Vol.89

学生団体のTシャツづくりで 衣類のサステナビリティを推進するプロジェクトを実践

坂部 秀明(さかべひであき)
経営学部 経営学科4年

中川 貴裕(なかがわたかひろ)
経営学部 経営学科4年

 

環境対応の視点で企業を評価する学びとして、産学連携でSDGsの実践プロジェクトに取り組んでいる経営学部野村ゼミ。活動の一つである「ふくのきもち」プロジェクトの一環として、昨年ゼミ生たちが行ったのが、学内の学生団体が作るTシャツを環境に配慮したものに変える取り組みです。本学の第2回SDGsグッドプラクティスで優秀賞を受賞したこの活動で、中心的役割を担った坂部秀明さんと中川貴裕さんに、プロジェクトの特色や活動に込めた思いについて聞きました。

野村ゼミが継続的に取り組んでいる「ふくのきもち」プロジェクトとはどのようなものですか?

坂部:不要になった衣類や在庫生地を焼却処分する際に排出されるCO2や、廃棄に伴う海洋汚染などの環境負荷に着目し、その解決を目指して始まったプロジェクトです。

中川:プロジェクトが始まった2021年度は、廃棄予定だった生地でTシャツを作って学内で販売しました。2年目以降は捨てられる衣類を学内で回収し、それを糸に再生して新たなTシャツを作る活動に挑戦し始めました。

学内で販売したTシャツ
学内で販売したTシャツ
捨てられる衣類の回収BOX
捨てられる衣類の回収BOX

「ふくのきもち」から派生した今回のプロジェクト「学生団体が作製するTシャツを環境に配慮したTシャツに!」は、どのようなものですか?

中川:再生素材を使った環境配慮型Tシャツを作りたいと希望する団体を募り、CO2排出量などを計測してもらうことを条件に、Tシャツを作る費用の一部を助成するプロジェクトです。廃棄される衣類に焦点を当てていたこれまでの「ふくのきもち」とは異なり、新たに購入される衣類の環境影響を見直す、新しい取り組みになりました。

坂部:学内の学生団体が創大祭などに合わせてオリジナルのTシャツを作っていることに着目して企画しました。そのTシャツを、長く着ることができてリサイクル可能な、環境に配慮したものに変えることで、創大のカーボンニュートラルに貢献できるのではないかと考えました。

中川:学生にエコを意識してもらい、選択してもらえるようにするためにどうすればいいか悩みました。再生素材のTシャツを使うと、通常素材のTシャツより2~3倍ほど制作費が高くなります。SDGsグッドプラクティスの助成金を活用することで学生が手に取りやすい金額に抑え、より多くの学生が環境問題への行動に踏み出してもらうきっかけづくりをめざしました。

CO2排出量の計測を支給の条件にしているところがユニークですね。

坂部:まず、私たちゼミ生が専門家のレクチャーを受け、それをもとに学生団体のみなさんに計測方法などを説明し、計測した結果を報告してもらいました。私たちのゼミには「学習・行動・実装」というモットーがあります。単に環境に配慮したTシャツを採用しておしまいではなく、実際に手を動かして計測してもらうことで、環境問題に対して少しでも私たちと思いを同じくしてもらえたらという願いもありました。

学生団体のみなさんに計測方法を説明する様子
学生団体のみなさんに計測方法を説明する様子

ほかにもプロジェクトを企画する上でこだわったことはありますか?

坂部:「長く着られるTシャツにする」という点は妥協したくなかったので、素材の選定にはこだわりました。

中川:今回採用したのは再生素材100%のポリエステルです。作ってから廃棄されるまでの製品ライフサイクルのCO2排出量が計測しやすいというメリットがありますが、何より洗濯しても型崩れしにくく速乾性があるので、Tシャツにした時に学生が使いやすい。それも大きな決め手になりました。

2人はそれぞれプロジェクト内でどのような役割を果たされたのですか?

坂部:主に事務的な作業や会計を担当していました。Tシャツ製作に関わる業者の方、計測のレクチャーをしていただく専門家、学内の関係部署など、学生以外の方々とのやり取りが多かったのですが、すごく楽しくて充実していました。ただ、今回は単年度のプロジェクトで、10月の創大祭にTシャツ作製を間に合わせる必要もあったので、常に期限に追われていた感覚があります。

中川:プロジェクト全体のデザイン、Tシャツにプリントするデザインの作製、広報などを担当しました。ゼミ活動をきっかけに、1年ほど前から独学でデザインの勉強を始めたのですが、今回は各団体から出された原案をもとにデザインを固める作業を任せてもらい、それも一つの実践的な学びになりましたね。坂部君も言ったように時間の制約がある中で、みんなと協力できたからこそやり遂げられたんだなと思います。

プロジェクトに参加した学生団体からの反応はいかがでしたか?

