ヤングケアラーが幸せに暮らせるまちづくりを 八王子市に提案し、最優秀賞に輝く

大前遥さん(法学部法律学科3年)、河口勝さん(法学部法律学科3年)、滑川由美さん(法学部法律学科3年)
法学部法律学科の中山雅司ゼミの学生によるチーム「TSUNAGU」が、2022年12月に開かれた第14回大学コンソーシアム八王子学生発表会の「学生が八王子市長へ直接提案」部門で最優秀賞に輝きました。ヤングケアラーの子どもたちへの支援をテーマに掲げ、約7カ月間にわたる研究活動でチームリーダーを務めた大前遥さん、副リーダーの河口勝さんと滑川由美さんの3人に、研究内容やその過程で学んだことなどについて語ってもらいました。
中山ゼミでは普段どのような活動をされていますか?
大前さん:中山ゼミでは3年生を中心に「SDGsと人間の安全保障」を研究テーマとして学んでいます。SDGsや国際法に関する課題論文を事前に読み込み、ランダムに組んだチームでディスカッションを行いながら課題に対する理解を深めています。
大学コンソーシアム八王子学生発表会とは、どのような発表会なのでしょうか?
大前さん:八王子地域の25大学等が加盟する「大学コンソーシアム八王子」が主催する学生の研究発表会です。さまざまな分野で学ぶ学生が、研究室やゼミでの成果を発表する場として定着してます。中山ゼミからは昨年度初めて出場し、先輩方が最優秀賞を受賞されています。先輩方に続こうと、今年度はゼミから私たちを含め計5チームが参加しました。
発表のテーマを教えてください。
大前さん:テーマは「あなたのみちとヤングケアラー~ヤングケアラーの子どもが幸せと思えるまちづくり~」です。私自身が中学時代、共働きの両親をサポートするため家事全般を担っていた時期があり、以前から、家族をケアする子どもたちに寄り添っていくためにできることを研究したいと考えていました。学生発表会の機会にぜひそれを実現したいと考え、ほかのメンバーにこのテーマを提案して賛同してもらうことができました。
発表は具体的にどのような内容だったのでしょうか。
大前さん:ヤングケアラーの問題には、子ども、家族、学校などさまざまな視点からアプローチする必要があり、行政内でも横の連携を図って包括的な支援を行う必要があります。そのため、組織横断的なヤングケアラー専門の部署を八王子市に設置することを柱に、ヤングケアラーの実態調査の実施、学生ボランティアによる学習サポートなどを提案としてまとめました。さらに、ヤングケアラーの子どもたちが担っている家事や介護を取り除いてあげるのではなく、その子たちが求めることをいち早く察知し、それぞれに合ったサポートを行うことの重要性や、そうした取り組みを通して八王子市が掲げるブランドメッセージ「あなたのみちを、あるけるまち。八王子」の実現に近付くことを訴えました。
研究はどのように進めていったのでしょうか?
河口さん 研究の過程では、視野を広く持つため学外の方と関わり、足を使ってリサーチすることを大切にしてきました。ヤングケアラーに関する問題として、ヤングケアラーの定義が決まっておらず、家庭状況はどうなっているのかなど、実態が把握しづらいという点が挙げられます。
そこで、八王子市子ども家庭支援センターに取材する中で、ヤングケアラーに関するチラシの配布や、講演会に取り組んでいることを知りました。しかし同時に認知度向上にとどまっており、なかなか実態把握には至っていない事もわかりました。
その現状からあらためて、私たち学生に何ができるのかを考えるきっかけになりました。

