教員インタビュー

鈴木先生座談会(ロングバージョン)

創価大学法学部で会社法関連の授業を担当している鈴木美華教授。
今回はゼミ生の3年生を招き、創価大学の魅力について座談会を開催しました。

座談会参加者紹介

鈴木 美華教授
専門分野:会社法
担当科目:会社法、金融商品取引法、民法法務演習Ⅰ、GLPゼミなど 
研究テーマ:取締役の任務と責任

古賀千晴さん
松波英二さん
2人とも創価大学法学部3年生。鈴木ゼミ所属。

座談会

今、法学の入り口は「サブカルチャー」?
―――まずはお二人が、創価大学法学部に入学した決め手を教えてください。

古賀さん
「高校生の頃に創価大学の先生からガイダンスを聞く機会があり、そこで法学部について知ったことがきっかけです。もともと紛争問題解決に興味を持っていたのですが、法律には紛争などの国際問題を解決に導く力がある、というお話がとても印象に残り、法学部を進学先として意識するようになりました」

松波さん
「私は高校生の頃から法律関係の仕事に就きたいと思っていました。父に進路を相談したところ、創価大学法科大学院が弁護士輩出数などで高い実績と評価を得ていると教えてもらったことがきっかけです」

―――法律に興味を持ったきっかけは何ですか。

松波さん
「私は父親が弁護士なので、法律関係の話題が身近な環境で育ちました。より積極的に興味を持つようになったきっかけは、ドラマや小説など法律を題材にした作品ですね。“なぜ法律でここまで事細かにルールを決める必要があるのだろうか”と疑問に思ったことが大きな契機になりました」

鈴木先生
「そうだったんですね。確かにゲームの『逆転裁判』シリーズなど、近年はサブカルチャーをきっかけに法曹関係の仕事に興味を持つ方が増えていますね」

古賀さん
「私も『HERO』や『99.9-刑事専門弁護士-』など裁判モノのテレビドラマが大好きで、純粋に“弁護士ってカッコいい”と思ったことも法律に興味を抱いたきっかけです(笑)」

鈴木先生
「テレビ局にお中元を贈りたいくらいですね(笑)でも、入り口はなんでも良いと思います。“この分野について知りたい” “この職業に就いてみたい”という初期衝動は、学業でも働く上でも大切だと思います」

法律は「社会の基盤」!
世の中を読み解く力を手に入れる
―――高校までの授業と比べて、大学ではどのような違いを感じますか。

松波さん
「私が通っていた高校が進学校だったこともあり、どの授業も詰め込み型と言いますか、受験を前提とした一方通行なものでした。ですが大学は学生が主体的に関わっていく授業が多く、入学当初は非常に驚きました」

古賀さん
「確かに、高校の学びは知識の定着がメインだった印象がありますが、大学では“なぜこうなるのだろう?”と自分なりに考えることが多いですね。大学の授業やゼミを通して、自分の考える力が深まっていると感じます」

鈴木先生
「法律の勉強を通じて、論理的に物事を考える力が培われます。ある法律の条文・制度がなぜ必要なのか、それをどう解釈するのか……。そういった思考力は法曹関係に限らず、社会で活躍するために必要不可欠だと思います」

松波さん
「ディスカッション形式の授業など、自ら意思表示していかなければいけない場面も多いですよね。自分の意見を論理立てて伝える力は社会人としても必要なスキルだと思うので、そこを伸ばしてほしいという大学の姿勢を感じます」

―――鈴木ゼミを通して、どのような学びを得ましたか。

古賀さん
「鈴木先生のゼミを通して、裁判などのニュースの見方が変わりました。今まではなんとなくしか理解できていなかった出来事が、今では“あぁ、この条文が問題になっているのか”と理解できるようになり、法律が生活に根ざしたものなんだと感じられるようになりました」

鈴木先生
「古賀さんがおっしゃったように、法律は社会を動かすための基盤のひとつです。社会の仕組みや動きを理解できる点は、法学を学ぶメリットなのではないでしょうか」

松波さん
「私もニュースや裁判所の判例に対し、ただ受け取るのではなく“なぜそうなったのか”を批判的に追究できるようになりました。それによって、法律で解決できる部分とそうでない部分があることをより深く理解でき、自分の中で大きな変化になりました」

古賀さん
「ゼミでの学びが楽しくて、今では毎週のゼミの時間が楽しみです!」

つながりの力で目指す、学生第一の環境
―――創価大学法学部の魅力はどのような点にあると思いますか。

松波さん
「自分が一番感じているのは“つながりの強さ”ですね。学びを共にする仲間たちと授業でわからないところを教えあったり、司法関係の時事問題について語り合ったりすることが、今とても面白いです」

古賀さん
「先輩とのつながりも大きいですね。勉強の方法や不安を先輩がサポートしてくれて精神的にも助けられましたし、鈴木先生のゼミを紹介してもらったのも、先輩のアドバイスがきっかけなんです」

鈴木先生
「学生同士のつながりは大きなポイントですね。現役学生だけでなく、卒業生による懇談会なども実施されているので、就職活動に悩んでいる学生にとっても心強い取り組みなのではないでしょうか」

古賀さん
「学生同士だけでなく、先生とも距離感が近くてとても刺激になります。先日も鈴木先生にわからない部分を質問したところ、結局1時間くらいマンツーマンで授業をしていただきました(笑)」

鈴木先生
「本学は他のマンモス大学と比べると学生数も少ないので、学生一人ひとりをサポートしやすい環境ですね。本学の創立者は『学生第一』を基本理念にしているので、教員もいかにそれを実現できるか、試行錯誤しています」

古賀さん
「今はコロナ関係で制限がかかっていますが、図書館の判例データベースなど、勉強しやすい環境が整っている点も嬉しいですね。大学側が学ぶ姿勢をサポートしてくれるので、意欲のある学生ほど学びやすい環境だと思います」

