Vol.69

SDGsグッドプラクティスで最優秀賞を受賞。 ソーシャルビジネスで取り組む世界の海洋ごみ問題

大束 良明(経営学部経営学科4年)

 陸地から海へ流出する海洋ごみは、海の環境汚染や生態系の破壊の原因となり、世界的に大きな課題となっています。海洋ごみ問題の解決を目指し、創価大学で学びながら仲間とともに起業し、ソーシャルビジネスを展開しているのが、経営学部4年の大束良明さんです。その取り組みが評価され、今年3月に行われた創価大学の第1回SDGsグッドプラクティスでは、タイプA(貢献度の高い取り組み)の最優秀賞を受賞しました。大束さんに、海洋ごみ問題やソーシャルビジネスへの思い、受賞の喜びなどを聞きました。

大束さんが代表を務めるRanchu Japan合同会社(以下、Ranchu)の目的や事業内容について教えてください。

鵠沼(くげぬま)海岸にてビーチクリーンの様子
鵠沼(くげぬま)海岸にてビーチクリーンの様子

 Ranchuは、地球にやさしいアイテムの制作や販売を通して、海洋ごみの削減を目指すソーシャルビジネス企業として設立しました。会社のメンバーは8人で、高校からの友人が中心です。現在は、①回収した海洋プラスチックを原料とするアクセサリーの制作・販売、②生分解性の素材で作られたスマートフォンケースの販売を事業として行っています。さらに、海洋ごみ問題への理解を深める海や河川のクリーンアップ活動も企画・実施しています。

海洋ごみの問題に興味を持ったきっかけを教えてください。また、社会課題を事業で解決していく「ソーシャルビジネス」の形を取ったのはなぜでしょうか?

 子どものころ、私はいつも魚の図鑑を持ち歩いているほど、魚が大好きな少年でした。小学3年生の時、テレビ番組で、地球温暖化の影響によって白化したサンゴ礁や魚がいなくなった海を見て、魚がたくさん住めるきれいな海を取り戻したいと思ったことが、海洋ごみ問題に取り組む原点です。以前はほかの商品を扱うビジネスをしていたのですが、大学2年生の時に、あらためて自分が本当に取り組みたいのは海の環境問題だと思い、新たにRanchuを立ち上げました。
 最近、社会のさまざまな場面で「持続可能性」が重視されるようになっています。ボランティア活動ももちろん意義深いものだと思いますが、経済効果や雇用創出をともなうソーシャルビジネスの方が、より持続可能性が高く、問題解決に貢献できるのではないかと考え、事業として取り組むことにしました。

小学校3年生の時に書いた作文
小学校3年生の時に書いた作文
イカを素手で捕まえました:10歳
イカを素手で捕まえました:10歳

創価大学の第1回SDGsグッドプラクティス(タイプA)に応募しようと思った理由、最優秀賞を受賞した時の気持ちをお聞かせください。

 私たちのビジネスは、SDGsが掲げる17の目標のうち、「海の豊かさを守ろう」など5つの目標にアプローチできるものだと考えています。そうした自分たちの取り組みを学内外に広く発信し、共感してくれる方を増やしたいという思いで、応募しました。
 元々このビジネスは、コンテストなどで評価されるためではなく、社会課題に対する私の思いから始めたものです。その思いが、人間主義経営の重視、グローバルな視野の育成という創価大学の教育理念やSDGsの精神と共鳴して、高く評価していただいたことは、本当にうれしく、光栄に思います。また、この賞はRanchuのメンバーだけでなく、海洋ごみ問題に取り組む仲間や支援してくださる方々のものでもあります。今後も支えてくださる方々とともに、挑戦を続けていきます。

仲間と記念写真(左から3番目)
仲間と記念写真(左から3番目)

今後、Ranchuが計画している事業や達成したい目標を教えてください。

フィリピンネグロス島の海岸の様子
フィリピンネグロス島の海岸の様子

 当面は、現在行っているアイテムの販売などを通して事業の収益化を図り、その収益を資本として新商品を開発していきたいと考えています。また、月1回のペースでクリーンアップ活動を企画し、環境意識を高めることに力を注いでいきたいです。
 より長期的な計画として、Ranchuの最終目標である海洋ごみ問題の根本的解決のため、フィリピンのネグロス島で海洋ごみを回収・資源するシステムの構築を進めています。
 フィリピンは、海洋プラスチックの排出量が世界3位(2010年推計)の国であり、国際的にも大きな問題になっています。フィリピンの実情を知りたいと思い、昨年ネグロス島で調査を行ったのですが、そこで目にしたのは、貧困層が暮らすスラム街ではごみ回収が十分行われず、川や海に直接ごみが捨てられている現状でした。そして、その背景には、地方自治体の財源不足によって、ごみ処理に必要なインフラが不足しているという事情があることも分かりました。
 そうした状況を解消するには、地域の社会経済の発展が必要だと考え、ネグロス島に海洋プラスチックを処理・加工する工場を設立して、現地の方々に雇用や収入を提供することを目指しています。今年の夏には、第1段階として現地にNPO法人を作り、海洋ごみを回収するシステムを構築する計画です。さらに、将来的には、AIなどを活用した海や河川でのごみ回収技術の開発、衛星データを活用した海洋ごみの追跡システムの開発にも取り組んでみたいです。

海岸にて子どもたちと海洋プラスチックを回収
海岸にて子どもたちと海洋プラスチックを回収
土に還るiPoneケース
土に還るiPoneケース

ご自身の活動に、経営学部の学びが生かされていると思うことはありますか?

プレゼンの様子
プレゼンの様子

 アクティブラーニングの授業を多く履修してきたので、ビジネスに欠かせないプレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルが磨かれたと思います。
 また、実践的な学びが得られた授業の一つに、3年の後期で履修した「専門基礎演習」があります。企業の経営者を講師に迎え、グループワークで事業の改善提案をまとめてプレゼンする授業なのですが、自分の事業と重ねて考えられる部分が多く、今後のマーケティングや経営に役立つ知識と経験が得られました。さらに、半年間にわたるグループワークの中で、チームワークの維持、モチベーションの維持、マネジメントなど、組織のリーダーとしての役割も学べたと思います。

創大を目指す後輩たちにメッセージをお願いします

 私は、自分自身を常に成長させること、世界中の人々と協力して社会貢献することを目標としていますが、創大にはそのような姿勢を持つ学生が多いと感じています。また、学部の授業のほかにも、さまざまな学生主体のコミュニティやイベントがあり、学びや経験の選択肢の多い場所だと思います。ぜひこの環境に飛び込んで自分のアンテナを広げ、学生時代にしかできない経験をしてほしいです。
 私は、スティーブ・ジョブズの「Connecting the Dots(点と点をつなげる)」という言葉が好きです。人生で一生懸命やってきたことは、その時はバラバラな点のように見えても、後に点と点が結びついて、思いも寄らない広がりが生まれるかもしれません。私自身、今興味があること、今やりたいことに一生懸命挑戦し、たくさんの「点」を打つことを大切にしてきました。みなさんにも、創大でいろいろな経験をし、たくさんの点を打ってほしいと思っています。

大束 良明 Otsuka Yoshiaki 
[好きな言葉]
Connecting The Dots
[性格]

ド・マイペース 

[趣味]
SNS、読書、映画鑑賞
[最近読んだ本]
デザインと革新/太刀川瑛弼 
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