【地球平和共生チュートリアル特別講義】 社会課題解決とキャリア形成―事例としてのゲイツ財団

講師:平井 光城 氏(Professional for Impact 代表取締役 兼 ゲイツ財団 日本拠点コンサルタント)
   廣原 萌 氏(Professional for Impact 職員 兼 ゲイツ財団 日本拠点コンサルタント)

講義の主なポイント

 本講演では、ソーシャルインパクト領域の第一線で活躍する平井光城氏と、ゲイツ財団の国内活動を支援する廣原氏を迎え、社会課題解決を軸としたキャリアパスやグローバルヘルスの最前線について、学生との対話を交えたセッションが行われました。

自らの環境を切り開き、国際協力の道へ
 平井氏は、自身の原体験として、中学時代の苦い経験とそこからの脱却について語りました。「幸福は環境で決まるのではない」という言葉に触れ、環境に負けずに自らの道を切り開く決意をしたことが、その後のSUAへの進学や国際協力への情熱に繋がったと述べました。当時の国連職員から「これからの国際協力には、民間企業でスキルを磨いた人材が絶対に必要になる」という助言を受け、戦略的なキャリア形成の重要性を考え、新卒で民間コンサルティングファームのBCG(ボストン コンサルティング グループ)に入社したことを語っていただきました。

ゲイツ財団とグローバルヘルスの挑戦
 廣原氏からは、ゲイツ財団が取り組む「グローバルヘルス(世界の健康課題)」の現状が共有されました。現在、世界では年間約480万人もの5歳未満児が亡くなっており、その多くが低中所得国における予防可能な感染症によるものであるとして、財団は「全ての人が健康で生産的な人生を送る機会を得られる世界」を目指し、感染症対策や母子保健に注力していることを報告。また、世界的に政府によるODA(政府開発援助)が減少傾向にある中、既存の制度を変えていく「アドボカシー(政策提言)」の役割が増しており、学生が声を上げ、社会を動かしていくための具体的なプロジェクトについても紹介されました。

未来を創るための「3つの武器」
 講演の後半では、これからキャリアを考える学生に向けて、具体的な指針が示されました。平井氏は、社会課題解決に取り組めるキャリアが国連や政府、非営利組織に加え、インパクトスタートアップやインパクト投資ファンドなど多様に広がっている現状を指摘しました。その上で、プロフェッショナルとして活躍するために必要な要素として、以下の3点を挙げました。
1.  武器(専門性)を作る: マーケティング、金融、法律、政策渉外、事業開発など、自分自身のハッシュタグとなる強みを持つこと。
2.  現場を知る: 留学やインターン、ボランティア等を通じ、課題が起きている現場を肌で感じること。
3.  同志を見つける: 共に語り合い、支え合える仲間を作ること。

学生との対話と今後のビジョン
 質疑応答では、核問題に関する議論の継承に取り組む学生や、エンターテインメントを通じて社会課題解決を目指す学生から熱心な質問が寄せられました。平井氏は最後に、「社会課題を解決することが、キャリアとしても魅力的な、報われる選択肢となる土壌を日本に作りたい」と今後のビジョンを語り、学生たちの無限の可能性に期待を寄せて講演を締めくくりました

◆学生からのフィードバック

 講義を聴講した学生から寄せられた、特に深く本質的な気づきを2つご紹介します。

声①:「『就職の先にある実務』を見据え、社会に貢献するアクターを目指す」

「お二人の仕事に対する誠実で謙虚な姿勢から、どこまでも多くのことを学ばせていただきました。特に、平井さんから投げかけられた『入社した後に誰と仲良くなりたいか、希望通りの部署にならなかったときにどうしていくか』という問いが心に残っています。これまで『どのような職業に就きたいか』ばかりを考えていましたが、大切なのは『就職すること』自体ではなく、その先にある『実務』を通してどう社会に貢献するかだと気づかされました。これからは、自分がどのようなビジョンを持ち、どんなアクターとして社会課題の解決にアプローチしたいかを明確にしながら、キャリアを描いていきたいです。」 (地球平和共生コース・3年女子)


声②:「まず『武器』を作り、現場を経験して社会課題に挑む決意」
「今回の講義を通じて、社会課題の解決に携わるキャリアは一部の特別な人だけのものではなく、自ら設計し挑戦できる選択肢なのだと強く実感しました。特に印象に残ったのは、『まず武器(専門性)を作ってから越境する』という考え方です。社会課題に取り組みたいという想いだけでなく、まずは民間企業等で問題解決能力という『武器』を身につけ、その後に国際機関や財団などへ活躍の場を広げていくというキャリアパスには非常に説得力がありました。将来は国際的な分野で社会に貢献したいと考えているため、まずは専門性という武器を身につけ、現場経験を積み、多くの人とのつながりを大切にしていきたいです。」(地球平和共生コース・3年男子)


講義を終えて

 今回の特別講義は、これからの進路や地球規模の課題解決について模索する学生たちにとって、大きな転換点となる貴重な機会となりました。
 学生の感想に共通して見られたのは、「社会課題の解決(やりたいこと)」と「経済的な自立(食べていくこと)」は十分に両立可能であるという事実への驚きと、未来への強い希望です。これまで「自己犠牲的なボランティア」や「ごく限られたエリートだけの道」と捉えられがちだったソーシャルキャリア・インパクトキャリアのイメージが、新しいタイプのNGOや民間企業のノウハウ、財団のアドボカシーといった多面的なアプローチを通じて、主体的に設計できる「開かれた選択肢」へとアップデートされました。
 法学部および地球平和共生コースが目指すのは、平和と共生の理念を胸に、現実の課題を解決する実力を備えた人材の育成です。今回の講義で示された「専門性という武器を作る」「現場を知る」「志を同じくする同志を見つける」という3つの指針は、日々の学問に励む学生たちへの強力なエールとなりました。お二人の誠実で情熱的な姿勢に触発された学生たちが、それぞれの「武器」を手に世界へ羽ばたき、新たな社会の仕組みを創り出していくことを確信しています。
 ご多忙中にもかかわらず、学生たちの心に未来への羅針盤を授けてくださった平井光城氏、廣原萌氏に心より御礼申し上げます。

 

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