Vol.31

家族のために――前例のない“早期卒業”と“公務員試験合格”達成への挑戦!

森澤 良美(もりさわ よしみ) 経済学部経済学科3年

「全部、自分の努力次第です!」――そう、話すのは、経済学部3年の森澤良美さん。森澤さんは、学部ごとに決められた優秀な成績を修め、3年間で卒業必要単位を取得した場合に可能となる早期卒業を目指しています。そして、本年8月には、難関の国家公務員一般職採用試験に見事合格。来春から地元・四国に帰り、国土交通省地方整備局に就職する予定です。
前例のない“早期卒業”と“公務員試験”の両立に挑んだ裏には、家族を支えたいという思いがありました。今回の創大Daysでは、人一倍努力してきた森澤さんに、挑戦のきっかけや勉強の様子、これからの決意などを伺いました。

まずは、早期卒業と公務員試験への挑戦を考えたきっかけを教えてください。

父の事故を機に、自分にできることを考え、親孝行を決意
父の事故を機に、自分にできることを考え、親孝行を決意

両立を目指した大きなきっかけは、父が仕事中に大けがを負ったことでした。私が大学2年生になる前の春休み、土木の仕事に就く父が、運転していたショベルカーの下敷きなってしまったんです。医師から「命の保証はありません」と言われました。しかし、13時間に及ぶ大手術の末、父はなんとか一命をとりとめることができました。その後も、長時間の手術を何度も繰り返し、回復を果たすことができましたが、足に障害が残ってしまい、いつ仕事に復帰できるのかまったくわからない状況でした。
今後のことを考えながらふと履修要項を開いたとき、“早期卒業”の制度が目に入り、「これだ!」と思いました。もともと経済的に余裕がないわが家で、当時高校3年生だった妹の大学進学を考えると、自分が3年間で卒業すれば、1年間分の学費の負担をかけずに済むと思ったんです。
公務員を考えたのは、家族のいる地元・四国に帰りたいと思ったからでした。民間企業への就職も考えましたが、地方での働き口は多くありませんでした。また、父が大けがを負ったことで、手当てや補助など公的な支援がたくさんあることを知り、困っているときのサポート制度が整っていることに感動しました。父をはじめわが家を救ってもらったという実体験から、さまざまな面で苦しんでいる人の助けになれる最後の砦は、公務員なのかなと思い魅力を感じました。

しかし、実際に挑戦を決意するのは、大変だったそうですね。

そうですね。なんせ前例がないので、はじめはできるのかどうかもわかりませんでした。幸いにも1年生の春学期から早期卒業の基準となる成績(GPA4.2)を満たしていたので、早期卒業はすぐに決意できたのですが、公務員試験との両立ができるかはわかりませんでした。公務員試験を突破するには、30を超える教科を学習しなければなりません。合格には平均4時間、試験前には約8時間の勉強が必要と言われており、早期卒業を目指して学部でも上位の成績を修めながら、合格ラインに達するまでの学習ができるのか、不安でいっぱいでした。キャリアセンターの方やいろんな先生に相談しても、「これまでそういう人はいないから、わからない」と言われ、実際に公務員として働いている方から「無理だよ」って言われたときは、なめていたわけじゃないですけど、本当に甘くないんだなって思い知らされて、正直、公務員はやめようかなと思いました(笑)。
迷いはありましたが、公務員の勉強は専門的なことだけでなく一般教養となる内容も多く、幅広く学べるので勉強して損はないかなと思い、両親には「最終試験受けるかわからないし、受からないかもしれないけど勉強してみるね」って伝えて、2年生の4月から勉強を始めました。
はじめは、勉強自体は楽しいし、できる範囲で取り組んでいました。そして、夏休み前の7月頃、試験対策講座の講師と面談する機会がありました。その時に、両立のことを話してみると、「できるよ、君!」って言ってくださったんです。そこで受験の決意が固まりました。講師の方は約3ヵ月間の勉強で公務員試験を合格された優秀な方で、きっと自身の経験からそう言ってくださったんだと思います。でも、この言葉をもらったとき時、ずっと誰かに「できる」って言ってほしかったんだなって感じて、挑戦する勇気が湧き、“やってやろう!”って腹が決まりました。

