Vol.20

小さな一歩からSDGsに貢献できる!-食品ロス削減を目指す「まもるカフェ」

堀内 百花(ほりうち ももか) 経営学部経営学科3年

皆さんは、本来食べられる食品が、日本で年間どのくらい捨てられているかご存知ですか?その数はなんと年間646万トン。これは、国民一人あたり毎日お茶碗約1杯分を廃棄している量に相当します。まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」という問題に着目した、本学経営学部の野村佐智代准教授のゼミ生たちは、削減に向けて学生が気軽に取り組める「まもるカフェ」を企画しました。そして、昨年12月6日(木)から8日(土)の3日間、東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2018」で、「まもるカフェ」についての展示を出展し、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する取り組みとして、メディアでも紹介されました。
今回の創大Daysでは、野村ゼミでゼミ長を務める堀内百花さん(経営学部3年)に、ゼミでの学びや「まもるカフェ」の取り組み、エコプロに出展しての感想などを語っていただきました。

まずは、ゼミでの活動内容を教えてください。

ゼミの仲間とミーティング
ゼミの仲間とミーティング

野村ゼミでは、環境問題に焦点を当てて企業研究などに取り組み、自分たちに何ができるのかを考え行動しています。その活動の一環として行っているのが、環境問題をテーマに持続可能な社会を目指す取り組みなどを紹介する展示会「エコプロ」への出展です。エコプロは、毎年12月に東京ビッグサイトで行われ、企業やNPO法人、大学など約650の団体が出展しています。第20回目となる今回のテーマは、「SDGs時代の環境と社会、そして未来へ」と掲げられ、各団体の展示の他、著名人の講演会などのイベントも行われました。学校の校外学習として活用するなど、子どもから大人まで幅広い世代の16万人を超える方々が来場されたそうです。野村ゼミでは、以前フィールドワークとしてエコプロに参加した先輩が大学生ブースを見つけ、3年前から出展しています。今回は、テーマにあるSDGsの中から12番の「つくる責任 つかう責任」に焦点を当てて、身近な環境問題の1つである「食品ロス」削減に向けて、学生にできることを皆で考えました。そして、「まもるカフェ」という取り組みを考案し、その内容についてエコプロで紹介しました。

「まもるカフェ」ではどのようなことをしているのですか?また、どのようにして誕生したのか、教えてください。

「まもるカフェ」は、学生が自宅で余っている食品を持ち寄り、その材料で何が作れるかを参加者全員で考え、作り、食べるという、学生が手軽に食品ロス削減に取り組めるイベントです。私たちは、「食品ロス」という問題について、自分に何ができるのかを考える上で、まずは学生の食生活の実態を知ろうと、「食」に関するアンケートを実施しました。500名を超える学生に回答してもらった結果、実家を離れて一人暮らしをしている学生も多いことから、欠食が多かったり、食費に困っていたり、食に対する満足感が得られていない人が多いことがわかりました。その反面、本来食べられるのに捨てられてしまう食品ロスは、日本だけでも年間646万トンも排出されています。私は、食品ロスのほとんどが企業の産業廃棄物だと思っていたのですが、実際にはその半分が各家庭から出ているもので、自分たちの生活からこんなにも食品ロスが出ていることにとても驚きました。

持ち寄った食材で何を作るか話し合うまもるカフェの様子
持ち寄った食材で何を作るか話し合うまもるカフェの様子
まもるカフェに参加してくれたみんなで記念撮影
まもるカフェに参加してくれたみんなで記念撮影

そして、食品ロスが多いにもかかわらず、食に困っている学生がいることに矛盾を感じ、「食品ロス」と「食に困っている学生」を繋げられないかと考えました。とはいえ、私たちも「食品ロス」について詳しく知っているわけではなかったので、まずは情報をインプットすることから始め、八王子フードバンクや子ども食堂の方、「食品ロス」について取り組まれている国会議員や市議会議員の方々にお話を伺いました。そして、学んでいく中で、「サルベージ・パーティー」という取り組みがあることを知りました。これは、家庭で使いきれない食材を持ち寄り、その食材を使ってシェフにおいしい料理を作ってもらい、参加者で食べるという会です。しかし、サルベージ・パーティーでは、参加費を集めていたり、プロのシェフを呼んでいたりと、学生にとっては少し敷居が高いものでした。そこで、学生が手軽に取り組める形を目指し、食品を持ち寄り、シェフを呼ぶのではなく、自分たちで作るという形で、「まもるカフェ」を考えました。この名称には、地球や環境、食を守りたいという思いを込めました。また、パーティーのような特別な形態ではなく、身近に感じてもらいたいと考え、カフェと名付けました。

「まもるカフェ」の様子や開催してみての感想を教えてください!

