GaLSIC西原所長のコラムが科学誌『Cell』のVOICESに掲載
創価大学糖鎖生命システム融合研究所(GaLSIC)所長の西原祥子教授が、この度世界的に高名な科学誌『Cell』の「VOICES」欄に、「What comes next in glycobiology」“糖鎖生物学において次は何が大切か”というテーマで、西原所長のコラム記事「Understanding regulation and variation」が日本人で唯一掲載されました。
西原所長は、最近の糖鎖生物研究の進歩から、糖鎖発現の制御と糖鎖の多様性の解明が重要な研究課題であり、「糖鎖生物学の世界を探求する上で、ウェット研究(生命科学)とインシリコ研究(情報科学)の融合が不可欠」と述べています。
記事は以下のリンク『Cell』-「What comes next in glycobiology 」(VOICES)よりご覧ください。
教授
西原 祥子
ニシハラ シヨウコ
- 専門分野
機能生物化学、細胞生物学、発生生物学、医化学一般、糖鎖生物学、幹細胞生物学、生化学、分子生物学
- 研究テーマ
生体における糖鎖の役割を明らかにすることを目的として、研究を行っています。ショウジョウバエ個体やES細胞、iPS細胞、癌細胞、癌幹細胞、ヒトモデル細胞、オルガノイドにおいて、様々な遺伝子工学の手法を用いて、糖鎖関連遺伝子の発現を調節して糖鎖機能の解明をしています。また、一部の遺伝子については、ノックアウトマウスを作製し、解析を行っています。
(1) ショウジョウバエを用いた糖鎖関連遺伝子の解析;生物種を越えて保存されている糖鎖の生理機能の解明
ショウジョウバエは、最も遺伝学の進んでいるモデル実験動物です。「生物種を越えて保存されている糖鎖の生理活性」に焦点を置いて、ショウジョウバエの糖鎖関連遺伝子の変異体やノックダウン体の表現型の解析や生化学的分子生物学的解析から、生物の発生における糖鎖の役割を明らかにしていきます。特に、血液幹細胞の維持と分化に必要な糖転移酵素、神経の軸索形成に必要な糖鎖構造などについて、現在、解析を行なっています。
(2) ヒトや哺乳類の多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)、オルガノイドにおける糖鎖機能の解明
(1) で明らかになった糖鎖機能がヒトや他の哺乳動物にも共通するものであるか、胚性幹細胞を中心とした培養細胞で検討していきます。具体的には、ES細胞やiPS細胞を対象に、「糖鎖の幹細胞維持や分化における役割を解明する」することを目的とします。このプロジェクトでは、2008年に『ES細胞の維持に糖鎖(ヘパラン硫酸)が関与する』ことをはじめて明らかにしました。それをさらに押し進め、上述の4つの糖鎖構造がナイーブな多能性状態を維持に必要なことを明らかにしました。現在、それ以外の様々な糖鎖にまで解析の範囲を広げています。胚性幹細胞における糖鎖の機能解析の例は、今なお多いとは言えず、この分野でパイオニアとしての役割を果たしています。(3) PAPS輸送体ノックアウトマウスの機能解析
PAPS輸送体は、糖鎖やタンパク質の硫酸化に必須であり、これがないと各々の分子は硫酸化修飾を受けられません。私達は、2003年にこれを初めて単離・同定しました。現在、ノックアウトマウスを作製して解析を行なっています。このマウスが様々な疾病を誘発することを見いだし、それらの発症機構について解析をしているところです。
(4) 未診断疾患に関わっている糖鎖関連遺伝子の機能解析
これまでの解析から、糖鎖が多くの希少な未診断疾患に関わっていると予測されたので、それらの解析も開始しました。疾病との関連が見いたされた変異をもつ糖鎖関連遺伝子の機能の喪失を、モデル生物や幹細胞からの分化系、オルガノイドなどを用いて解析し、病気との関係を明らかにしていきます。