一生の財産となる経験を、創価大学で
―――それでは最後に、創価大学法学部を目指す受験生に向けて、メッセージをお願いします。

松波さん
「受験勉強の結果は気にせずに、やれることをやっていただきたいですね。入学した後に何をやりたいかという視点も大切なのですが、入学してからわかることも多いものです。例えば法学部の学びも弁護士や裁判官だけではなく、公務員や企業就職など様々なキャリアプランに活かすことができます。今回の座談会で、創価大学法学部の魅力を伝えられたら幸いです」

古賀さん
「私は創価大学での経験が一生の財産になったと感じています。勉強面はもちろん、素敵な友人や先輩、先生に出会えたことで人間性も養うことができました。創価大学への進学を迷っているなら、ぜひ来ていただきたいと思います」

鈴木先生
「色々と不安もあると思うのですが、大学受験は長い人生の中で大切な経験になると思います。将来の夢を実現するためのスタート地点が大学です。あなたの夢を実現するべく、大変な大学受験を乗り越えていただきたいです。もし創価大学に入学された際には、精一杯サポートさせていただきます」

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鈴木先生コラム(ショートバージョン)

Q

高校生が会社の社長になれますか?

A

会社法上は可能!だけど実際は……

近年、大学生が会社を設立してビジネスを展開する「学生起業」が話題になっています。アメリカの大手SNS企業「Facebook」も、創立者のマーク・ザッカーバーグがハーバード大学在学中に起業し、瞬く間に巨大企業に成長しました。学生起業は大学生によるケースが大半ですが、高校生でも会社を設立し、社長になることができるのでしょうか?創価大学法学部で会社法を教える鈴木美華教授に聞いてみました。

未成年でも会社法上は問題なし。

会社法とは文字通り企業を対象とする法律で、会社の設立や運営など様々なルールを定めた法律です。代表取締役(会社法上の社長)になれない人を定めた「欠格事由」の中に未成年者が含まれていないため、未成年でも代表取締役になることができます。ですが、未成年であることから、実際には保護者の同意が必要になります。

会社の設立には「保護者の同意」が必要に。

未成年者が取引などを行う為には、民法上、保護者の同意が必要とされています。代表取締役は会社の代表者として契約や取引を行いますので、未成年者が会社を設立したり、取締役に就任する場合、保護者の同意が必要になってきます。また、会社の取締役・代表取締役としての商業登記を行う際にも、保護者の同意書が求められます。会社法上は問題が無いとしても、現実的には保護者の理解と協力が必要になります。「どうしても起業して社長になりたい!」という高校生の方にとっては、起業は成人してから行うほうが簡便です。

法学はビジネスでも役立つ知識!

金融業界なら「金融商品取引法」など、ビジネス領域に応じて様々な法律が存在します。自社の業界に関する最低限の法的な知識を持っていないと、自分では気づかないうちに法律に違反してしまうリスクがあります。「社会の基盤」のひとつである法律を学ぶ経験は、社会人として活躍する際にもあなたの助けとなってくれます。

創価大学法学部で、多角的に法学を学ぼう!

法律に基づいて論理的に思考する力は、ビジネスシーンでも非常に役に立ちます。特に創価大学法学部の「ビジネス法務コース」では、法律とビジネス知識を共に学び、ビジネス法務のスペシャリストを目指すことができます。「法律を学びたいけれど、一般企業への就職にも興味がある」という方も、ぜひ創価大学法学部への入学をご検討ください。

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朝賀先生座談会(ロングバージョン)

創価大学法学部で環境法、行政法、ビジネス&ロー・ワークショップなどの授業を担当している朝賀広伸教授。
今回はゼミ生の4年生を招き、創価大学の魅力について座談会を開催しました。

座談会参加者紹介

朝賀広伸教授
専門分野:環境法、行政法 
担当科目:環境法、行政法
研究テーマ:環境法制度に関する総合研究

月田昌美さん
創価大学法学部4年生。朝賀ゼミ所属。

自分の可能性を広げられる、4つのコース制
―――まずは創価大学法学部に入学した決め手を教えてください。

月田さん
「私は現在、法学部法律学科の「ビジネス法務コース」に所属しています。創価大学法学部は2年生の前期から4つのキャリアコース制を選択するのですが、この多彩なコース制に魅力を感じ、法学部を選びました」

朝賀先生
「キャリアコース制のどのような点が魅力的だったのでしょうか?」

月田さん
「環境問題や国際問題など色々な分野に興味があったため、入学前は自分が学びたい専門分野を決めきれていなかったんです。だからこそ、多彩なコースがあることで自分の可能性が広げられると思いました。最終的には法学の知識をビジネスに活かすための専門的な勉強がしたいと思い、ビジネス法務コースを選びました」

朝賀先生
「なるほど。確かに、高校生の頃から将来設計ができている方は多くないですよね。入学後に選択するコースによって、法学という専門性をベースにキャリアプランを設計できる点が魅力的だったということでしょうか」

月田さん
「はい。豊富な選択肢があるので、自分が学びたいと思った分野を見つけやすいと思います。途中でコース変更も可能なのですが、実は私もコースを変更したひとりなんです」

学生を大きく変える“学びの指針”とは
【大学HPより:https://www.soka.ac.jp/law/news_law/2019/12/4471/ 】
―――コースを変更した理由はなんですか。

月田さん
「当初は公務員に興味があったので「公共政策・行政コース」に所属していたのですが、企業就職の志望が強くなり、法学とビジネス知識を共に学ぶことができるビジネス法務コースに変更しました」

朝賀先生
「法学という専門性を基礎とした上で、キャリアや職業選択に繋げられる仕組みが整っている点は法学部の特色ですね。どのコースを選んだとしても、法学は社会を支える一つの基盤です。社会の仕組みを深く理解することができるので、汎用性がとても広い学問と言えるのではないでしょうか」

―――“今はどの専門分野を選べば良いかわからない”という高校生の方にとっても安心ですね。

朝賀先生
「そうですね。そういった学生もコース選択時に大まかな方向性を決めることで、学ぶ意欲が大きく伸びていくんですよ。コース選択によって“学びの指針”を作ることができる点は、コース制の大きなメリットだと思います」

