《卒業生の活躍》児童心理司
小嶋 貴子さん 教育学部2018年度卒業
東京都庁 福祉保健局 少子社会対策部 児童相談所
教員と心理職、どちらの可能性も捨てたくないから創価大学を選んだ
私が創価大学への進学を決めた理由は2つあります。1つ目は、オープンキャンパスに参加して図書館などの設備や奨学金制度が充実していると知ったから。2つ目は、創価大学の教育学部なら教育学と心理学をどちらも学べると教わったからです。私の父親は聾学校の教員で、その姿を見て自分も人の心に寄り添う仕事がしたいと思い、大学では教育について学ぼうと考えていました。一方、身近な人が精神疾患になり、本人の計り知れない苦悩とその家族が大変な思いをしている姿を目の当たりにして、どうにかして本人と家族を支援したいとも思うようになり、教員と心理職のどちらの可能性も拓けている創価大学はとても魅力的でした。
当初は教員になることも視野に入れ教職課程を受講していましたが、大学で心理学の授業を履修するたびに心理の勉強をおもしろいと感じ、もっと学びたいという気持ちが募っていきました。授業の一環で児童養護施設のボランティアへ参加して実際に子どもたちとふれ合う機会もありましたし、ゼミでは精神科病棟を訪問して患者さんや働いている方々の様子を見学することもできました。授業やゼミで現場を知る機会に恵まれたことで少しずつ心理職として働くイメージが固まっていったのだと思います。
大変な時期には必ず誰かが手を差し伸べてくれる。それが創大のやさしさ
創価大学で4年間を過ごし、最も成長したと感じるのは困難な状況でも最後までやり抜く力が身についたことです。高校時代に父親が他界していたので、大学では学費と生活費を捻出するため常にアルバイトをする必要があり、そのなかで勉強や課外活動に取り組んできました。プレゼンテーションや試験の前は特に忙しく、勉強に専念したいと思うときもありましたが、限られた時間だからこそ集中して学ぼうと決め、移動中などの隙間時間を活用したり、授業で理解できなかったことや疑問点はすぐ先輩や教授に質問して解決するように心掛けました。
相手の立場で考え、最後までやり遂げる。仕事のベースは大学で培ったもの
いまは児童心理司として、虐待、非行、障害などの問題を抱える子どもと親を心理面からケアしています。特に虐待を受けた子どもには長期的な支援が不可欠です。職場の先輩からは、「これまで小嶋さんは頑張れば成果が出る世界にいたと思う。でも、この仕事は頑張ってもすぐに成果は出ないし、子どもはなかなか変わらない」と言われました。この話を聞いて支援する側が忍耐強くいることが重要であると感じました。子どもたちはなかなか本音を話してはくれません。何度も表面的な会話を続け、ふとしたタイミングでちょっとした悩みを相談してくれるようになる。その瞬間から人間関係が築かれ、環境改善に向けた具体的な取り組みがはじまります。感情を感じないようにして対処してきた子が、少しずつ自分の考えや気持ちを伝えてくれるような場面や変化に立ち会うことができたときは、やりがいを感じます。
児童心理司は児童相談所での来所面接だけでなく、家庭訪問の同行や児童養護施設、学校、母子生活支援施設、一時保護所などさまざまな場所で面接を行いますが、どのケースでも実践しなければならないのは、相手の立場で物事を考え、困難な状況でも諦めず最後までやり遂げること。これらは大学時代に恩師や信頼できる友人・先輩をはじめ多くの人と出会い、学んだことです。これからも大学での学びと経験を忘れず、子どもたちや親がどのようなことに困っていて、どんな支援を必要としているのか一緒に考え、必要なケアを実践していきたいと思っています。そして知識と経験を積み、ゆくゆくはDVを受ける女性を支援する女性相談センターや引きこもり問題に取り組む精神保健福祉センターなど幅広い心理の仕事に従事していきたいです。
※大学案内『キャンパスガイド2024』より引用。所属部署・業務内容は取材時のもの。