滑川さん 一人ひとりに寄り添うサポートを実現することにも重点を置き、研究を進めてきました。そこで、子ども同士がつながりを持てる居場所づくりが必要なのではないかと考え、その受け皿になる場として市内の子ども食堂にもうかがいました。
子ども食堂の方にお話を聞く中で、市民同士のネットワークが強いと共に、協力したいと思っている市民の方が多くいることを知り、心強く感じました。
大前さん 皆でリサーチを進め、そこから得られた考えやアイデアをチームのみんなに共有し、ディスカッションを重ねながら理解を深め、発表をまとめました。チームには、国家試験の勉強、留学などと研究を両立していたメンバーもいます。「やらなければならないこと」を両立させているという意味では、ヤングケアラーの子どもたちに近く、その思いを理解して寄り添えるメンバーだったからこそ、内容の濃い発表ができたと感じています。実は当初、チームの目標は「最優秀賞を受賞すること」でした。しかし、研究を進める中で、本当に目指すべきなのは、私たちの研究がヤングケアラーの子どもたちが安心できるまちづくりにつながることであり、「最優秀賞かどうか」は今困難を抱えている子どもたちには関係がないことに気づきました 。発表当日は、私たちの提案が「必要だ」「実現させよう」と感じていただけることを目指してプレゼンテーションを行い、市長から前向きなご意見をうかがうことができました。
リーダーや副リーダーとして、どのようなことを心掛けていましたか? 活動を通して自分が成長したと思うところはありますか?
大前さん 自分の挑戦する姿を通して、チームをリードしていくことです。今までの私は、相手の心に一歩踏み込むことを怖がり、自分の気持ちをそのまま伝えることに苦手意識を持っていました。この研究活動の中で、相手に伝わるまで言葉を尽くして伝える努力、相手の話を聞き理解する努力の大切さを感じ、それを実践することができました。自分の殻を一つ破ることができたように思います。


河口さん 副リーダーという役職にとらわれず、全体を俯瞰してその時求められていることを論理的に考え、行動に移すよう努めていました。最後までグループ全員のまとまりを大切にしたかったので、一人一人と日々コミュニケーションを取ることも意識していましたね。卒業後は国家公務員を目指していますが、行政職に就いた時、今回の研究で学んだ当事者の声を聞き、当事者の視点に立って考える姿勢を生かしていきたいと考えています。
滑川さん 私は、忙しいメンバーを和ませたり、場の雰囲気を変えたりするムードメーカーになろうと心掛けていました。タイプの違う私と河口さんが、それぞれができることを考えて行動していたのが良かったと思います。また、私と大前さんは、創価女子短大から編入してきた仲間でもあるので、大前さんの悩みや相談を聞き、チームとしてどう解決していけばいいかを一緒に考えていました。編入当初は、ゼミで自分を出すことができずに悩むこともありましたが、強い思いで研究をやり遂げ、最優秀賞を受賞できたことが自分の自信につながっています。
後輩のみなさんへメッセージをお願いします。
大前さん 創大は自分を成長させることができる場所です。学生だからできること、自分にしかできない学びを見つけ、最大限挑戦してほしいですし、私自身も卒業まで自分らしい学びをやり遂げたいと思っています。何のためを常に問い続け、悩みにぶつかった時にはそこに立ち返って一歩一歩乗り越えていってください。応援しています!
河口さん 創大には、自分とはどういう人間か、何をしたいのか、将来どんな人間になっていきたいかを真剣に考え、自分の価値を創造できる環境があります。ただ、価値創造は自分一人ではできません。新しい自分は、周りの先生方、先輩、友達との関わりの中ではじめて確立できるものだと思います。ぜひ創大で学び、自分の新たな一面に気づき、人間性を成長させてほしいと思います。
滑川さん 高校時代まではあまり自分の意見を表に出すことがなかったのですが、創大で自分の意思を積極的に発信する仲間に囲まれ、私も自分の考えをしっかり伝えることができるようになったと感じています。友人、先輩、先生方がこれほど真摯に話を聞いてくれる大学は、ほかにないと思います。みなさんも創大で学び、一生涯の友達を作ってください。

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「英知を磨くは何のため」
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天文学と仏法を語る/ロナウド・モウラン、池田大作

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戦後政治史/石川真澄・山口次郎

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