月田さん
「近い分野に興味を持っている仲間に出会える点も嬉しいですね」

朝賀先生
「仲間が周囲にいることで、お互いに支え合えますよね。学生たちは、“大変な時こそ、お互いにがんばろう”と励ましあっています。いわゆるピアサポート(仲間同士の支え合い)も、大学生活の魅力だと思います」

知識を実践的に活かす、学生主体のゼミ
―――朝賀ゼミではどのような活動をされていますか。

朝賀先生
「通常の授業が理論的なものとすれば、ゼミでは“いかに授業で学んだ知識を社会につなげられるか”という視点で実施しています。学生が関心を持っている分野に応じて、座学だけでなくヒアリングやアンケート調査などのフィールドワーク、学生同士のグループディスカッションなど、多角的なカリキュラムで学びを深めています」

月田さん
「朝賀ゼミは学生主体のゼミなので、興味のある社会課題を主体的に追求できる点が非常に面白いです。リサーチした内容はゼミ生の前で発表するのですが、複雑な課題をわかりやすく伝えるスキルを学ぶことができたと思います」

朝賀先生
「月田さんのプレゼンは内容だけなくデザインにもこだわっていて、アピール力がありますよね。いつも非常に面白いなと思って聞いていますよ」

月田さん
「ありがとうございます(笑)朝賀ゼミでの経験によって、環境問題をより身近な課題として捉えられるようになりました。ちょっとしたゴミの分別にも注意するようになりましたし、環境問題を扱ったニュース番組なども注目して見るようになりました」

朝賀先生
「それは嬉しいですね。学生一人ひとりにとって関心ごとは千差万別だと思いますが、大学での学びを通し、世の中をより深く理解するための機会を与えられればと思っています」

大学は、夢を叶えるための力を身につける場所
―――改めて、創価大学法学部の魅力について教えてください

月田さん
「英語力を養うための国際プログラムなど、豊富なプログラムがあるところでしょうか。“これを学びたい!”という熱意のある学生を熱心にサポートしてくれますし、逆に専門分野の選択に迷いがあっても、多彩な選択肢が学びのヒントになってくれます」

朝賀先生
「選択肢が多いという点はその通りで、法学という専門性を基礎とした上で、様々なキャリアプランに繋げられる仕組みが整っている点は非常に魅力的だと思います」

―――キャリアプランというお話が挙がりましたが、月田さんの卒業後の目標はありますか。

月田さん
「内定先は小売業界になります。暮らし、健康を支える仕事を通じて地域社会に貢献していきたいです。また、ゼミでの学びを生かして、環境保全に取り組む事業などに携わりたいと考えています」

―――それでは最後に、創価大学法学部を目指す受験生に向けて、メッセージをお願いします。

月田さん
「創価大学には、みなさんが秘めている無限大の可能性を引き出す環境が整っていると思います。受験勉強が大変で逃げ出したくなる時もあると思いますが、必ずゴールはあるのでがんばってください!」

朝賀先生
「とにかく、今持っている夢を大切にしていただきたいです。大学では夢を叶えるための力を付けられます。私たちがそのお手伝いができれば嬉しいですね。創価大学法学部でお待ちしております。頑張ってください!」

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朝賀先生コラム(ショートバージョン)

Q

コンビニやスーパーのレジ袋は、なぜ有料化したの?

A

私たちのライフスタイルを見直す「きっかけ」を作るため。

登下校時についつい買ってしまう、コンビニのお菓子やジュース。高校生の皆さんも日常的にコンビニやスーパーを利用すると思いますが、2020年7月1日にプラスチック製買い物袋、いわゆるレジ袋の有料化が始まりました。以前は無料で貰えたレジ袋が突然有料化されたのは、一体なぜなのでしょうか。創価大学法学部で環境法を教える朝賀広伸教授に聞きました。

レジ袋削減は、環境問題解決に向けた第一歩。

プラスチックはとても便利であり、私たちの生活に役立っています。一方で、廃棄物の発生や資源の枯渇、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化など、様々な課題を引き起こしています。持続可能な社会を目指すために、プラスチック製買物袋の有料化が行われることとなりました。

実は、これまで通り無料で貰えるケースも。

「バイオマス素材の配合率が25%以上」「海洋生分解性プラスチックの配合率が100%」などの条件を満たしたレジ袋は、地球温暖化対策や海洋プラスチックごみ問題対策に寄与するとして法令の対象外になります(また買い物袋でも紙袋、布の袋、および持ち手のない袋は対象外となります)。無料でレジ袋が貰えた際は、素材や配合率の表記を確認してみてくださいね。

レジ袋をきっかけに、一人ひとりが環境問題解決のキーマンへ。

一方で、レジ袋有料化の効果を疑問視する声が多いことも事実です。「海洋プラスチックごみに占めるレジ袋の割合はそれほど多くないため、直接的な問題解決につながらないのでは?」という意見を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし今回の有料化の狙いは、あくまで身近な存在であるレジ袋を通し、世界の問題を考えることです。環境問題は「Think Globally , Act Locally(地球規模で考えて、身の回りから行動しよう)」の精神が重要です。あなたがレジ袋1枚を節約するその行動が、ひいては企業の行動を変えていくことになります。レジ袋の有料化は私たち一人ひとりが環境問題解決のキーマンとなるために、大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。

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和足先生座談会(ロングバージョン)

専門分野:政治学・行政学・地方自治・公共政策
担当科目:初年次セミナー、RESAS社会分析スキル、地域コミュニティ論、NPO論、演習Ⅰ、八王子まちづくりフィールドワーク、公共政策ワークショップA、公共政策ワークショップB
研究テーマ:大都市財政の比較分析、政官界の汚職と検察捜査

高江美春さん
法学部公共政策・行政コース3年

主体的に関わっていく。
それが大学の学びを深めるコツ

―――創価大学の法学部に入学しようと思った理由を教えてください。

高江「4コースに分かれているのが魅力的でした。高校生の時から公務員になりたいという気持ちがありましたが、入学時はまだ漠然としていて、決めきれていなかったんです。創価大学であれば、1年次は基礎的な法規を学び、2年次から専門のコースを選択できるので安心でした」

―――大学の授業はいかがですか?