「まもるカフェ」を食品ロス削減の取り組みとして考案したものの、はじめは、本当に実現できるのかと不安がありました。しかし、やってみないとわからないと思い、試しにゼミのメンバーで開催しました。大学近くのレンタルキッチンを利用し、みんなで食材を持ち寄ったところ、きゃべつやたまねぎといった野菜やたまご、ウインナーなど、一人暮らしだと賞味期限内にすべてを使い切りにくい、余りがちな食材が揃いました。調味料も持ち寄って、何を作るかみんなで知恵を出し合いながら、メニューを決めて調理したところ、最終的に野菜炒めやパスタ、サラダなど6品ができ、1回で約4キロ分の食品ロスを削減することができました。実際に開催する中で、これなら余り物で学生の1食分を準備でき、手軽に食品ロス削減に取り組めるのではないかという実感がゼミ内に広がりました。そこから、ゼミ生以外にも声をかけ、6月に初めて開催してから、これまでに4回開催することができました。毎回、参加する学生は異なり、初対面の人もいるのですが、必ず全員でメニューを考え調理するため自然と交流が生まれ、最後にはみんなで楽しく食事をすることができ、ただ食品ロス削減に取り組むだけでなく、学生の交流の場にもなっています。参加した方からは、「食の問題について知れた」「また参加したい」との声をいただき、「まもるカフェ」が食品ロスについて知り、食について考えるきっかけになっていることを実感しました。小さいことかもしれませんが、学生でも食品ロス削減に貢献できるんだと、達成感を感じました。

まもるカフェで実際に完成した料理
まもるカフェで実際に完成した料理

エコプロの様子や出展するにあたって工夫したことを教えてください。

エコプロでの展示ブース
エコプロでの展示ブース

エコプロでは、学生団体は本来学生ブースに出展するのですが、今回、「食品ロス削減もったいないチャレンジ」というテーマブースが設置され、企業の方々に並んで出展させてもらえることになりました。学生ブースに比べて来場者が多いため、多くの人に見てもらえる機会がある反面、ノベルティを配布して集客を図り、印刷業者に依頼してキレイなパネルを作っている企業のブースと並ぶため、手作りの自分たちの展示に目を止めてもらうためにどうしたらいいか悩みました。そこで、幅広い世代の方が来場するため、誰が見てもわかりやすく、一人でも多くの人に知ってもらえるように工夫しました。

まず、ブース全体をカフェに見立ててデザインを凝り、模造紙で作成したパネルは、「黒板」をイメージし、背景はレンガ模様。机にはメニューに見立てて自分たちの活動をまとめた冊子を置き、手にとって見てもらえるようにしました。また、ただ見てもらうだけではなく、来場者にまもるカフェを体験してもらいたいと考え、疑似体験ゲームコーナーを用意しました。ここでは、実際にまもるカフェを開催した際に集まった食材を参考に作成した食材カードを使って、参加者にその食材で作れる料理のレシピを考えてもらい、それがどのくらいの食品ロス削減につながるのかを体験してもらいました。このカードゲームは特に子どもたちに好評で、たくさんの方に体験してもらうことができました。1回あたり2~5名でグループを作り、1組あたり平均1kgの削減ができ、3日間で累計99.1kgの削減量になりました。

まもるカフェを体験できるカードゲーム
まもるカフェを体験できるカードゲーム
毎回のカードゲームで記録した食品ロス削減量
毎回のカードゲームで記録した食品ロス削減量

その他にも、私たちのブースの写真を撮ってくださる方も多くいました。さらに、「学生なのにすごいね」「今の学生はこんなこともしているんだ」と声をかけてくださる方もいて、まもるカフェの活動内容に興味を示すだけではなく、学生が食品ロス削減に取り組んでいること自体に関心を持っていただくことができました。企業では、お金をかけて大きな取り組みをされているので、その中で出展してもさほど注目はされないだろうと考えていました。しかし、展示をみてくださった方々の反応から、学生だからこそ身近なこととして訴えられ、興味を持ってもらえることを感じました。

ここまでの形にするには、苦労も多かったのではないでしょうか?

