2021年09月06日

創価大学発ベンチャー企業(株)コアシステムジャパン

 株式会社コアシステムジャパンは、創価大学理工学部(旧工学部)での研究成果を実用化し、社会に貢献するために設立された創価大学発ベンチャー企業です。
 本学理工学部教授でコアシステムジャパンを設立された渡辺一弘会長と崔龍雲社長、本学での中心者として、共同研究を推進されている西山道子理工学部准教授、理工学研究科大学院生として参画されている門倉さん、本学卒業生としてコアシステムジャパンで活躍されている佐々木さんと山崎さんに、その取り組みを紹介していただきます。
 
・会社設立の経緯について教えてください。
株式会社コアシステムジャパン 代表取締役 会長
理工学部共生創造理工学科 渡辺 一弘 教授
 私は、1996年(H8)ヘテロコア構造の光ファイバセンサを発明しました。これは、光ファイバの間にコアの径の異なる光ファイバを挿入して融着したもので、異径の光ファイバを用いることから「ヘテロコア」と名付けました。光ファイバのヘテロコア部分が緩やかに曲げられると、コアの境界部分で極めてわずかな量の光が漏洩します。この変化を検知することで、環境の変化をとらえています。
 この発明はとてもシンプルですが、実用性に富む可能性を持っていましたので新規性が認められ、2001年(H13)特許として成立し、以来この技術を用いた特許出願は70件以上、成立した特許権はおよそ20件(米国、韓国特許も含む)になります。
 以来、経済産業省や文部科学省の大型プロジェクト、企業との連携にと発展し、大学の研究室から工業的製品としての道を歩み始めました。そして、産学連携のあるべきウィンウィンのスキームを模索してきたわけです。また、この発明をもとに、多くの学術論文、特許、著作が公開され、学生が育ってゆきましたので教育の上でも大変効果的であったと思います。2006年に文部科学省の私立大学社会連携推進事業にも採択され、企業4社とともにヘテロコア光ファイバセンサの実用化を目的とした、「SPANプロジェクト」を立ち上げましたが、ここで“SPAN”とは技術が架け橋となって社会をカバーするという意味で使った訳です。この時、プロジェクトの参加企業の中核となって産学連携を推進するためには、大学発ベンチャー企業を作るのが速いと思い、色々と熟慮しましたが、創価大学の教員と学生が努力して創生した新しい技術を活用して社会に貢献することは、大学人としてのもう一つのあり方という考えに至りました。その志を共有できた同僚の崔教授とともに、2008年当社を設立するに至った訳です。
・会社設立にあたってご苦労されたことは?
株式会社コアシステムジャパン 代表取締役 社長
理工学部情報システム工学科 崔 龍雲 教授
 新しい概念の光ファイバセンサを社会に認識して頂くまで、大変時間がかかりました。弊社製品の多くは、社会インフラに関わる維持管理に使用されるものであり、長時間の耐久性、信頼性が要求されるものです。従来の電気式のセンサから新しい概念の光方式センサへの切り替えには、既存の概念に取って代わる発想の転換も必要です。既存のセンサに対する概念やコストの壁を破り、最終的に利用者に認識していただくまで、時間がかかったことが最も大きな苦労でした。
 研究段階でいい結果が得られたとしても、製品として利用者に受け入れていただくまでには乗り越えていかなければならない幾度の山がありました。財政的基盤が盤石ではないベンチャー企業にとって、押し寄せてくる財政的な圧迫をも克服しなければならないことは宿命でもあります。
一方、財政的な裏付けがあったとしても、一般社会に製品として普及させ、社会貢献と共に事業を成功させようとする使命感を持ち続けなければ、ベンチャー企業は簡単に成り立たないでしょう。
 さらに、いかなる技術的な発展があったとしても、人の和ほど事業の発展に肝要なものはありません。優秀な人材と言っても多くのパターンがありますが、ベンチャー企業としての使命感を持ち、同じ目標に向かって努力し、協力していただける人材の発掘はとても難しいことだと実感しています。
 コアシステムジャパンは、これまで数々の試行錯誤を繰り返しながら、創価大学、そして取引先の皆様のお陰で、今年で設立以来13期目を迎えることができました。これからも、創価大学との産学連携を一層と強めるとともに、社会実装の市場開拓を推し進めて、飛躍の礎をさらに高く築いて参りたいと思います。
 