高江「大学の授業は受け身ではいられない、それが一番の違いです。高校では先生から教わったことをひたすら消化していきますが、例えば大学のゼミであれば、みんなで一緒に考えて意見を出します。自分から積極的に発言していかないと理解が深まらない。誰も発言しなければ、授業がストップしてしまうのです。大学では主体性が求められる、それが大きな違いだと思います。人前に出てのプレゼンテーションも初めて経験しました。今では少し自信がついてきたと感じています」

―――和足先生は、授業においてどのような点を重視していますか?

和足「公共政策・行政コースではこれまで、子どもの貧困や高齢者介護支援、高齢者・女性の就労、多文化共生、地域振興のシティプロモーションといった問題を取り上げてきました。専門知識も大事だと思いますが、これからの先行き不透明な時代、知識だけではすぐに陳腐化してしまいます。何か問題が発生した時に、自ら問題を分析し、課題を抽出し、解決策を導く頭の使い方を繰り返し練習しています。公共政策・行政コースには「公務員になりたい」という人もいますし、公的役割を担った民間企業に行きたいという人もいますので、汎用的に使えるスキルも磨いていきます。1+1=2という単純な図式より、なかなか答えが出ないテーマ、例えば、高齢者雇用の問題や女性の就労問題などは、社会問題としてずっと取り組まれてきたことです。大学で問いを深め、自治体や企業という場で課題解決に貢献してもらいたいです」

フィールドワークを意識して
問題解決に取り組む

―――特に好きな授業は?

高江「『公共政策ワークショップB』です。5人のグループを組んで、ひとつのテーマにつき2回発表します。2回目で前回の内容を改善し、より深く追究していきます。私のグループでは、高齢者の就労や若年層の雇用について発表しました。日本が今、直面している問題についてチームでミーティングを重ね、現状を分析して課題を抽出し、どう解決していくのか一本のレポートを作ります。レポートは、授業以外の時間に集まって、みんなで相談しながらつくり上げていきますが、限られた時間の中でどこまで高められるかが毎回の挑戦です」

―――メンバーとも仲良くなりそうですね。

高江「大変な面もありましたが、じっくりミーティングを重ねた結果、仲良くなりましした。今はコロナ禍でもあり、直接会って話すことが難しかったのですが、みんながいるからこそモチベーションを落とすことなく、『やり切ろう』と思えました。メンバーにも恵まれたと思います。また、オンラインでのミーティングはいい面もあります。資料を共有しやすく、正確な数値を画面に出すといったことができるので、意思の疎通がしやすかったです」

厳しくもあたたかい、先生のひと言でやる気が出ます

―――大学で学び、自分自身の変化はありましたか?

高江「授業では本当に色々な問題・テーマを扱ってきました。以前はニュースで取り上げられてもあまり興味が持てなかったことに問題意識が持てるようになって、理解力が深まったと感じます。また、私は昔から、みんなの前で失敗するのが怖いと思っていましたが、授業の中で先生が、『トライ&エラーだよ』と言ってくれたことに救われました。失敗しても次に活かせばいい、と言われて気持ちが強くなったと思います。先生からはいつも鋭い質問が飛んでくるので、事前にがんばって調べておこう、答えられるようにしよう、と思えるようになりました」
和足「あえて厳しくしているんですよ(笑)。社会に出たら、上司から『企画内容に不備がある』と突っ込まれないように。あらかじめ予想される質問や自分の弱点を把握した上で、レポートに取り組んでほしいのです。自分で先取りして対応できるようにしてほしい、という気持ちを込めています」

―――学生生活は、忙しくも充実していますか?

高江「3年生になって、特に忙しくなってきました。私は地方公務員を目指しているので、授業に加えて公務員講座を受講しています。夏休みに入っても勉強は続きますし、アルバイトもあります。正直、スケジュールを組むのが一番難しいのですが、周りの人の支えがあってこそ、ここまで来られたと実感しています」
和足「学生さんたちを見ていると、確かに時間的な制約はあると感じています。ただ、学生さんの場合はだいたいの時間割は決まっていますので、それをもとに、時間の使い方をアドバイスすることは結構あります。『ここの空きコマでこの課題をやるといいよ』、『休みの日にはこういうことをやろう』と具体的に時間のやりくりを教えているのです。大学での学びを深めて無事に卒業してもらいたいので、やりすぎない程度に声をかけることはしていきたいと思います。授業の課題も、提出していない人にはメールで様子を聞いたりしています」

行政職員として観光分野に進み
日本と海外の架け橋になりたい

―――将来はどんな仕事がしてみたいですか?

高江「地元の福岡県で行政職員として働きたいです。やってみたいのは、観光の分野ですね。福岡はアジアのリーダー都市と言われ、日本人はもちろん、海外からの旅行者にも人気があります。行政に携わることで福岡県と世界との架け橋になっていきたいです。そのためにも英語力をもっと磨きたいです」

―――高校生に向けてメッセージをいただけますか?

高江「勉強は自分との戦いだと思いますが、その中でも法学部は自分のやりたいことを見つけられる環境やプログラムが整っています。温かい先輩方もたくさんいますので、ぜひ創価大学法学部で学んでほしいです」
和足「創価大学法学部は四つのコースに分かれ、キャリアを意識した教育プログラムとなっております。これからどうなるのか正解がない時代において、自分の頭で考え、生き抜いていく実力をつける。それが法学部の強みだと思っております」

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和足先生コラム(ショートバージョン)

Q

緊急事態宣言は誰が決めているの?

A

法律に基づいて内閣総理大臣が発令しますが、現場を指揮するのは都道府県知事です。

国と現場の感覚にはズレがある

緊急事態宣言は内閣総理大臣が法律に基づいて発令します。ただ、その宣言が出された地域において実際の対策を行うのは、都道府県知事です。緊急事態宣言は国が決めますが、現場を指揮するのは都道府県知事なので、現場がどれくらい逼迫した状況なのか、国との温度差があるわけです。できれば緊急事態宣言は出したくない政府との間にズレが生じるということです。緊急事態宣言の発令当初、東京と大阪で感染者数に差が出たのは、知事の対応の差と考えられています。大阪は地元からの突き上げがあって、緊急事態宣言を早めに解除することになりました。これが感染拡大につながったと見られ、医療供給体制が危機的状況に陥りました。一方、東京は知事の「感染防止重視」が貫かれた結果、感染者数を抑えられたと分析されています。

コロナ対策はなぜ足並みが揃わないのか?