早期卒業に向けた学部の勉強と公務員試験の勉強の両立に励む
早期卒業に向けた学部の勉強と公務員試験の勉強の両立に励む

具体的に、どのように勉強に取り組んでいたんですか。

毎日通った国研棟には、思い出がいっぱい
毎日通った国研棟には、思い出がいっぱい

基本的には、公務員対策講座を受講し、国家試験研究室(通称:国研)の自習室で勉強していました。講座を収録したDVDを見て内容をインプットし、過去問を解く。間違えたところはレジュメで確認したり、ノートに写して寝る前に振り返ったり。ひたすらその繰り返しでした。
毎日通った国研棟には、思い出がいっぱい
自習室では、公務員や公認会計士などの難関試験に挑む学生が、試験対策の勉強をしています。周りは先輩ばかりで知っている人もいないし、前例がないため誰かを参考にしたり、真似したりもできない。しかも、早期卒業に向けて履修している授業も多いので、周りの先輩が勉強している中で授業へ行かなきゃいけなくて。自分の道はこれであっているのかな、先輩たちはどこを勉強しているのかな、このままでいいのかなって、焦りと不安は常にありました。

でも、ここまでやればいいという目安がなかったからこそ、“やるしかない!”“誰よりも頑張ろう!”って気持ちになって、自習室が開く7:30には入り、帰りも閉館時間の22:00ギリギリまで勉強するようにしました。平日は授業があったので時間を考えずに空いた時間を、休日は睡眠時間以外の約14時間を勉強すると決めて、がむしゃらに取り組みました。早い試験は今年の5月だったので、本格的な勉強を開始した時点で残り1年を切っていて、圧倒的に時間が足りないと感じていました。でも、それはもうどうしようもないから、割ける時間はやるしかないって机に向かいました。
小さいころから、勉強は好きだったんです。「これはそうなってるんだ」「こういう答えなんだ」って、新しいことがわかるのが楽しくて。勉強ができる方ではなかったけど、イスに座って机に向かうこと自体に、わくわくしていました。また、いい成績をとったり、頑張って勉強したりすると、いつも両親が褒めてくれました。それが嬉しくて、少しずつ勉強する習慣は身についていたんだと思います。

公務員試験の勉強に使ったレジュメの一部
公務員試験の勉強に使ったレジュメの一部

すごい勉強量ですね!その両立を支えたモチベーションは何だったんでしょうか?

夢に向かって努力する友人たちと
夢に向かって努力する友人たちと

一番は、高い目標や志を持った友人の存在だったと思います。公務員の勉強は、知らない年上の先輩と一緒だし、自分自身への挑戦でもあって、正直孤独を感じながら勉強していました。でも、授業に行くと、自分の目標に向かって頑張っている友達がたくさんいて、そんな仲間と授業の内容について議論し合えるのがすごく楽しかったんです。
経済学部って、留学に行く学生が多いんですよね。今も、ほとんどの友人が留学に行っていて寂しいんですけど(笑)、留学もスコアが数点足りないだけで行けなかったり、明暗が分かれる厳しさがあって。そんな中で、何度も 挑戦している友人の姿に、“あー自分も頑張らなきゃ!”って思いました。試験で思うように結果が残せず、落ち込むこともあったけど、悩んでいるのは自分だけじゃないんだって、本当にたくさん励まされました。しかも、「森澤さんならできるよ!」って言ってくれて、いつも応援してくれたんです。ゴールは違っても、夢に向かって切磋琢磨し合える仲間と出会えて、本当によかったです。みんながいなかったら、自分はここまで頑張れなかったなって思いますね。

努力の末の公務員試験合格、おめでとうございます!結果がわかったときの心境を教えてください!

ありがとうございます!結果が出たときは、本当に安心しました。
私は、高知県庁と東京23区、そして国家公務員試験の3つの試験に挑みました。筆記は3つすべてに合格することができたんですが、2次試験は面接の日が重なってしまい、高知県庁と国家公務員、2つの受験となりました。しかし、先に受験した高知県庁は面接で不合格で…。地元に帰れる1番の職場でしたし、正直、行けるだろうと思っていたところもあって、とても落ち込みました。
ですが、国土交通省の官庁訪問に行く中で、災害が増える日本で、災害対策などを考え整備するという点で興味が湧いてきて、国土交通省へ行きたいと思うようになりました。面接では、練習の時に「どんな質問に対しても、“森澤良美”が伝わるようにするんだよ」と言ってもらっていたので、自分を伝えることを意識しました。緊張しながらも全力を出し切ることができましたが、結果がなかなか届かず、もう無理かなと思っていたんです。“もう1年間勉強はできないなー”って、企業就職も考えていました。そんな時に電話がかかってきて「国土交通省に来ませんか」って言われて合格がわかりました。その瞬間、今までやってきたことは間違ってなかったんだって、本当にほっとしました。両親も「おめでとう」って泣いて喜んでくれました。
私の父は、高校を首席で卒業したにも関わらず、経済的な理由で大学進学を断念しました。しかし、資金面で余裕がない中で、私を含め兄妹3名全員を創価の学び舎に送り出してくれました。前例がないことへの挑戦でも、“できる”と信じて応援し続けてくれた両親には、本当に感謝です。今回の結果で、少しは親孝行できたかなと、うれしく思います。また、創大の返還不要の奨学金をいただけたことで、勉強に専念することができました。大学を支援してくださる多くの方々のお陰で、ここまで挑戦することができたと感謝は尽きません。これから社会の第一線で活躍することで、しっかりと恩返ししていきたいと思っています。