そうですね。ゼミ生の中には、学生寮の執行部やクラブ活動など、さまざまな団体で頑張っているメンバーが多く、みんなで集まって話し合いをすることには苦労しました。毎回のミーティングでは議事録を作成し、内容共有ができるように工夫していましたが、15名それぞれが意見を持っていたり、毎回参加できるメンバーが異なったりと、意見をまとめるのが難しかったです。でも、ゼミ生同士がお互いを尊重しあう雰囲気があり、忙しいメンバーも少しでも顔を出すようにしてくれ、毎回参加してくれるメンバーの負担は大きかったですが、それでも楽しく取り組むことができ、さらに絆が深まったように感じます。また、私たちが取り上げたテーマが「食」という、身近な問題だったのでアイデアはたくさん浮かんだのですが、実現できるかどうかという点で何度も壁にぶつかりました。実は、最初はまもるカフェではなく、学食で「あまりもの定食」というメニューを出してもらえないかと考えていました。閉店前に割引されるお弁当のように、学食のあまりものの食材を使って、安い定食を提供してもらうという案でした。実際に学生課の方や食堂業者さんに相談しましたが、衛生面の問題や企業の利益という観点から、実現することはできませんでした。今考えると、学生も後から安い定食が出ることを知っていればそれを狙って待つだろうって思いますね(笑)。実際に自分達でできることや続けていけることを考えるって難しいなと感じました。でも、学生だからこそいろんなことに挑戦できるというか、行動して思い通りにならないことを経験することから学ぶことって多いなって実感できたと思っています。

今回の取り組みを通して学んだことを教えてください。

私は、実はもともと環境問題に興味があったわけではなく、楽しんでしっかり学べるゼミに入りたいとの思いから、野村ゼミを志望しました。環境問題やSDGsと聞いても、どこか大きな問題で自分が取り組むことというよりも、企業や政府が取り組むことのような印象がありました。実際に、SDGsの認知度はまだまだ低く、企業の取り組みを知ることはできても、自分たちに何かできるのかを考える機会は少ないように感じます。しかし、今回のエコプロへの出展を通し、自分たちで「まもるカフェ」を考案する中で、自分たちにもできることがあることを実感し、環境問題やSDGsへの取り組みを身近に感じるようになりました。

ゼミでは、SDGsカードゲームで体験学習も実施
ゼミでは、SDGsカードゲームで体験学習も実施
野村ゼミの仲間たち
野村ゼミの仲間たち

もちろん、大きな課題なので、すぐに解決に結びつくような何か大きなことができるわけではありませんが、小さな一歩であったとしても、自分たちが何かをすることで、少しずつ変わっていく。一人で解決できることではないかもしれないけど、個人でできることはないかを考えたり、呼びかけたりするだけでも、少しずつ解決に向かっていくことを学びました。ゼミの活動があったから、「自分たちにもできるんだ」と、個人の行動に落とし込めたと思います。環境問題は本当に身近で、根幹をたどれば福祉の問題や貧困問題など、世の中の社会問題につながっています。しかし、海外に比べて日本人の環境問題への意識は低いように感じます。身近な生活の小さな一歩から、環境問題の改善やSDGsに貢献できることをもっと多くの人に知ってもらいたい。この意識改革を促していけるのは、学ぶ人だと思います。創立者は、「大学は大学に行けなかった人のためにある」と言われています。だからこそ、今回、私たちがまもるカフェの取り組みを通して実感した“自分たちにもできる”ということをたくさんの人に伝えていけるよう、これからも学び続け、まもるカフェの開催を継続させ、自分たちの取り組みを発信していくことが大事だと思っています。

最後に、これからの目標を教えてください!

私は、創価大学に入学して、学ぶことの楽しさを知りました。自分が興味を持ったものを深く掘り下げられる楽しさが、大学にはありました。ゼミの活動も、環境問題をテーマにみんなで議論する中で、社会課題を知って自分たちにできることを模索することの重要性を学ぶことができ、さらに学び続けていきたいと決意しています。私は、これからカナダに留学に行きます。これまで、大きな挫折を経験したことがなかったため、社会に出る前に異国の地で苦労を乗り越える力を身につけたいと考えました。卒業後の進路は、まだ具体的に考えられていないのですが、時間のある学生のうちにたくさん学び、自身の行動に変えていきながら、社会に貢献できる人材に成長していきたいと思います。

ほりうち ももか Momoka Horiuchi

[好きな言葉]
「冬は必ず春となる」

[性格]
真面目、負けず嫌い、心配性

[趣味]
弾き語り、テレビ・Youtubeを見ること

[最近読んだ本]
「7つの習慣 」 スティーブン・R・コヴィー
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