大きいのは経済活動(お金)の問題です。緊急事態宣言を出したのはいいけれど、その際には飲食店、遊興施設に休業要請や時短要請を出さなければいけない。営業できなければ、事業者にとっては所得の減少になりますよね。では、所得の減少分を誰が面倒見るのでしょうか。現状、国が担当する部分もあれば各自治体が担当する部分もあって、バラバラです。しかも全体としては財源が足りていないのです。コロナ関連の対策は全体性があるわけでもなく、後追い的に政策を積み重ねているので、事業者にとって見ればわかりづらい現状があります。官邸にはコロナ対策室があり、司令塔として存在していますが、厚生労働省、総務省と連携が取れていません。明確な基準を設けて決めているわけでもないため、丸投げされた都道府県知事は戸惑っています。解消するには、都道府県知事に裁量を与えたり、もしくは国が基準を明確に定め、知事に仕事を割り振るなどの対策が考えられます。

国と自治体が協力して歩んでいくために

持続化給付金は、前年の所得でマイナスになった場合に国が全体として面倒を見ているのですけど、休業に関しては、知事が担当していますね。ワクチン接種の問題も、政府が半ば強引に設定し、自治体がNOと言えずに進めたのはいいけれど、ワクチンが足りなくなったりしました。もっと現場の声を聞いて進めていくと良かったのかもしれませんね。これからは、こうした矛盾を解消することが課題になっていきそうです。国と地方が緊密に連携するとともに、国の政策決定過程に地方が参画することが求められると思います。一案としては、政府の「新型コロナウイルス感染症対策本部」に地方自治体の代表(全国知事会会長など)を参加させることなどが考えられます。

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ハンセン先生座談会(ロングバージョン)

専門分野:
International relations in East Asia, particularly Japan-North Korea relations; Japanese security policy; Japanese national identity; North Korean politics and society; discourse analysis.
担当科目:
Special lectures 1 (Border studies); Special lectures 3 (Law and politics in Japan); Special studies in general education 1 (North Korean politics and society); GLP English A.
研究テーマ :
International relations, security policy, identity politics, othering, the abduction issue, discourse analysis.

イ ハヨンさん
法学部国際平和・外交コース3年

国際色豊かなゼミで世界各国の価値観に触れる

―――留学しようと思ったきっかけを教えてください

「中学生の頃から法学部に行きたいと考えていましたが、現在、韓国でロースクール制度ができて、ほとんどの大学から法学部が消えてしまいました。私は大学で学びたい気持ちが強くあったので、両親と相談して創価大学に入学しました。私の周りにも、創価大学に通っている韓国人の先輩方が何人かいて、話を聞いたところ、私にとって創価大学での学びは得るものが多そうだと思ったのです。学生生活にとても満足しています」

―――韓国の高校での学びと違いはありましたか?

「高校時代は教科書中心で勉強しますよね。受験勉強が中心でした。ですが、大学に入ってからは、教科書を使うだけでなく、自分で他にも資料を探してみるなど深い学びができています。ハンセン先生のゼミには7人の学生がいますが、少人数で授業を行うので先生との距離が近く、コミュニケーションを円滑に取れるのも、大きな違いの一つです。
また、ゼミでは日本だけではなく韓国、イタリア、中国からきた友達もいるので国際社会をもっと近くで学ぶことができて楽しいです」

ゼミでの会話は英語のみ!
だいぶ鍛えられました

―――ゼミではどんなテーマを扱っていますか?

ハンセン「2年次の秋学期はポピュリズムについて、3年次の春学期はコロナウイルスが世界に及ぼす影響について議論しました。次のテーマはこれから決めますが、学生と一緒に内容を考えていくので未定です。まずはブレーンストーミングをして、みんなで意見を出し合います。それが私のゼミの特徴です」

―――先生だけでなく、みんなで決めるのですか?

ハンセン「私が一方的に決めるのではなく、学生が参加することで、みんなが興味を持てるテーマを学ぶことができますよね。もちろん、選択できるのはグローバルイシュー(国際問題)に限られますが、逆に、グローバルな問題であれば何でもOKなのです。すると私1人では選ばないテーマになりますので、教員にとっても面白いのです。例えば、去年は動物の権利やアニマルウェルフェアとか。そんなテーマも選ばれました」

―――イさんは、なぜハンセン先生のゼミを選んだのですか?

「去年イギリス留学に行きました。外国の授業の雰囲気が本当によかったので、英語で授業が行われるハンセン先生のゼミに入りました。先ほど先生がおっしゃったように、トピックを決める際に学生の意見を取り入れてもらえるのも魅力でした。英語に関しては、創価大学に留学制度があることを入学前から知っていたので、ずっと勉強していたんです。
ゼミを選ぶとき先輩たちにゼミの特徴を聞きましたが、ハンセン先生の授業は厳しいけど、自分が足りないところを教えてもらうことができもっと成長できる授業だと聞きました。そして実際に今まで授業を受けた私は自分の足りないところ、例えば、レポートで何が問題だったのかとかプレゼンでは何が強みで何が弱点だったかしっかりフィードバックをもらうことができました。そして、前よりはもっと成長していると強く感じています」
ハンセン「法学部の中で英語のみで授業を行うのは私のゼミだけなので、英語にチャレンジしたい学生が集まる傾向があります。留学生もいます。韓国人が2人、イタリア人が1人、中国人が1人、7人中4人が留学生です。ちなみに私自身はノルウェー出身で、2006年に留学のため初めて来日しました。留学前はオスロ大学で日本語を勉強し、日本滞在はトータル8年くらいになるので日本語も話せます」

ゼミでの学びを広めるために
手作りのポスターで啓蒙活動

―――ゼミで学び、特に印象に残っているのはどんなことですか?

