「ファーストジェネレーション」の支援と認知度向上をめざして
(国際教養学部 国際教養学科 2年)
親やきょうだいに四年制大学卒業者がいない大学生は、大学生活に関する基礎知識が得られず、入学後に大学への適応に困難を抱えることがあります。そうした「ファーストジェネレーション(第一世代大学生)」の一人である村瀬侑水さん(国際教養学部2年)は、同じ立場の学生の支援をめざすプロジェクトチームを立ち上げ、そのアイデアが創価大学第1回SDGsグッドプラクティス(タイプB)(※1)で最優秀賞に輝きました。
まず、ファーストジェネレーションについて教えてください。
ファーストジェネレーションは、親やきょうだいに四年制大学を卒業した人がいない学生のことをいいます。「両親が非大卒」「両親ときょうだいが非大卒」など定義には幅があるのですが、私たちのプロジェクトでは「両親ときょうだいが非大卒」の学生をファーストジェネレーションと位置づけています。創価大学の場合、2022年度入学生の34.8%(※2)がファーストジェネレーションであり、その割合は決して少なくありません。一般的に、ファーストジェネレーションは経済的課題を抱えやすく、履修制度など大学特有の仕組みを理解するのに時間がかかる、家族から大学生活への理解が得られない、大学卒業後のキャリアプランが描きにくい、といった困難を抱えてしまうことがあります。こうした課題は、日本ではまだあまり知られていませんが、アメリカでは認知度が高く、ハーバード大学、カリフォルニア大学バークレー校など支援策が講じられている大学もあります。
村瀬さんはなぜファーストジェネレーションに関心を持ったのでしょうか。
私自身もファーストジェネレーションの一人で、大学入学直後、大学のカルチャーになじむまでに苦労した経験があるからです。当時は「ファーストジェネレーション」という言葉を知らなかったのですが、大卒の親を持つ友人が履修登録でアドバイスをもらっている様子などを見聞きする中で、自分にも親にも大学に関する基礎知識が不足しているのを感じていました。そうした経験をある先生にお話ししたところ、ファーストジェネレーションという概念があることを教えていただき、自分だけの課題として解決するのではなく、同じ立場の多くの学生をサポートしたいと思うようになりました。そんな時にSDGsグッドプラクティスの募集があることを知り、同級生3人を誘って、応募に向けたプロジェクトをスタートさせました。
SDGsグッドプラクティスで最優秀賞を受賞したアイデアについて教えてください。
「創価大学におけるファーストジェネレーション支援」をテーマに、ファーストジェネレーションが抱えるさまざまな困難を示しながら、創大における大小さまざまな支援策をプロジェクト目標として盛り込みました。具体的には、学内での認知度の向上、当事者のコミュニティ形成、情報共有などに取り組み、最終的には創大でのファーストジェネレーション奨学金の創設を目標としています。応募までには、国内外の関連する論文を読んで情報を集め、創大での実情について学内の教職員の方々にもお話をうかがいました。先生も職員の方もとても協力的で、親身になってさまざまなアドバイスをしてくださったことが忘れられません。
審査結果の発表は2023年の2月だったのですが、ちょうどその時期、国際教養学部の学部留学中でオーストラリアにいたので、メールで最優秀賞を受賞したことを知りました。受賞した瞬間は、私たちのプロジェクトの必要性を理解してもらえたことが、とてもうれしかったです。メンバーには、留学先からメッセージアプリで報告したのですが、顔を合わせていなかったので現実感がなく、なんだかふわふわした気分でしたね。
受賞後はどのような活動をしていましたか?
今回の受賞でいただいた助成金を活用し、10月に九州大学男女共同参画推進室の河野銀子先生を講師に迎えて、ファーストジェネレーションへの理解を深める講演会を開催しました。学内外の方に参加していただき、現状と課題、必要な支援を広く知っていただく機会になったと思います。私自身も、河野先生のお話を聞くことで、それまでに論文などで得ていた断片的な情報が整理され、より体系的な理解につなげることができました。そのほかにも、ファーストジェネレーションの1年生に対するメンター制度、ファーストジェネレーションが交流するコミュニティ活動、推薦図書リストの作成、SNSによる情報発信も行いました。
サポート活動をする中で、強く感じたのは、ファーストジェネレーションの認知度を高めることの重要性です。動き出してみて分かったのですが、大学では学生が必要な情報にリーチできる環境を整えているものの、当のファーストジェネレーションに「自分には情報が不足している」という自覚がないため、情報に手を伸ばせていないという点に問題があると感じています。私たちがプロジェクトのゴールに位置づけている奨学金制度の創設は、ファーストジェネレーションへの直接的な支援になるだけでなく、当事者の自覚を促し、認知度を高めることに繋がるものだと考えています。今後は学外の学生コンペなどにも参加し、ファーストジェネレーションをより広く認知してもらう取り組みに重点を置きたいと考えています。
国際教養学部に進学した理由や、どのようなことを学んでいるのかを教えてください。
国際教養学部を選んだのは、英語が好きだったということと、多様な学問分野に触れられるリベラルアーツの学びに魅力を感じたからです。数理系、国際系、経済系などさまざまな授業を受ける中で、それぞれ全く異なる学問だと思っていたものが、実は、社会や世界といった共通するテーマに対して、どの角度からアプローチするかの違いなのだと感じることができました。自分が社会にどうアプローチしていきたいのかを考える、とてもいい学びができています。
3年次からはジョージ・ワン先生のゼミに所属して、ビジネス系の学びを深めていくつもりです。また、大学卒業後は、海外の大学院への進学を考えているので、GRE(アメリカなどの大学院進学に必要な試験)やTOEFLの勉強にも力を入れていきたいです。ファーストジェネレーション支援の活動を通して、自分自身で道を切り拓く行動力が付き、授業やゼミでの発表にも、より積極的に取り組んでいきたいと思っています。
創大を目指す後輩たちにメッセージをお願いします。
ファーストジェネレーション支援の活動では、応募のためにたくさんの教職員の方に協力していただいたり、メンターのボランティアに各学部から学生が応募してくれたり、創価大学の温かさをあらためて感じました。プロジェクトに取り組んだこの1年、仲間や教職員の方々に支えられながら、人生で一番濃い時間を過ごし、日々成長を実感することができました。挑戦を後押ししてくれる大学の環境に、とても感謝しています。創価大学は、頑張る人がしっかり成長できる大学です。学生も先生方や職員の方も、優しい心を持った人が多く、努力する学生には、助けてくれる人や話を聞いてくれる人が寄り添ってくれます。みなさんにも、創大で志を忘れずに成長していただきたいです。素晴らしい環境でともに学んでいきましょう。
(※1)「SDGs」への貢献度の高い取り組み(タイプA)や、実現可能性の高いアイデア(タイプB)を称え、助成することを目的に、2022年度に開始した制度。入賞グループには賞状と副賞が贈られる。また、タイプBとして表彰されたグループには助成金が支給される。
(※2)2022年度新入生アンケート、回答者数:1326名、有効回答率:97.1%
[好きな言葉]
なるようになる
[性格]
マイペース
[趣味]
歌うこと
[最近読んだ本]
世界一のビールを野生酵母でつくる/鈴木成宗