Vol.29

「楽しく経済学を学べる場所に!」-経済学検定試験「大学対抗戦」優勝への道のり

南 優人(みなみ ゆうと) 経済学部経済学科4年

本年(2019年)7月に行われた日本経済学教育協会主催の経済学検定試験・第31回「大学対抗戦」で、大会3連覇を果たし、14回目の優勝を飾った創価大学経済学理論同好会(以下、同好会)。2007年の初優勝から2012年まで11連覇した時代がありましたが、昨年(2018年)の第29回大会で日本一を手にするまで、6年以上も優勝から遠ざかっていました。
そのような中、2017年に部長に就任した南優人さんは、もう一度優勝を目標に掲げて大学対抗戦に挑戦することを決意し、部員一人ひとりと語りあい、日本一に懸ける思いを皆と共有しました。新たな伝統を築いた南さんに、同好会での経験、創価大学での学びや成長について語っていただきました。

大会3連覇、おめでとうございます!まず、同好会について教えてください。

南さんが部長になった時の執行交代式(前列の右から2番目)
南さんが部長になった時の執行交代式(前列の右から2番目)

同好会は、2007年に発足した経済学部の学生サークルです。経済学部の学生が互いに経済学を学びあいながら、皆で主体的に運営しています。発足時より、学年の垣根をこえて先輩が後輩を育てる伝統があり、活動場所である経済学部教育ラウンジ(FEEL)には先輩たちが作成した、オリジナルの問題集や大学対抗戦の過去問が残されています。
同好会の主な活動は放課後に開く勉強会です。ここでは、教員ではなく学生が講師を担当し、参加者に経済学の理論等を教えます。人に教えることは自分のために学ぶこと以上に大変ですが、振り返ると講師役を経験することが自分にとっても一番の学びになります。学生同士の場でもありますので、わからないことや思ったことを自由に言い合える雰囲気も同好会の良き伝統だと思います。また、通常の勉強会とは別に、大学対抗戦を目指すメンバーはチームを構成し、空きコマや放課後などに時間を調整して定期的な勉強会を設けています。
経済学部の先生方も同好会の活動を献身的にサポートしてくださっており、わからないことがあれば聞きに行くなど、私たちの主体性を尊重しつつも丁寧に教えてくださいます。

創価大学への入学理由と、同好会への入部理由を教えてください。

高校生の時、創価大学で学んでいた姉から、「目標に向かって努力する学生が多いのが創価大学」との話を聞き、入学すれば自分のやりたいことが見つかり、充実した大学生活が送れるのではないかと思い創大受験を決めました。また、我が家は母子家庭で、私は三人兄弟の末っ子だったこともあり、母親に経済的な負担をかけたくなかったので、給付型奨学金が充実していたことも大きかったです。勉強は得意な方ではなかったですが、数学と英語は好きな分野でしたので創価大学の経済学部に入学しました。
入学後は、軽音楽部に入部しましたが、1年の5月頃に同好会出身で卒業した姉から連絡があり、「同好会の体験授業に行ってみたらどうか?」とすすめられて勉強会に顔を出しました。そこで先輩方が、ゲーム理論の体験授業を開いてくれ、初めての自分も含めて誰もが発言しやすい雰囲気づくりや、クイズ形式のわかりやすい教え方に触れ、経済学の分野を深めたいと思ったのが入部したきっかけです。

同好会の部長になって、経済学検定試験「大学対抗戦」を目標に掲げたんですね。

私が入部した当時は、部員数が少なかったことや学内での勉強会の開催に力を入れていたので、経済学検定試験「大学対抗戦」に出場していませんでした。これまで、友達と一緒に勉強を頑張るといった経験が少なかった分、高い志で学ぶ同期や先輩と時間を共有するなかで、一緒に切磋琢磨しながら楽しく経済学を勉強し、学んだ分だけスコアが上がるなど力がついていく過程が楽しかったです。
大学1年の12月には執行期となり、同期の推薦もあり、同好会の部長になりました。その直後、6年前に大学対抗戦で優勝した世代の、私の姉と先輩の3人で食事に行きました。「部長としてどうしたいのか」、「部活をどうしていきたいのか」などの話題になり、リーダーとして大事なことに向き合えてなかったことを反省し、同好会のあり方を真剣に考えるようになりました。様々な方にも話を聞き、真剣に考え抜いた結果、「部の全員が一つの目標に向かって一体感を持ち、ワクワク楽しく取り組める環境を作りたい」とビジョンを掲げました。
ただ、同好会は、皆で同じ目標を掲げて取り組むよりも、個々が自分の目標を大事にする文化があったので、どのように具体的な目標を共有していくのかが最初の壁でした。
部長となって最初に取り組んだのは、同期の部員一人ひとりと個々に話し合ったことです。部の方針として一つの目標をもつ方針なのか、それぞれの目標を尊重するのか、自分の思いを一方的に押し付けるのではなく皆の考えをしっかりと聞くことを大事にしました。
その時に、予想外にも「何か一つの目標を持ってやりたい」という部員が多かったことに驚くと同時に、皆の秘めた熱い思いに嬉しく思い、挑戦するなら今しかないと思いました。

経済学部教育ラウンジ(FEEL)にある先輩方の資料など
経済学部教育ラウンジ(FEEL)にある先輩方の資料など

部長として、どのような苦労がありましたか?

