「差異を乗り越え、一対一の人間として向き合う」日本人学生と外国人留学生が共に生活する友光寮で大きく成長!
いよいよ本年3月に国際学生寮の滝山国際寮(男子寮)と万葉国際寮(女子寮)がオープンします。この国際学生寮は、多くの日本人学生に寮生活の機会を提供すると共に、2014年に採択された文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」で掲げた外国人留学生の受け入れを促進し、寮内での異文化交流を通して、国際的に活躍できる人材を輩出していくことを目的としています。
待望の国際学生寮のオープンを前に、今から2年前の2015年、国際教養学部生や留学生の受け入れがはじまった友光寮で寮長を務めた菅野さんに、寮の魅力や留学生との寮生活の経験について話を伺いました。
菅野さんが感じた一番の寮生活の魅力はなんでしょうか?

たくさんあり過ぎて一番と聞かれると悩みます(笑)。3年間の寮生活を通じ、「人間の中で人間は鍛えられる」ということが一番の魅力なのかなと思います。寮は生活の場なので、人の喜怒哀楽が全部見えてしまいます。友人の嫌な部分に触れた時に、そこで関係を終わらせることもできます。「あいつのこういう所が気にくわないな。もう仲良くするのをやめよう」と思うこともできるんです。しかし、寮生活は、そこが一番問われるところで、嫌でも毎日会うんです(笑)。自分一人では乗り越えられない悩みに直面したりした時にみんなでそれを乗り越えていく中で、お互いを高めあえる人間錬磨の環境が寮です。
3年間の寮生活で、私はどんな人の悩みにも寄り添いたいと思うようになりました。なぜなら人間が悩みを乗り越えた時に生まれるエネルギーやパワー、人の輝きというのをたくさん見てきたからです。
最初に感じた寮の印象はどのようなものでしたか?
私が過ごした寮は友光寮です。意識の高い、志が高い人が多いなと驚きました。入寮の最初のミーティングで、先輩が「みんなの将来の夢は何?」と聞きました。「世界銀行に勤め、貧困をなくしたい」とか「外交官になりたい」と言う寮生が多くいました。彼らはその夢に向かって真剣に、毎日深夜まで勉強していました。夢や目標に突き進んでいる彼らの姿から大きな触発を受け、寮に入って本当によかったと思いました。実際に寮の仲間がポーランドで行われたノーベル平和賞受賞者の世界サミットに参加したり、外交官や外資系コンサルに就職が決まったりして、夢を実現しました。
寮生活の中でのターニングポイントを教えてください!
2つあります。1つは1年生のゴールデン・ウィークの頃に大きな悩みにぶつかりました。親や友人にも相談できなかった悩みを先輩が聞いてくれ、「竣介、本当にラッキーやな」ってすごく楽天的に励ましてくれたんです。「今、経験している苦労というのは、全部、これから多くの同じような悩みを持つ人達を励ますために与えられた試練なんだ」と言われた時に心から感動しました。この経験で考え方が大きく変わりました。その時から、私は「苦労」を「ただの苦労」に終わらせるのではなくて、「何のための苦労なのか」と考えるようになり「成長のための苦労」にしていこうと思えるようになりました。
もう1つは自分が寮長になり、留学生を寮に受け入れた時です。これまでの常識がすべて通じないと感じました。たとえば、ある留学生からは「私はゲストだから、寮の掃除とかミーティングに参加する義務はない」とつき返されました。文化が違うため相容れない部分がいくつもありました。しかし、私は一人一人を大切にする寮をつくりたいと思っていました。そこで、ざっくばらんに留学生が意見を言い合える場をつくりました。率直に思いを伝え合い、互いの問題を解消できる場をつくったことで、実際、留学生の寮に対する満足度、寮に対する愛着心が高まって、今では、みんなが家族のような関係になれたことは大きな経験でした。
留学生はどの国から来ていたのですか?
キューバ、ギリシャ、ブラジル、アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、モンゴル、台湾などです。留学生と共に生活すると、日本人だけの寮生活では起こりえない出来事がたくさんありました。印象的だった出来事として、中国の内モンゴル自治区出身の留学生が馬頭琴をもってきていて、たまに演奏するんです。寮中に響きわたって、「いいな」と思う人もいたり、「勉強ができない」と思う人もいたりして、かなり悩みました(笑)。また、友光寮は男子寮の中で唯一食堂が無く、自炊をするタイプの寮です。ある日、韓国の留学生のところに、実家から大量のキムチが送られてきました。共用の冷蔵庫に入れたところ、たちどころにみんなの食材にキムチのにおいが移ってしまい(笑)、これまた問題になりました。
この時は大学に相談して、キムチ用の冷蔵庫を寮に導入してもらいました。また、反対に留学生に理解してもらうのが難しかった日本の習慣は、みんなで掃除をするということでした。僕ら日本人は小学生のころから、教室をみんなで掃除していましたが、このような習慣がない国の留学生は、そういうことをやっていなかったので、寮をみんなで掃除することを理解してもらうのがなかなか難しかったです。
どのような思いで2年生以降も寮に残ろうと思ったのですか?
