Vol.44

「やっぱり空を守る仕事がしたい!」― 努力の末に掴みとった航空管制官の夢

内田 拓希 法学部法律学科4年

 航空機が空を安全に飛行するためには、「空の交通整理役」である航空管制官の存在が必要不可欠と言われています。航空管制官は、空港などの管制室からレーダーや無線電話で的確な指示を出すなど、航空機が予定通り離着陸できるよう、空や空港の安全を守る大事な役割を担っています。
 小さな頃から航空管制官に憧れていた内田さん。自分の力を信じることができず、一度は大学進学前にその夢を諦めました。明確な目標がないまま創価大学に進学。入学後、高い志をもち夢に向かって努力する仲間と出会い、親身になって相談にのってくれる教職員や卒業生等のサポートによって、再び「航空管制官」の夢に向かって歩みはじめました。
 今回の創大Daysでは、内田さんに航空管制官試験に合格するまでの道のりと大学生活での学びについて語っていただきました。

航空管制官採用試験の合格おめでとうございます!航空管制官を目指すきっかけを教えてください。

航空管制官が指示を出す管制塔
航空管制官が指示を出す管制塔

 ありがとうございます。父親の仕事の関係で7歳までタイのバンコクで暮らしていました。日本に住む祖父母のもとに行く時など飛行機を利用する機会が多かったので、空港や飛行機に興味を持つようになり、幼少期の頃から航空業界の仕事に憧れていました。
 中学2年生の時に、国土交通省主催のイベントに参加した際、成田空港の管制塔に入って実際に航空管制の現場を見たり、話しを聞いたりする機会がありました。管制塔から見る飛行機の離着陸する様子や、航空管制官が無線で指示を出している姿を見て、空の安全を支える管制官の仕事に魅力を感じ、いつかは自分もここで働きたいと思うようになりました。

大学入学前に一度は夢を諦めたそうですね。

 実は高校卒業後すぐに管制業務に関わる仕事をしたいと思い、一般の大学進学は考えていませんでした。それ以上に、大学を卒業しても国家公務員試験である航空管制官採用試験には、自分の実力では到底合格なんかできないと思っていました。
 管制官の補助をする仕事であれば高卒でも受験資格があり、少し頑張れば自分の手の届く試験だと思い、高校3年次に航空保安大学校学生採用試験(高卒程度の公務員試験)に挑戦しました。しかし、結果は不合格でした。それでも一般の大学へ行こうとは思わず、浪人の道を選び、予備校に通いながら次年度の試験に臨みましたが、結果は二年続けての不合格。自分は何をやっても駄目なんだと自信を失いました。そんな時、両親が創価大学への進学を勧めてくれました。それまで親に迷惑をかけてきたこともあって、特に具体的な目標はありませんでしたが、なんとなく将来は公務員に繋がる学部がいいなと考え、創価大学の法学部を受験しました。

いつも応援してくれる両親と
いつも応援してくれる両親と

なぜ再び航空管制官を考えるようになったのでしょうか?

フィリピンのイースト大学での語学研修
フィリピンのイースト大学での語学研修

 創価大学に合格し、負担をかけてきた親に少しでも恩返しをしたかったのと、せっかく大学に入ることになったからには勉強を頑張ろうとの思いでグローバル・シティズンシップ・プログラム(※)(以下、GCP)に入ることを決意しました。しかし、GCP選抜の二次試験で不合格。高校時代の公務員試験といい、GCP試験でも思うように結果が出せないことに落ち込みました。
 そんな時、二次試験の結果でGCPに選抜されなかったメンバーで構成されるヒマラヤグループの7期生として声をかけていただきました。ここで出会った友人たちが私の大学生活を大きく変えてくれました。

 1年の夏、フィリピンのイースト大学での語学研修にヒマラヤグループの一人として参加しました。ヒマラヤグループとしては初の海外研修ということもあり、研修での各種プログラムによる刺激も大きいものでした。ただ、それ以上に「世界で活躍できる人材になりたい」「困っている人のために仕事がしたい」など、高い目的意識と具体的な目標をもって勉学や課外活動に挑戦する友人たちと、熱く語りあえたことが自分のキャリアを真剣に考えるきっかけとなりました。
 私が小さい頃に航空管制官を目指していたことや、入学前に公務員試験に不合格だったことなどを話すと、友人たちは「本当は航空管制官になりたいんじゃないの?本当に諦めていいの?」と自分のことのように寄り添い、本気でぶつかってきてくれました。また、お世話になった教職員の方も、「内田くんには無限の可能性があるから、やりたいことに全力で取り組んだほうがいい」と親身にアドバイスをしてくださいました。そんな周りの人に恵まれ、自分は「やっぱり空を守る仕事をしたい!」と一度は諦めていた航空管制官の道を意識するようになりました。

イースト大学の学生との交流の様子
イースト大学の学生との交流の様子

航空管制官には高い英語力も求められると聞きました。留学生活はどうでしたか?