大学対抗戦に出場を決めてからは、通常の部の勉強会とは別に、出場チームでの勉強会を開きました。同期の部員でチームを結成したものの忙しいメンバーが多く、モチベーション維持や勉強のスケジュール管理など難しかったです。何よりも数年、優勝から遠ざかっていたので、経験者が近くにいないこともあり、どのように勉強すれば良いかなど雲を掴むような状況でした。また、相手の立場に寄り添ってコミュニケーションをとることの大事さも学びました。部の運営や勉強方法など、価値観の相違による衝突等もありましたが、相手の話をじっくりと聞き、共感できる点を見つけ出し、一番良い方向で互いに納得するといったことを経験させてもらいました。部長の時は苦労も多かったですが、責任者の立場が初めての経験でしたので、自分にとっても貴重な1年となりました。

部長を終えた時の執行交代式(前列右)
部長を終えた時の執行交代式(前列右)

大学対抗戦に向け、どのように取り組んだのでしょうか。

大学対抗戦に向けて勉強に取り組む様子
大学対抗戦に向けて勉強に取り組む様子

大学1年生の終わり頃、大学対抗戦に出場するチームを結成し、7月の対抗戦はまず出場、次の12月の対抗戦で優勝のプランを掲げていました。しかし、現実は厳しく、優勝を目標に掲げた12月の対抗戦では、早稲田大学、東京大学大学院チームなどに敗れ、4位の結果でした。あらためて優勝への道のりの厳しさを痛感し、心が折れそうになりました。執行期も終わり部長も交代となるタイミングでしたので、翌年(2018年)7月の対抗戦に出場するか悩みましたが、一緒に1年間にわたり勉強を重ねたメンバー全員が優勝への熱い思いを抱いており、次回の対抗戦優勝へ挑戦を開始しました。

これまでの対抗戦出場の経験をいかし、曖昧になっていた理論などを徹底的に解きました。また、表面上だけではなく、理論の裏にある考え方なども学び解き、様々な変化にも対応できる応用力が身につくように心がけました。その他、メンバー同士で互いに得意分野を教えあうなどし、基礎レベルから応用レベルまで幅広く、質の高い勉強会を重ねることができました。
対抗戦直前の最後の1ヶ月間は、チーム全員の時間割や予定を共有し、空きコマは最低2人でも勉強会を開きました。その結果、対抗戦には心に余裕をもって臨むことができ、対抗戦の試験後には、スコアが予想できるほど力を出しきることができました。あとは、強豪大学のチームがどの程度のスコアを取ってくるか不安でしたが、晴れ晴れとした気持ちで発表日を待ちました。対抗戦の結果は、8月上旬にタイ・タマサート大学への交換留学出発の飛行機に乗る直前にメールで優勝の通知が届きました。関西空港に向かう電車の中でスマートフォンを見て、母親と一緒に喜びあいました。また、個人成績においても大学対抗戦参加者121名の中で1位のスコアを取得でき、努力した分だけ結果はついてくることを実感しました。唯一残念なのは、これまで優勝を目指した苦楽を共にしてきたチームメイトと喜び合えなかったことです。その後、他の4名が集まって記念撮影をした写真が届き、右側に僕の画像が貼られた写真が届きました。笑

優勝したメンバーでの写真(南さんは合成で右側に)
優勝したメンバーでの写真(南さんは合成で右側に)

最後に後輩たちへのメッセージをお願いします。

タイに留学した時の様子
タイに留学した時の様子

第29回「大学対抗戦」において、6年ぶりに優勝し、追われる立場となりましたが、その後の第30回大会(2018年12月)、第31回大会(2019年7月)でも後輩たちは日本一に輝き、素晴らしい伝統を築いてくれています。部長になった時から、創立者池田先生の「リーダーとは誰よりも真剣な人の異名である」との言葉と、上杉鷹山の「リーダーは真剣であるべきだ」との言葉を大事にし、大学対抗戦での日本一の情熱を持ち続けて勉強に取り組んできました。結果が伴ったことで、部に一体感が生まれたことが何よりも嬉しいです。同好会の部員数も私が入部した当時は1~3年生あわせて約20人でしたが、今では94人の部員が所属しています。入部する新入生の中には、「大学対抗戦に出場したい」と明確な目標を掲げて入部してくる部員もいます。

私自身、創価大学に入学して、「何のため」を問い続けることの大事さと同時に、それが定まった時には自分の想像をはるかに超える力が発揮できることを学びました。同好会の活動以外でも、交換留学、海外でのインターンシップ、キャリアセンター主催のGLC(※1)での活動を通して、高校生までの人生観が180度変わったと言いきれます。創価大学は人生において何が大事なのかを学べる場所です。また、それをサポートしてくる仲間、教職員がいます。世界各国・日本各地から集う素晴らしい仲間とともに、一人でも多くの方に創価大学で学んでもらいたいと思います。

*1)グローバルリーダーカレッジ(GLC)
:キャリアセンター主催で2006年度に開講された学部横断型の課外講座。各種講座、グループワークなどを、OB・OGである卒業生がスタッフとなって月に2回程度開催している。1・2年生の希望者が申し込み、エントリーシートおよび面接にて選抜。4年次まで受講する。
【参考】GLCホームページ https://career.soka.ac.jp/glc/student/glc.html

GLCメンバーと
GLCメンバーと
みなみ ゆうと Yuto Minami

[好きな言葉]
「過去は関係ない、常に現在が出発点である」
[性格]
楽観的
[趣味]
漫画、お笑い番組を見ること
[最近読んだ本]
木村弘毅「自己破壊経営」、鈴木一功「企業価値評価」
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