・共同研究ではどのようなメリットが得られますか。
理工学部共生創造理工学科
西山 道子 准教授
 
 コアシステムジャパンとは、会社設立時より、大学内の研究成果に基づいて製品化するにあたっての課題を共有し、実際に屋外環境などで使用できるヘテロコア光ファイバセンサの共同研究開発を行っています。
 大学の研究室での研究開発は、外乱のない理想的な環境でのセンサ性能評価を行いながら研究を進めていますが、製品化においては、理想環境とは異なり、様々な要因でセンサの耐久性、安定性が求められます。
 この共同研究開発で、大学での研究だけでは得られない実用的な製品にするための視点を知り、課題に取り組むことが出来、貴重な経験を得ています。本学の大学院生もコアシステムジャパンでのインターンシップとしてセンサ開発に携わらせて頂き、即戦力のエンジニア、現場を知る研究者となるような経験をさせて頂いています。
 
・学生の立場から見た共同研究は
大学院理工学研究科博士後期課程
情報システム工学専攻
門倉さん
 大学の研究室ではなく、コアシステムジャパンの製品開発現場で、実際にセンサ作製のインターンシップを経験させて頂く中で、センサの作製技術の習得とセンサ性能評価を行いました。
 コアシステムジャパンの開発スタッフの方々と一緒に、センサを設置する際の具体的な設置方法やセンサ形態を考える機会をいただき、自身の視野も広くなったと実感しています。
・製品や事業の状況について
株式会社コアシステムジャパン
佐々木さん
 ヘテロコア光ファイバセンサ技術を応用した製品は、大手建設会社を始め、計測器メーカ、そして宇宙や海洋の独立行政法人など、様々なお客様に対して試験的導入などを進めてくることができました。中でも現在は大手電線メーカやインフラ点検企業と共同で防災・セキュリティー・社会インフラ構造物のモニタリングに対しての新しいヘテロコア光ファイバセンサ技術を導入するとともに、光と無線のハイブリッド技術へと昇華させ、DX(デジタルトランスフォーメイション)化に向けて進展を図っています。
 また環境汚染を防ぐための特定物質のモニタリング、及びロボットを必要とする顧客からのセンシング技術に関わる相談も増えてきており、まもなく新分野での新しいヘテロコア光ファイバ技術の製品も完成する見込みです。このようにユーザからの要望に応える試作品の開発や導入も行いつつ、それに続く本格的な導入に向けての調整やデータ収集も行っています。
 
・将来の展望について
株式会社コアシステムジャパン
山崎さん
 私はこの4月に当社に入社しました。3月までは創価大学理工学部の助教として、株式会社コアシステムジャパン、他の企業と共同でヘテロコア光ファイバセンサの研究開発を行っていました。
 今後の株式会社コアシステムジャパンの発展のためには市場の拡大により事業を推進していく必要がありますが、現在の社会ではSDG’sへの貢献も求められています。大学との共同研究はその大きな柱となると考えています。助教時代に学生と共同研究に取り組んだ経験からも、大学と企業との共同研究は、専門分野の枠にとらわれない新しい技術を研究開発するだけではなく、それに関わる学生にとって大学で得た知識を生かす貴重な経験にもなり、社会で活躍する人材の育成に貢献できることにもなるからです。これからは社会にヘテロコア光ファイバセンサを普及していくため、事業の基盤を整備しつつ、大学との連携を強化していきたいと考えています。
 

今年、コアシステムジャパンと創価大学との間で研究成果の事業化を目指し、互いに協力して取り組むための連携協定も締結しました。
また、今までに創価大学とコアシステムジャパンと共同で出願した3件の特許が登録されています。

株式会社コアシステムジャパンの製品情報、お問い合わせは以下のサイトをご確認ください。
(外部サイト)株式会社コアシステムジャパン(http://www.core-system.jp/
 

ページ公開日:2021年09月06日