「自分はコロナウイルスに対するアジア人種差別のトピックが、一番印象に残っています。理由は、イギリス留学の際、現地で人種差別をされたからです。日本人の友人2人とスーパーマーケットで買い物をしていたら、背後で白人の若者が数人、「アジア人、コロナウイルス」と言いながら笑っていました。この時は本当に驚きました。
その後、帰国して、授業では人種差別のトピックを選びプレゼンを行いました。資料をまとめる過程では、もっとひどい差別が起きていることもわかり、グループのメンバーと「人種差別をどうやったらなくすことができるか?」を話し合いました。私自身、自分が差別されて初めて問題に関心が持てたので、まずは多くの人に関心を持ってもらいたいと思っています。そこで、人種差別についてポスターを作り、大学の廊下や壁に貼らせていただきました」

ハンセン「ポスター作成については、私が指示したわけではなく、学生がアイディアを出したのでいい意味でびっくりしましたね。授業の時間以外で時間を見つけ、学生が自主的に集まり、プランニングしている。私にとっても嬉しい出来事でした」

―――多国籍のメンバーが集まっていますが、どんな雰囲気ですか?

ハンセン「すごく面白いと思います。たまに文化の違いが出てくるので、そこが指導する立場から見ても面白いところです。例えば、ヨーロッパの学生が一人いますが、日本人や韓国人、中国人の学生は、ヨーロッパの事情にそれほど詳しくないと思うので、新しい感覚が得られると思います。世界各国から集まっているので、特にコロナウイルスを議論する時は、各国でどのように対策してきたかを比べることができ、面白いと思います。お国事情が出ますね」

―――大学生活はゼミの存在が大きいですか?

「大きいと思います。先生もおっしゃっているように、学ぶトピックをみんなで話し合って決められるのは、本当に魅力的です。英語を使って学ぶのも挑戦の一つ。授業の最初の30分ほど、自分が選んだニュース記事を英語で紹介する時間があって、以前は緊張の連続でした。足も震えていて(笑)」

ハンセン「学生の英語力の変化はひしひしと感じています。個人差はありますが、かなり上達した学生もいるのですごく嬉しいです。イさんも含め、英語を流暢に話すゼミ生を見るのは嬉しいですね」

ともに学ぶ仲間の存在が
大学生活を支えてくれる
―――創価大学の法学部に入って良かった点は?

「4つあります。1つめは、自分の成長を応援してくださる先生方が多くいらっしゃること。2つめは、友達がたくさんできて、勉強を頑張ったり、悩みを相談したり、自分の精神的な面で支えになりました。3つめは、法学部は2年次の春学期にコース選択をすること。将来、何をしたいかを決めてから選べることが魅力的です。4つめは、法学部独自の留学制度があることです。私は「発展途上国の人々のために働きたい」と考えていて、そのためには法律と英語を学びたいと思っていました。授業や留学を通じてそれらを体験できたことです」

―――卒業後の目標を教えてください。

「詳しくは決めていませんが、IT分野の仕事をしたいと考えています。ただ、いつも心に刻んでいるのは創立者の言葉「大学は、大学に行けなかった人のためにある」です。大学に行けなかった人たちのために、自分がやりたいこと、できることの両方を組み合わせて働くことを目指しています。具体的に考えているのは、障害者の人たちの日常生活をサポートするアプリを開発したいです」

―――先生が学生に期待することは?

ハンセン「これからの時代、国際問題の知識を持っている学生は魅力的だと思います。法学部のよさの一つは、法律だけじゃなく、多様性があること。国際関係や国際政治、平和問題、SDGsなど、幅広い分野の国際問題を扱っているので、授業を通じて視野を広げて欲しいですね」

―――受験を考えている高校生の方に、メッセージをお願いします。

「今、コロナ禍の状況で受験勉強も本当に大変だと思いますが、みんなで一生懸命勉強し、乗り越えて、創価大学で学んでいきましょう。関心のある学問、やりたい部活、留学など様々な経験をしながら、大学生活を楽しんで欲しいです」

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ハンセン先生コラム(ショートバージョン)

Q

パンデミックによって広がった社会的な格差とは?

A

所得が低い人は感染リスクが高く、収入がさらに不安定になる傾向があります。

ウイルスは人を差別しないって言うけれど・・・

「コロナウイルスの前ではみんな平等」「ウイルスは人を差別しない」という声があります。一方で、ウイルスが差別しなくても、そもそも現代社会には不平等なシステムや制度がたくさんありました。パンデミックが起きたことで、これまで隠れていた不平等や格差が明らかになってきました。例えば、エッセンシャルワーカーという言葉があります。テレワークができない人たちもその一例です。スーパーやコンビニ、居酒屋の店員といった接客業の職種です。こういった職業はテレワークができないので、感染するリスクが高いと言えます。もともと所得が低い職種も多いので、裏を返せば、低所得者は感染リスクが高いとも言えるのです。

所得が低い人ほど生活が不安定になりやすい

コロナウイルスによるパンデミックで不景気が起こると、もともと低所得だったエッセンシャルワーカーは、営業自粛などの影響で、さらに労働条件が不安定になります。収入が減少したり、会社の業績が悪化してクビになったり。ニュースでもそのような報道がありましたね。さらに、もう一つの事例として、基礎疾患がある人、例えば喘息、がん、糖尿病などの方々は感染リスクが高いと言えます。低所得者は所持金が少ないので、安いジャンクフードを買って、食べがちです。そういった食べ物はもちろん健康に良くないので、免疫力を損ないます。だから貧困による食習慣も感染リスクを高めてしまいます。これらの現状からわかるのは、世の中に不平等はもともとありましたが、パンデミックになると、あまりお金を持っていない人が1番大変な目に遭ってしまうのです。

アフターコロナの課題とは?

