研究科について
研究科長からのメッセージ
本研究科は、「人間とは何か」という根源的な問いを探究する人文・社会科学の拠点です。
AIが発達する時代においても、問いを立て、考え続ける力と倫理を重視し、社会の未来を構想する人材を育成しています。
■ 本研究科の歩みと特色
本研究科は1975年、英文学専攻・社会学専攻の2専攻から出発しました。その後、人文学専攻、国際言語教育専攻が加わり、現在では4専攻7専修を擁する大学院へと発展しています。
建学の精神「新しき大文化建設の揺籃たれ」のもと、言語学、文学、哲学、歴史学、社会学、日本語学、仏教学、国際言語教育など、多様な分野にわたる教育・研究を展開してきました。
これらは単に並立する知ではありません。すべては「人間とは何か」という問いへと向かう、多様な思考の軌道です。
文学研究科長 小林 和夫
■ 何を、どのように学ぶのか
本研究科では、文献研究、フィールドワーク、思想分析、歴史研究、データ分析、デジタル・ヒューマニティーズなど、多様な方法を通じて研究を進めます。
修士論文や博士論文の執筆は、その集大成となる重要な営みです。問いを立て、資料と向き合い、思考を深め、それを言葉として結晶化させていく。この過程そのものが、学問の核心です。
■ AI時代と学問の意味
AIは文章を生成し、分析を行い、膨大なデータを処理します。知識の収集と整理という点では、人間を上回る場面も増えていくでしょう。
しかし、AIは「問いを引き受ける存在」ではありません。
何を問題とするのか。
どの不均衡を是正すべきか。
どの価値を守り、どの価値を更新するのか。
それを決めるのは人間です。
AI時代において重要なのは、「答えの速さ」ではなく、問いを立て、深め、それに責任を持つことです。人文・社会科学は、そのための力と倫理を育む場です。
■ 「遅い思考」の価値
現代社会は、即時性や効率性を重視します。しかし、思考には「遅さ」が不可欠です。
資料を読み、概念を吟味し、歴史を振り返り、異なる立場に耳を傾ける。こうした時間をかけた思考が、社会を拙速な判断から守ります。
人文・社会科学は、社会のブレーキであると同時に、進むべき方向を示す羅針盤でもあります。
速い社会の中で、あえて「遅く」考える力。
それが、これからの時代に求められる知のあり方です。
■ 批判知と創造知
人文・社会科学はしばしば「批判の学問」と言われます。私たちは、制度や価値の前提を問い直します。
しかし、それは否定のためではありません。批判は、新しい社会を構想するための出発点です。
未来の社会制度、文化政策、教育のあり方、国際関係の構築——これらを支えるのは、人文・社会科学的な思考です。私たちの知は、「批判知」であると同時に「創造知」でもあります。
■ 人文知の社会実装
「社会実装」は、技術の応用だけを意味するものではありません。
例えば、
・ジェンダー平等や多文化共生といった課題を問い直すこと
・公共政策に倫理的視点を導入すること
・見えにくい不平等や排除を可視化すること
・異なる立場をつなぐ言語を生み出すこと
これらもまた、人文・社会科学の重要な社会的役割です。
私たちの研究は、政策形成や公共議論、国際対話の基盤となり、社会の「深層設計」に関わっています。
■ どのような人を求めているか
人文・社会科学を通じて、人間・社会・文化の課題に向き合いたい人。
自ら問いを立て、粘り強く考え続けたい人。
既存の枠組みにとらわれず、新しい視点を切り開こうとする人。
そのような意欲を持つ皆さんを、本研究科は歓迎します。
研究者を志す方はもちろん、教育、文化、国際分野など、多様な進路を志向する方や、社会人として学び直したい方にも開かれています。
■ 未来へ
AIが高度化する時代だからこそ、人間が深く考えることの意味は、いっそう明確になります。
文学研究科で、共に問い、共に考え、共に未来の社会を設計していきましょう。
ここから始まる問いが、社会を静かに変えていく―
私たちはそう信じています。