演を終えて次のように述べました。
「高田博厚、ロマン・ロラン、ベートーヴェンをめぐる精神の連帯は、一人の芸術家の伝記にとどまらず、人間の尊厳をどう守るかという問いにつながっています。高田ゆかりの東松山市で講演できたことは光栄であり、市民の皆さまとこのテーマを共有できたことは大きな喜びです。」

高田博厚 作「ロマン・ロラン像」
(東松山市所蔵)
高田博厚 作「礼拝」
(東松山市「高坂彫刻プロムナード」)
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