「コロナ禍が落ち着いたら元に戻るだろう」と言う人もいますが、あまりいい解決方法ではないと私は思います。格差はもともとあったのですから。むしろ、パンデミックは社会を変えるチャンスなのだと思いますし、そう見るべきだと思います。実際にどうするかは、これから議論する必要があるでしょう。目的は、より平等な社会をつくること。例えば最近、ベーシックインカムという言葉をよく聞きます。これは、政府が全ての国民にお金を定期的に配るというもの。貧困を解消するアイディアのひとつだと思います。日本はまだ現実味がありませんが、アメリカとヨーロッパでは提案が出ています。それも含めて、今はいろいろな提案を検討すべきだと私は考えます。

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前田先生座談会(ロングバージョン)

専門分野:政治学、平和学、国際関係論。
担当科目:Global Issues、Peace Studies、国際政治論、平和学、テーマゼミ(アメリカ研究)、演習Ⅰ~Ⅳ、人間の安全保障ワークショップ、人間の安全保障フィールドワーク、国際平和・外交チュートリアルなど。
研究テーマ:惑星政治学、平和の政治思想、大衆文化と世界政治、批判的安全保障研究。

宮下清美さん、江崎智慧さん
法学部国際平和・外交コース3年

グローバルな視点で法学を学ぶ

―――創価大学法学部に入学を決めた理由を教えてください。

宮下「中学生の頃から国際的な環境・雰囲気に興味があり、将来はJ I C Aなどの国際協力機関や、外交官になりたいと思っていました。そこで国際協力の分野で活躍している方に話を聞くと、法学部出身の方が多かったので、自然と法学部を志望していました。他大学の受験も検討し、オープンキャンパスにも行きましたが、創価大学の学生は勢いがあり学ぶ意欲に溢れていて、ここなら私が目指したい道に進めると感じました」
江崎「決め手は2つあります。兄が創価大学の理工学部に入学してからすごく成長したのです。まわりの人に感謝できるようになったり、専門分野の学びに情熱を燃やす姿を見て、自分も創大で学びたいと思いました。そしてもうひとつは、池田先生を通じて外交という仕事を知ったことです。イデオロギーが全く違う国を訪れて、心を通わせる行動に感動しました。もともと英語も好きでしたし、国際政治学を学んでみようと思いました」

―――高校の授業とは、どんなところが違いますか?

江崎「高校では先生から「教わる」のが主でしたが、今はアクティブラーニングといって、能動的に取り組む授業が中心です」
宮下「自分から何かを掴みに行く姿勢が必要になることが違いだと実感しています。その姿勢があるか、ないかで得られる内容の質が変わってくるからです。また、高校生の時は、学んだことが社会とどう関わっているのかが見えづらかったですが、今は自分と社会の関わりや、世界で起きていることと、身の回りの出来事の関連性を見えるようにもなりました。ニュースの見方まで変わってきて、学びが楽しくなりました」

学ぶほど興味が湧く
サプライズのある授業

―――前田先生は、日々の授業でどんな工夫をしていますか?

前田「毎回の授業で、学生たちを一回は驚かせたいと思っています。スルメイカのように後からじわじわと(笑)影響が残る授業にしたい。そのために用意しているのが、授業の後に持ち帰ってもらう「リアクションペーパー」です。授業の内容に関して設問を4〜5つ用意してあり、自分の言葉で回答しなければいけません。次回の授業でみんなにシェアした方が良い内容は共有させてもらいます。学生たちには「授業を一緒に作る意識」を持って臨んでもらいたいです。そして、自分一人では気づけないことを、他のメンバーのコメントや質問から学んでほしいのです。毎回の授業はこの繰り返しですから、江崎さんも、宮下さんも大変だったと思いますが、よく頑張って取り組んでいました。力がついたと思います」
江崎「大変でした(笑)。感覚としては、「え、そうなの?」と良い意味で悩むことが多くなりましたね。海外のメディアなどを通じ、あまり報道されていないことまで包み隠さず教えてくれるのが有難いです。世の中で「複雑だ」「難しい問題だ」と言われることも、何がどう複雑なのか明確に知ることができます。わからないことも多いですが、自分の頭で考えるようになりました」
前田「例えば、サウジアラビアやナイジェリアの状況は、日本ではあまり知られていません。一方、我々はそれらの国から供給される石油や天然ガスを化石燃料として使っています。電気もそうだし、車で移動するにも、化石燃料によって日本人の生活の豊かさが成り立っています。ですが、相手国では悲惨な生活をしている人々が沢山いるのです。その状況に、間接的に加担しているとわかった瞬間、学生たちは悩み始めます。SDGsで「低炭素社会を目指す」、「持続可能な社会を目指す」と宣言する言葉の重みが初めてわかるわけです。国際政治学では、国の大統領など権力者や制度などからの視点で世界を見ることがほとんどで、その国に生きる人々の生の声を届けていない。私の授業で大事にしているのは、「そこをみんなが自覚できるかどうか」なのです」

国際問題のカギを握るのは
「惑星政治学」の視点

―――前田先生は「惑星政治学」を提唱していますよね。

前田「国際政治学で問題を取り上げる時、一般的には人間(主に為政者の行動など)に焦点を当てます。これに対し、惑星政治学では地球と人間の共生関係を考えようとします。なぜなら今の時代、生物多様性や気候変動、コロナといった、ノン・ヒューマンから投げかけられる深刻な課題に人類が直面しているからです。それらとどう向き合うかが重要な課題です。しかし、世の中の動きが早く、学問がそこまで踏み込めていません。創価大学ではそれを乗り越えていきたいですし、少なくともわたしは学生たちと一緒に考えていきたいです」
江崎「国際問題は、SDGsや国際法など法規的な部分から取り組むのがベストと思っていました。ですが、前田先生のもとで惑星政治学(国際政治学)を学び、人間以外に目を向けることが問題解決の糸口になると気づきました。完全に新しい視点で、すごく視野が広がりましたね」
宮下「法学部ですが、普段から人間以外の存在が関わる気候変動や土壌の健康(土壌安全保障)などの分野もかなり勉強しています。人間と生物の共生を実現していくための時代を先取るような学びができていると感じています」

―――大学での学びを経て、自分自身の変化を感じることは?