笑顔で合格を喜び、感謝を語る森澤さん
笑顔で合格を喜び、感謝を語る森澤さん

3年間の学生生活を振り返っての感想、そして、卒業までに挑戦したいことを聞かせてください。

イタリア研修では、本場のジェラートで息抜き
イタリア研修では、本場のジェラートで息抜き

学生生活は、勉強尽くしだったので、何もできてないなーと思っていたんですが、振り返ってみると、いろんなことに挑戦させてもらっていたなって思います。
小さい頃からイタリアのスポーツカーが好きだったことがきっかけで、イタリア語を学び始め、1年生の春休みには1ヵ月間の語学留学に参加しました。また、経済学部の東北インターンシップ・プログラム(TIP)を利用して、南三陸のホテルインターンや地域の復興ボランティアにも参加させてもらいました。初めて訪れた被災地では、震災から6年経過してもなお更地が多い状況に復興が進んでいないと感じたのですが、現地の人と話す中で、ここまで来るのも大変だったこと、少しずつでも前進していることを知り、復興は目に見えるものだけじゃないんだと学びました。今考えると、この時の経験が、国土交通省に進みたいと感じた理由の1つになっていたように感じます。
正直、4年間学べるはずだったので、1年間勉強できないのか、という思いはあります。でも、4年分の学びを3年間で吸収しようと思っています。卒業までに、イタリア語とか英語とか、やりたいことを挙げていたらキリがないんですけど、大学でできることをやりきりたいです。でもまずは、今期の履修が組み終わって、やっと早期卒業が見えてきたので、単位を1つも落とさないように頑張ります!(笑)

卒業後の決意を教えてください!

これまでアルバイトができなくて社会経験がないし、少し早く社会人になることには不安もあります。でも、就職する国土交通省の地方整備局では、災害発生前の事前対策から、発生したときにどう市民を救うか、復興を進めるかという、命に係わる大事な仕事をさせてもらうので、社会に貢献できるように頑張りたいって気持ちです。
今回の台風19号も、他人事ではなくすごく身近に感じて、何が今被災地の方には必要かとか、どういう対策が必要なのかとか、たくさん考えました。今すぐ私に何かができるわけではないけど、一人の人を助けられるような仕事なんだということを実感しました。
特に地方整備局は、出先機関として本省の手足となって動く、地域密着型の仕事です。現場に足を運ぶこともあります。四国のどこに赴任するかわかりませんが、地元の人たちのために働けることがとても楽しみです!

東北インターンでは、被災地で復興向けた取り組みも経験した
東北インターンでは、被災地で復興向けた取り組みも経験した

最後に後輩たちへのエールをお願いします!

入学当初、私はグローバルに活躍することに憧れ、留学などを考えることもありました。父のことや地元が好きだったこともあり、結果的に早期卒業と公務員という道を選びましたが、正直、留学に行った友人を羨ましく思ったり、自分が留学に行っていたらどうなっていたんだろうと考えたりすることもありました。それでも、自分が選んだ道を信じて努力を重ねたときに、前例のない結果を残すことができ、自分の使命はここにあったんだと確信することができました。
大学生活を送る中で、自分はこうしたいとか、こっちに行かざるを得ないとか、悩むことはあるかもしれません。でも、自分次第で、その選んだ道は必ず最高の道となります。特に創価大学は、思いっきり学べる環境が抜群に整っていると思います。そして、そういう場所を活かして頑張っている友達に出会える最高の場所です。いろんな悩みがあったとしても、安心して、自分の選んだ道が間違ってなかったんだ、これがよかったんだと言い切れる挑戦を重ね、使命の道を突き進んでいってください!全部、自分の努力次第です!

もりさわ よしみ Morisawa Yoshimi

[好きな言葉]
忍耐と持続
[性格]
負けず嫌い
[趣味]
F1観戦、読書
[最近読んだ本]
『絶唱』 湊かなえ
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