寮生活は原則1年間ですが、後輩のサポートとして、2年目以降も寮に残れる制度があります。自分が寮生活を通して大きく成長できたという思いがあったので、そういう経験を後輩の寮生にもして欲しいと思い、寮に残ることを決めました。後輩の可能性を拓くためにできることがあるなら何でもやろうと決めていました。4年生になって寮を出たあとも、就職活動においても、寮生活で学んだことを大切にして結果を出すことが、寮の発展につながると思って、全力で挑戦しました。
先輩が後輩を大切する伝統があるんですね!

自分たちが心がけていたのは、目の前の後輩を自分以上の人材にするということでした。これも先輩たちにしてもらっていたことです。それは、変わらなかったですし、変えてはいけないかなと思います。単なる先輩後輩という関係では生まれないような信頼関係です。先輩はどんな時間に部屋に行っても、話を聞いてくれました。日常からそうでした。いつも影から支えてくれていました。
また、男子寮には「人間錬磨の人材城」という指針があります。人間そのものを学べる寮、世界や社会に貢献できる人に成長するための寮です。寮生もそのような人になろうと思っている人が多く、自分も世界で活躍したいと思っていました。
寮生活のあとは留学に行き、現在はキャリアサポートスタッフの責任者をされていると伺いました。
ガーナに1ヶ月、タイに9ヶ月留学しました。ガーナではマイクロファイナンスという途上国の人たちに対して金融支援を行っているNGOでインターンシップをしました。ガーナは、アフリカの中で初めて植民地支配から独立した国ということもあって、政治的にも経済的にも発展しています。出会った多くのガーナ人が自分の国を愛し、誇りに思っており、かっこいい生き方をしているというのが最初の印象でした。
ガーナでも寮で培った「共感力」というのでしょうか、目の前の一人を理解しようとする姿勢を貫きました。マイクロファイナンスとは、「単に資金を与える」ということではなく、途上国の貧困層の自立支援をすることを目的とし、自助努力を促すというのがコンセプトです。
融資を受けたいという人が何を求めているか、よく話を聞き、一緒に考えて実行していくという活動だったので、まずは自分の提案を受け入れてもらえるように、毎日支援する家に赴いて、家族の状況や何のために融資を受けたいのかを聞いて、徐々に信頼を得ていきました。その行動力は寮生活で鍛えられたのだと思います。インターンシップの最後には、提案したことを実行に移すことができ、利益も出ました。支援した方に一歩前踏み出す勇気を与えることができたと思います。
タイのタマサート大学にも留学しました。現地では、タイの経済開発や民族などの社会学を学んできました。それと同時にタイ語の語学学校に通って、タイ語を習得したり、1か月半泊まり込みで、小学生に英語を教えるボランティアに参加したりするなどいろいろやってきました。
就職活動では、寮生活や留学を通して、人の中でもがき、成長してきた経験をアピールし、大手化学メーカーより内定をいただきました。現在は、キャリアサポートスタッフとして、後輩の進路のサポートを行っています。私自身、寮生活、留学、就職活動と様々なところで先輩方にお世話になりました。今度は後輩のためにできることをやろうと挑戦中です。
国際学生寮の後輩へメッセージをお願いします!
寮はただのアパートのような生活空間ではありません。他者と関わることでストレスがあったり、怖かったりすると思うのですが、それを恐れないで欲しいなと思います。人と人とのぶつかり合いの中で、学べるものがあるのが寮生活の醍醐味なので、その喜怒哀楽すべてを共有しながら、みんなで乗り越えていってください。
また、相手を知ることに対して妥協して欲しくないと思います。自分自身がどこまで出来たかはわからないのですが、何となく楽しそうにしている人でも、その人の悩みや苦労は一対一で話さないとわからないと思います。
創立者は寮について「寮のなかで、切磋琢磨し、励まし合い、時にぶつかり合いながら歩む青春。そこに、生涯にわたる友情と、不屈の人格が築かれる。教室だけでは学べぬ『人間』そのものを育てる場が寮である」と期待を寄せてくださっています。私は留学生の受け入れがはじまった時に、それまで寮で続いていた良き伝統を残しながら、いかに留学生に対応したものに変化させていくか非常に悩みました。しかし大事なことは、すべての寮生が「寮に入って良かった」と心から言い切れるか否かだと思います。創価大学の10年後、20年後を見据えた上で、今何をすべきなのかを皆で考え、議論し、ぶつかり合いながら、最高の青春時代を築いていってください!
[好きな言葉]
「さぁ、出発しよう!悪戦苦闘を突き抜けて。決められた決勝点は取り消す事が出来ないのだ」ホイットマン
[性格]
とにかく前向き
[趣味]
カメラ、旅行
[最近読んだ本]
サン=テグジュペリ『人間の土地』