中川:4つの学生団体が参加し、計103枚のTシャツを作ることができました。みなさん再生素材に対してあまりポジティブなイメージがなかったようなのですが、実際に出来上がったTシャツを着てみて「環境にやさしいだけでなく着心地もよかった」「洗濯してもすぐ乾く」「生地が丈夫なので長く着られそう」という反応が返ってきました。とても好評でうれしかったです。「環境に配慮した製品は高価で手が出しにくい」「環境に配慮するためには何かを我慢しなければならない」といったイメージを変えることができたのではないかと思います。

学生団体:創価アグリレボリューションの皆さんが作製したTシャツ
学生団体:創価アグリレボリューションの皆さんが作製したTシャツ
作製したTシャツを着用する創価大学桑の日実行委員の皆さん
作製したTシャツを着用する創価大学桑の日実行委員の皆さん

プロジェクトの成果はどのようなものでしたか? 実践を通じてご自身に気付きや成長はありましたか?

坂部:専門家の指導のもと試算したところ、今回306㎏のCO2を削減することができました。CO2排出量の計測を自分たちで行うことに対して、企業の方や先輩からも「学生のうちからこんなことまで取り組んでいるのですね」と、評価するお声をいただいたことが心に残っています。野村ゼミで時代を先取りしたテーマを研究し、それをプロジェクトで実践することができ、大きなやりがいと喜びを感じることができました。学外の方とのやり取りでも「学生ができることは学生がやる」という点にこだわり、やり遂げたことも成長につながりました。それも、野村先生や大学職員の方々のご協力と温かい支援があったからこそだと思います。ご支援いただいた方には心から感謝しています。

中川:たしかに、僕たちがやりたいと言えばどこまでも挑戦でき、つまずいた時にはアドバイスをいただけるという環境が、とてもありがたかったですね。僕がこのプロジェクトで感じたのは、単に利益を上げるだけでなく、環境問題の解決のために学生や関係者と協力し、「つくる人・つかう人・すてる人」の立場で考える人間主義の重要性です。未来の地球のためにという思いに加え、学生にもTシャツを作る企業にもメリットがあるフェアなプロジェクトをデザインできたことも自分にとっての収穫でした。

最後に、創価大学をめざす後輩たちにメッセージをお願いします。

坂部:創大は自分の興味や関心を広げられる場所だと思います。やりたいことに挑戦する機会が充実しているだけでなく、「やってみたら?」と背中を押してくださる教職員の方、学生の仲間がいます。その目に見えない繋がりや絆、温かさは、創大ならではの特色です。私自身も入学前に思い描いていた以上に、充実した学びとたくさんの経験ができました。経営学だけでなく、入学前から興味を持っていた言語学を学べる文学部の授業も履修し、どちらも満足できる学びを得ることができたと思います。みなさんも創大で、思い思いに実りの多い学生生活を楽しんでください。

中川:大学に入学するとき、やりたいことや夢がまだはっきり見えていないという人もいると思います。僕自身もそうでした。しかし、そこから野村先生と出会い、ゼミに入って環境問題に強く引かれ、深く学ぶようになって今の自分がいます。坂部君が言うように、僕も創大には挑戦できる環境があると思います。そして、頑張る学生を応援してくれる人がいます。今のあなたのワクワクする気持ち、好奇心を大切にして、ぜひ自分の選択を信じて頑張ってください。創大で成し遂げられることが、きっとあるはずです。

さかべ ひであき Hideaki Sakabe
[好きな言葉]
みんなちがってみんないい
[性格]
何事にも一生懸命、完璧主義、心配性
[趣味]
読書
[最近読んだ本]
夜明けのすべて/瀬尾まいこ
中川 貴裕 Nakagawa Takahiro 
[好きな言葉]
負けない努力
[性格]

理想主義、積極的、努力家、繊細

[趣味]
ランニング、YouTube・映画鑑賞
[最近読んだ本]
SDGsな仕事/井上聡
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