医学とは違うアプローチで生命や病気の謎を解明

西原 祥子教授 工学部 生命情報工学科
(広報誌「SUN」2014年4月号:「学問探訪」に掲載記事より)

時代の最先端をいく 生命情報工学科

工学部といえば、ロボットを開発したり、ロケッ トを飛ばしたりなど、機械を相手に研究している というイメージが強いかもしれません。でも、工 学の研究対象は幅が広く、最近ではゲノム情報 ( 全 遺伝子情報 ) や細胞情報といった生命の基礎情報 も工学部の守備範囲に入ってきています。
創価大学工学部においても、生命情報工学科で 最先端の研究が行われています。なかでも注目さ れているのが西原 祥子教授率いる研究室。生物 の発生や免疫、病気などに深く関与する「糖鎖」 の研究をしています。糖鎖とは聞き慣れない名前 ですが、いったいどのようなものなのでしょうか?
「糖鎖は細胞の表面にあります。各種の糖が鎖 のように連なったもので、タンパク質に結合して います。その役割を解明するため、ショウジョウ バエやES細胞を用いて研究を行っています」
すでに筋ジストロフィー患者の筋肉欠損と糖鎖 の関係を解明したり、ES細胞の維持に糖鎖が関 与することを世界に先駆けて発表するなど、着々 と成果も上がっているそうです。

糖鎖の働きを解明すれば 病気のメカニズムもわかる

左から博士後期課程2年三浦 太一さん、博士後期課程2年小倉 千佳さん、博士前期課程1年神田 祐樹さん

「医学部では、たとえばがんを解明しようとし たら、がん細胞という異常な状態を研究します。 わたしたちのやり方はまったく逆で、正常な状態 を知ることを出発点にしています。ES細胞はい ろいろな細胞に分化しますが、正常に分化すると きに糖鎖がどのように働いているのかを観察する のです。そのうえで、分化がうまくいかなかった ときは糖鎖に何が起こっているのかを見る。正常 な状態がわかっていれば、異常な状態もよくわか るのです」
つまり、糖鎖の働きが解明されれば、今まで明 らかにされてこなかった、さまざまな病気の詳し いメカニズム解明につながることになります。さ らには治療・予防にも役立つことでしょう。大き な可能性を秘めた研究から目が離せません。

血液型は糖鎖の型で決まる!
おなじみの ABO 式の血液型。何がどう違って血液型 が決まるのかご存じですか? なんと糖鎖の型の違いなのです。赤血球自体はみな同じですが、その表面にある糖鎖の型の違いにより、血液型が決まるのです。

研究者の力を 伸ばしてくれる 西原先生の研究室

「ES細胞に興味があり、その研究をするために博士課 程に進みました。世間では博士号を取得しても就職先がな いのではと思われているようですが、優れた先生について きちんと研究をしていれば大丈夫だと感じています。西原 先生は学生一人ひとりに壮大なテーマを与えてくれます。 大変ですが、やりがいがあって力もつく研究ができます」
(平野 和己助教談)

平野助教(手前)と研究室の皆さん
西原 祥子 Shoko Nishihara
東京大学理学系大学院化学科博士課程修了。理学博士。慶応義塾大学、東京慈恵会医科大学、University of North Carolina at Chapel Hill、三菱化成生命科 学研究所を経て、1991年創価大学生命科学研究所細 胞生物学部門へ。2003年より現職。
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