学生の若い力とアイデア・行動力で、大学のある“地元”八王子を活性化する

森田 克望(もりた かつみ)
法学部 法律学科 3年
創価大学法学部は、2026年度に法律学科の名称を法律政治学科に名称変更します。法学部では従来から、法律系と政治・政策系の領域を関連づけて、総合的に問題解決能力を鍛えることを目指しています。こうした学びを象徴するのが、学生たちが地域社会に出向き、そこで課題を発見し、解決策を提案する授業です。和足ゼミで、大学周辺の加住地区における地域活性化や地域貢献の取り組みをしている森田克望さんに、身近な社会問題の現場に飛び込んで得た学びと、その成果について聞きました。
Q和足ゼミの探求型授業とはどのようなものですか。
実践的科目として位置付けられている「まちづくり八王子フィールドワーク」です。この授業では八王子市の職員の方から地域の現状と取り組みについての講義を受け、その後、グループに分かれて学生が現地に足を運び、出された地域の課題に対し自分たちなりの解決策を模索・提案をします。
私たちは「大学と大学周辺地域(加住(かすみ)地区)との連携活動」というテーマで活動を開始しました。まず、地域の歴史を学び、現状を把握するために自治会をはじめ、自然や歴史を守る活動をするNPO法人など、さまざまな分野の方々に現場を案内していただきました。お話を伺う中で、八王子には21校もの大学があるにもかかわらず、こうした活動メンバーの中に学生が一人も入っていないことを知りました。住民のみなさんからも「会の“若手”が40〜50代になってしまっている。もっと若い人たちの意見がほしい」といった声があり、地域づくりを継続して行うための若い担い手が不足しているという課題が浮き彫りになりました。

Q 学生が地域づくりに参加するうえで、どんな苦労がありましたか?
一番苦労したのは、地域の方々との関係の構築です。私たち学生が何か提案をするにしても、付け焼き刃のような内容は見抜かれてしまいます。地域の繋がりを構築するために、住民の方々を中心とした「加住中学校区地域づくり推進会議」という会議が昨年から開催されています。私たちがこの会議に初めて参加した際、加住地区の課題をリスト化して、まずは解決のアイデアをたくさん出していこうとしました。しかし、住民の方から「考えが浅い」と厳しく指摘されたこともありました。
住民の方々は、いろいろな世代、いろいろな団体の方がいらっしゃって、各々考え方が違いますし、これまでの経験や培ってきたものも異なります。みなさんさまざまな現実を知ったうえで発言されている。一方で、私たち学生は社会経験があまりありません。そうしたこともあって、初めのうちは現実感の乏しい発言が目立ったのだと思います。それでも「加住中学校区地域づくり推進会議」に参加するからには、ただ出席するだけでなく、学生も積極的に関わっていくんだという意気込みを住民のみなさんに知ってもらう必要があります。会議では1つ発言すると、10倍反論されるようなこともありましたが、めげずにアイデアを出し、対話を重ねました。そうするうちに住民の方々も、学生の意見を否定ばかりしていては地域の発展はないと言ってくださるようになり、お互いに地域のために最も良い着地点を見つけようという雰囲気が生まれました。私たちも、会議の内容を決める事前打ち合わせから参加して、会議当日の司会進行を務めるなど、主体的に会議に関わることで、徐々に信頼関係が育まれていったように思います。さらに、8月に行われた推進会議では私たちゼミ生の他に、東京純心大学の学生や今年のフィールドワークに参加した方も多数出席し、参加者の半分近くが学生でした。少しずつではありますが、学生が地域の中に入り込んでいる実感を得ることができています。


Q これまでに決まったことや、今進めている取り組みは何でしょうか。
地域の担い手不足に対しては、「加住地区に特化した学生委員会を発足」という解決方法を提案したところ、好評価を得ることができました。学生委員会は実際に発足させる為に最近始動したばかりですが、地域の方々との関係を構築していくための土台的な役割を担えると考えています。さらにこの活動を創大だけに留まらない、広範囲な活動にしていくため、東京純心大学の学生にも参加してもらい、地域住民の方と創大の学生との3者で一体となったイベントなども企画していきます。これについてはすでに実行していて、バドミントン大会を定期的に開催していますし、食べ物を持ち寄って交流会も開催しました。他にも、和足ゼミ生だけですが滝山城跡で毎年開催されている桜まつりと市民センターまつりに運営として学生が参加し、甘酒や豚汁を作ったり、ホタテを焼いたりして、交流を深めています。また、今年の八王子祭りには、地域の「加住万結乃会(かすみまゆのかい)」という盆踊りチームの一員としてメンバーの給水係として活動しました。