江崎「物事を多角的に見るようになりました。例えば、僕は以前、ヒップホップが好きでよく聴いていました。ところがアメリカ情勢を学んだことで、ヒップホップに対するイメージが変わってきたのです。前田先生の授業では幅広い分野を扱うため、ふとしたところから興味や関心事が見つかったり、自分と周囲との関係性がわかってきます」
宮下「日常生活で問題意識が出てきました。スーパーマーケットで買い物をしていると、「この果物は南アフリカ産だけど、そんなに遠くから運ぶ必要があるのかな」とか、「自分が使っている電気はどこから来ているのだろう」とか、「銀行に預けるお金はどこに使われるんだろう」とか。今までは考えなかったことに意識が向くようになりました」

1年間の長期留学に挑戦!
世界を肌感覚で学ぶ

―――創価大学の法学部に入って良かったなと思うことは?

宮下「法学部でありながら経済分野や生物多様性や自然環境の課題を多く取り扱っている点です。理系分野の知識もつきますし、さらにビジネスの視点で考えたりと、いろんな角度から考える力はついたと感じています」
江崎「疑問や自分の関心事に、どこまでも寄り添って考えてくださる教授と出会えたことです。この大学に通う学生も、いろんなことに関心を向けているので刺激になります」

―――挑戦したいことや、卒業後の進路について教えてください。

江崎「交換留学で、約1年間アメリカの大学に行きます。語学も磨きたいですし、日本では経験できない世界に日常的に触れられる環境だと想像しています。視野を広げたいですね。大学では専門を絞らずに、いろんな科目を選べるので楽しみです。様々な視点を持った学生が来ると思うので期待しています」
宮下「私は文部科学省の「トビタテ!」という留学の日本代表プログラムに採択していただき、約1年間トルコのアンカラ大学に留学します。トルコは世界で一番難民を受け入れている国。また、アメリカやフランスとの関係が微妙だったりと、複雑な要素が多いので興味深いです。学問をしながら生活の中で種々の問題を感じたいですね。現地では政治経済学部で学び、難民支援のインターンシップにも参加したいと考えています」
前田「法学部の学生の約半数は、1年生の時から英語力を上げて、3年生の夏から1年くらい交換留学や長期留学をしています。それが経験の幅や深みにつながり、オンリーワンの存在に一人一人がなっていくので、今の時代の就職活動にもよい影響を与えていると感じます」

――お2人含め創価大学で学ぶ学生にアドバイスをお願いします。

前田 「留学を前提に考えると、授業での学びは3年生の前期までが勝負です。二人には、伝えるべきものは全て託したと思っていますし、実際に、すごく成長したなと感じています。今後は応用編として、学んだことを自分の頭で活用し、様々な分野で自分を開花させてほしいです。帰国後も、いつでも相談に乗りますよ。教員と学生の距離の近さが創価大学のいいところですから。きっと懐が深い、幅の広い人間に育っていると思います。後輩たちも、そんな先輩たちを見て「自分も留学してみたい」と思うかもしれませんね。ぜひ二人に続いてほしいです」

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前田先生コラム(ショートバージョン)

Q

紛争や内戦は、なぜ起きてしまうのですか?

A

人々の生活が不安定になると内戦が起きやすくなります。生活に密着した支援が必要です。

表面的な現象だけでは、真実は見えてこない

例えばシリア内戦の場合は、直接的には大統領と反政府側との対立や、イスラム原理主義勢力の利用などのポイントを上げながら説明できますが、惑星政治学の観点では、900年ぶりの大干ばつによる影響を考えます。農業が立ち行かなくなり、食糧が手に入らず、抗議のような形でアサド大統領へのデモが立ち上がった時、大統領側がそれを弾圧したことから、シリア内戦はターニングポイントを迎えたのです。一連のメカニズムについては、様々な報告書が出されています。国家の権力者とマイノリティの関係を考え人権弾圧に勇気をもってNOを言うことも重要ですが、他にもやらなければならないことはたくさんあります。例えば、水の供給ができるのか、農業ができるのか、そしてそもそも食っていけるのか。生活に密着した部分を改善することが、実は紛争解決の近道になるかもしれない。そこで、日本のJ I C Aをはじめ、国際協力機関の技術協力など幅広い活動が重要になってきます。

国際協力が必要な理由

世界中が不安定になると、人の大移動が始まります。自然災害により住む場所を奪われた「気候難民」がまさにそうでした。援助が必要な状況で、ただお金を渡すとか、橋や道路を造ればいいかというと、そういう時代はもう早々に終わっています。そこに住んでいる人たちが自然の力を借りながら自活できるようにする、それが非常に重要になっています。学生たちには、故・中村哲医師の活動を支えたペシャワール会が、アフガニスタンで行った「緑の大地計画」で本当に中村さんがやりたかった核心部分をしっかり学んでもらい、援助のあり方を考えて議論しています。中村哲さんは現地に用水路を作る活動を行い、万が一、決壊しても、現地の人たちで修理できるよう指導しました。すると、農業が持続可能になります。できるだけ現地の人同士で話し合い、立ち上げを援助することで、紛争やテロは解決に向かうでしょう。

惑星政治学は地に足のついた学問

最近の国際トピックスを挙げると、いみじくもアメリカの軍の撤退後の統治をめぐって揺れているアフガ二スタンですが、マスメディアの報ずる日々のニュースはまた別のトピックに移り、アフガニスタンも忘れさられかねません。マスメディアの届ける表面的な理解に留まらず、そこで生きているものたちへの想像力を働かせてほしいと思っています。現地の人々がしっかり食っていければ、内戦が悪化することはないと思います。ペシャワール会のように、現地で長年活動している人たちの蓄積してきた知識と知恵に耳を傾ける時ではないでしょうか。メディアではあまり報道されない話ですが、日本には、江戸時代から伝わる治水術など、素晴らしい技術があります。過去の知恵を駆使したり、現地の人が続けていけるメンテナンスなども伝えられるといいですね。地球・大地(Earth)とともにヒトはどのように生きてくことができるのかを考えること、これが惑星政治学の視点でもあります。惑星政治学で問題解決できる人が増えると、本当の意味で世界が変わっていくと思います。

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