川井研究室の大脳形成研究チームが、研究誌Scientific Reportsに論文を発表

生命理学専攻・川井教授

 創価大学大学院・理工学研究科・生命理学専攻、理工学部・共生創造理工学科の川井研究室・大脳形成研究チームが、甲状腺機能亢進症治療薬メチマゾールの脳形成への直接的な影響を発見し、研究誌Scientific Reportsに論文を発表しました。
出版論文サイト: https://www.nature.com/articles/s41598-025-17482-4
著者:曽明子1、中西誠1. 2、永山貴大1、実森広宣2、池田光一1、申惠蓮1, §、川井秀樹1,2
1.
創価大学大学院理工学研究科・生命理学専攻
2.創価大学理工学部・共生創造理工学科(現在所属の研究機関:米国ジョンズ・ホプキンス大学・生体工学科、§韓国脳研究所・認知症研究グループ)
 バセドウ病などの甲状腺機能亢進症における治療薬メチマゾール(チアマゾール)は、血中の甲状腺ホルモン濃度を低下させる薬で、日本のみならず世界中で使用されています。この治療薬を妊娠中に投与することによって出生児が発達障害などを生じる可能性があることから、妊娠中の使用を控えることが推奨されています。一方で、甲状腺機能低下症の妊婦においても、出生児が発達障害などを生じることから、メチマゾールの胎児への影響が、甲状腺ホルモンの血中濃度への影響によるものか否かは明らかではありませんでした。
 川井研究室の大脳形成研究チームは、マウスにおいて甲状腺ホルモンの血中濃度や聴性脳幹応答が正常な状態においても、メチマゾールが脳形成に影響することを発見しました。特に聴覚皮質において、第5層遠心性ニューロンの異常な皮質内分布や、発達障害でみられる未成熟な棘突起の増加が観察されました。第5層は音の特徴の選択や声などの複雑な音の聴覚学習に重要で、これらを担う皮質下投射ニューロンと交連線維投射ニューロンが存在しています。私たちはこれら2種類の遠心性ニューロンの活動電位において、メチマゾールによるそれぞれ異なる影響を明らかにし、これらを含む第5層神経回路において活性化の低下を見いだしました。これらの研究から妊婦におけるメチマゾールの投与が、胎児の脳形成に直接的に影響を与え発達障害を生じることを示唆しました。

副学部長・教授

川井 秀樹

カワイ ヒデキ

専門分野

神経生物学(神経生理学、神経薬理学)

研究テーマ

大脳の形成、機能、修復
1) 大脳新皮質の形成・発達の分子メカニズムの解明と発達異常の修復方法の開発
2) 神経伝達物質アセチルコリンによる神経回路制御機構の解明
3) 経験(感覚喪失など)による脳の学習のメカニズムの解明
4) 脳梗塞における神経保護と幹細胞を用いた再生医療

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