留学中のホストファミリーと
留学中のホストファミリーと

 航空管制官を意識するようになり、3年次には留学を決意しました。最初は土地勘もあり慣れ親しんだタイのタマサート大学への交換留学を第一志望にしていましたが、TOEFLスコアがあと1点足りず資格を得ることができませんでした。過去の自分だと落ち込んで次の一歩を踏み出すまでに時間がかかったと思いますが、創価大学での学びや多くの友人との出会いのおかげで、これを自身の成長にどう活かせるかが大事だと気持ちを切り替えることのできる自分になっていたので、すぐに私費留学を選択しました。

 私費留学では、最初の3ヵ月はフィリピンの語学学校に通い、集中できる環境に身を置いて、徹底的に英語の勉強に取り組みました。その後、アメリカのシアトルにあるセントラルカレッジで9ヵ月学びました。タイで幼少期を過ごしていたこともあり、東南アジアのフィリピンでの生活には戸惑いはありませんでしたが、欧米で生活することは初めてでもあったので全てが新鮮な経験でした。
 授業は社会学と経済学の分野を専攻し、特に人種差別について学びました。日本ではテレビやネットの報道でしか学べなかった人種問題について、アメリカの大学ではクラスに中東やアフリカの留学生も多くいたこともあり、日常的に多様性とは何かを考える機会が多くありました。また、ディスカッションやグループワークになると、それぞれ育ってきた環境や文化の背景が異なることから、自分が思いもつなかい意見などが出てきて、他人の考え方を受け入れる姿勢の大事さを学びました。
 交換留学でタイに行っていたとしても学びはあったと思いますが、結果的にアメリカという全く見知らぬ場所で生活し、多様な人たちと触れ合うことで視野が広がったと思います。特に現地の友人たちと会話するときには建前で空気を読むのではなく、自分の意見をしっかり述べることができるようになったと思います。留学を通して、語学力の向上もそうですが、コミュニケーション力を養えたことは大きな財産となりました。

シアトルの景色
シアトルの景色

帰国後、本格的に試験勉強を開始したそうですね。

人生を変えてくれた友人と
人生を変えてくれた友人と

 大学4年生の夏に帰国し、ゼミの課題などもあって、本格的には4年次の1月頃から試験勉強を開始しました。最後の1年は卒業単位をほとんど取得できていたこともあり、1日勉強に集中できる環境が整っていました。コロナ禍で友人たちとも会えない状況で、アパートの自室で机に向かう日々は孤独でしたが、入学当初から励ましあってきた友人たちがLINEでメッセージを送ってくれたり、時にはオンラインで顔を合わせて近況を報告しあったりと、コロナ禍の中で就職活動に懸命に励む友人たちの姿や言葉が大きなモチベーションになりました。

 今年度の航空管制官試験は採用人数が35人と例年に比べてかなり少ない人数でした。昔の自分だと採用人数が少ないことを言い訳にして逃げ道をつくっていたと思いますが、「どんな環境でも必ず結果を出す」と決めて試験に挑みました。一次の筆記試験を合格し、二次試験は面接でした。浪人時代に面接で不合格になったこともあり苦手意識がありましたが、今回は大学生活で培った人間力で勝負しようと自信をもって当日を迎えました。
 航空管制官への思い、入学後の友人たちとの学び、留学で多種多様な人たちと議論をして学んだことなど、自信をもって堂々と語りきることができました。合格発表の日、結果をみたところ予想以上に上位での合格に驚きました。

法学部・中山賢司ゼミの仲間と
法学部・中山賢司ゼミの仲間と

創価大学だからこそ学べたと感じること、これからの抱負をお願いします。

航空管制官として新たなスタート
航空管制官として新たなスタート

 諦めていた夢を思い返し、再び航空管制官に向かって挑戦できたのは創価大学のキャンパスで縁した人たちのおかげです。創立者をはじめ、創価大学で出会った友人や教職員の皆さんが自分の可能性を信じてくれたことで、諦めがちだった性格や考え方が自分次第で夢は切り拓くことができると確信を持てる自分に変わりました。
 充実した教育環境もそうですが、やはり大学でしか得られない大きな宝は友人だと思います。創価大学は志の高い友人と切磋琢磨しながら勉学や部活動を通して自分自身を磨くことができ、一生涯の友人ができる場所です。
 航空管制官の仕事は、国内外問わず人との交流や物流を安全に支える仕事です。創価大学の卒業生として、世界各国と日本を結ぶ仕事に携われることに強く使命を感じます。卒業生としての誇りを胸に、環境を言い訳にせず、自分がもつ力を最大限に発揮する中でどの現場でも必要とされる人材になっていきます。

(※)GCP:“地球市民”を育成するプログラムで、授業は全て英語で行われ、論理的思考力、ディスカッションやプレゼンテーション、データ分析の技能も磨け、全員が海外での短期研修に参加します。詳細は下記よりご覧ください。
https://www.soka.ac.jp/gcp/about/feature/

うちだ ひろき Uchida Hiroki
[好きな言葉]
  • 労苦と使命の中にのみ、人生の価値(たから)は生まれる。
  • 本物の決意は、本物の行動を生む。
[性格]

ポジティブ、責任感が強い

[趣味]
サッカー、Jリーグ観戦
[最近読んだ本]
『青年抄』
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