Qこれらの活動に対する地域の方々からの反応はいかがでしたか?
初めて推進会議に参加した時は、「誰だ、お前たち?」と眉間にシワが寄った目で見られているようなプレッシャーを感じましたが、顔を合わせて一緒に話しあっていくうちに、だんだん笑顔が増えていきました。信頼を得るためには、学生側が主体的に動いて自分たちにできることをアピールしていくことが大事で、それができれば受け入れてもらえるんだとわかりました。
また地域で行われているイベントに参加した際には「学生さんがいてくれて助かった」と言っていただきましたし、場も明るくなったという印象があります。また、主催者から「企画内容がマンネリ化する懸念もある中で、学生が新しい考えや価値観でイベントを盛り立ててくれたら」と、期待をかけていただけるようになりました。こうした関係が築けたことは、学生委員会を軌道に乗せるためにも必要なことで、手応えを感じていますし、何よりも自分自身も楽しいと思えるようになりました。

Q 提案した活動が認められたと実感したことはありますか。
「大学コンソーシアム八王子」において、令和7年度学生企画事業補助金に和足ゼミの地域活動が採択されました。大学コンソーシアム八王子は、学園都市である八王子において、コンソーシアム八王子に加盟している、大学・短期大学・専門学校を含めた25校と地域住民、企業、行政などが連携し、地域の活性化を図る目的で6つの事業を行っていますが、そのうちの一つである「学生活動支援事業」の中で、「学生委員会設置」のアイデアが学生企画事業補助金の対象となりました。
学生委員会では、他大学も巻き込んだ地域住民との交流イベントを企画する予定ですが、その準備資金として補助金を使えればと考えています。今の時代はタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する若者が多いので、より多くの人を巻き込むためにはインセンティブが必要になることもあると思います。ただ、目先の利益ばかりで人を集めても持続的な活動にならないということは、この1年半ぐらいかけて活動してきてわかったことなので、インセンティブはあくまでもきっかけとして、さらに深いつながりを学生と地域住民の間につくれたらと思います。


Q地域づくりや地域貢献の面白さとはどんなところでしょうか。
地域それぞれの形がある、枠にはめることができない領域で、地域の特色を生かしてみんなが笑顔になれることを模索していく。そこに自分が関われることにワクワクします。これは、私だけが感じていることではありません。実際に「加住地区地域づくり推進会議」やイベントには、和足ゼミ生以外の学生が参加することも増えていますし、彼らが事前の打ち合わせに参加した時に「なんだか楽しいね」と言ってくれたことが、地域づくりや地域貢献に携わることの面白さを物語っていると思います。関わり方次第で、地域のかたちがいろいろな姿に変わる、そこに大きなロマンを感じています。

Q今後進めていく取り組みと、意気込みを聞かせてください。
創大に地理的に近い、東京純心大学・工学院大学と連携して、地域の課題解決に向けて活動するほか、イベントを行うなどして地域の活性化を目指したいと考えています。その過程で、これまでに培ってきた地域の方々との信頼をさらに深め、学生がつくりあげるまちへと変化させたいですし、最終的には八王子市全域において学生参加型の地域づくりが行われるようにしたいと思っています。個人的には、八王子市と学生と住民の方々の架け橋となって「こういうことをしたいんだけど、どうすればいいかな」と、相談される人間になれたらうれしいです。
Q創価大学をめざす後輩たちにメッセージをお願いします。
創価大学は目には見えない魅力がたくさん秘められています。私は入学当初、具体的な夢もなく、なんとなくの関心で法学部を選びました。ですが、創大に通う学生は夢や目標に向かって全力で進んでいる人が多く、自分もみんなのように、「何か頑張りたい」と感化されました。まずは、「こうしてみたいな」というざっくりとしたことから少しずつ行動するようになり、和足ゼミの授業を通してたくさんの縁に恵まれ、充実した日々を送っています。将来は公務員として、まちづくりに貢献したいという目標もできました。
些細なことでも前向きな気持ちで取り組めば、ひとつの出会いが縁となり、大きな結果へとつながることもあります。まずは自分が少しでも興味、関心を持てることに首をつっこんで、一歩を踏み出してみましょう。何一つとして無意味になることはありません。挑戦・冒険を続けていれば必ず道は拓けます!一緒に学び続けましょう!


<法学部 法律学科 3年>
森田 克望
Morita Katsumi
- [好きな言葉]
- 情けは人の為ならず
- [性格]
- アクティブとパッシブの切り替えが激しい
- [趣味]
- 「ゆず」の曲を聴くこと
- [最近読んだ本]
- 妻に捧げた1778話/眉村卓