Vol.106

「環境配慮が当たり前の世界」を作るために全力で学ぶ

川瀬杏子(かわせきょうこ)法学部法律政治学科3年

 法学部で国際政治や環境政策を学びながら、GCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)で英語力や探究力、実践力を培ってきた川瀬杏子さん。自ら築いた人脈で国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP30)に参加し、現地・ブラジルではアマゾンの先住民への取材にも挑戦。また、難関の奨学金を得て、ポーランドへの長期留学の切符を手にしました。環境配慮型の社会の構築に力を尽くしたいという大きな目標に向けて、さまざまな方法で自分自身を磨き続けています。
 

受験の際、有名大学にも合格しながら、創価大学のGCPへの進学を決めた理由を教えてください。

 中学生の頃、石牟礼道子さんの『苦海浄土』の一部を読み、公害によって甚大な被害が出ているにもかかわらず、企業や政府が真摯に対応せず、庶民が軽んじられたことに衝撃を受けました。また、緒方貞子さんのドキュメンタリーを見て、心を打たれました。難民キャンプに直接赴き、「今必要なものはなんですか」と丁寧に聞き回る緒方さんの姿を見て、現場主義の大切さを知りました。そして、私も将来、専門性を身につけたうえで、人のために行動できる人になりたいと思いました。そのためには、偏差値という一つのものさしだけで測る学力ではなく、温かな人格や揺るぎない信念、課題に対応できる力と賢さが必要です。そうした思いが、創価大学を選ぶ大きな理由になりました。
 それに、現在所属する前田幸男先生のゼミや、GCPの学習環境も魅力でした。日常会話だけでなく、論文執筆やディスカッションまで英語で学べること。そして、交換留学の枠が多く、奨学金制度も充実している。経済的な理由で自分が望む学びを諦めずにすむ環境があることも、私にとっては非常に大きかったです。

実際に入学してみて、どんなことを感じましたか?

 最初に感じたのは、教職員や先輩方の面倒見の良さです。実は入学前から、GCPの先輩に連絡を取って話を聞いていました。まったく面識のない私からの連絡にも丁寧に応じてくださって、「GCPには、自分のためだけではなく、もっと大きな目的のために知識を使おうとしている人が多い」と教えていただきました。
 入学後も、その印象は変わりませんでした。勉強のモチベーションが落ちていた時に、「朝9時にここに集合して一緒に勉強しよう」と声をかけてくれる先輩がいたり、奨学金の応募書類を4時間もかけて添削してくれたり。海外大学院への出願経験がある先輩は、私が留学するにあたり提出しなければならなかった研究計画書の英文を、自身がお忙しいにも関わらず、夜中まで見てくださいました。

GCPの仲間と

GCPの海外研修では、フィリピンで調査を行ったそうですね。

 1年次の冬に、約2週間フィリピンで研修を行いました。班ごとに社会課題についてテーマを設定し、現地で調査するプログラムで、私たちは理数教育における使用言語と理解度の関係について調べました。
 フィリピンでは、家庭と学校で使う言語が異なるケースがあり、複数の言語が使われる環境があります。私たちは、理科や数学を英語で学ぶことが理解の難しさにつながっているのではないかと仮説を立て、70名の小学生にアンケートを実施しました。ところが、結果は私たちの予想とは違いました。多くの子どもたちは、理科や数学を英語で学ぶことを希望していたんです。英語なら、将来、世界で使える。さらに、クラスの共通言語が英語なので、みんなでコミュニケーションを取るためにも英語がいい。そうした子どもたちの考えを知り、仮説がひっくり返ったことがとても面白かったです。

GCPフィリピン研修

法学部では、どのような学びを深めていますか?

 前田ゼミで「惑星政治学」を学んでいます。私がこのゼミに惹かれたのは、国家や政府だけを見ていては、国際社会で起きていることの本質にたどり着けないという考え方に共感したからです。
 例えば、戦争を取り上げるときも、国と国が争っているという構図だけではなく、その土地が戦争によってどう傷ついているのかを見る。農地が汚染されれば食料問題につながりますし、戦争による二酸化炭素の排出は気候変動にも影響します。平和を実現するためには、人間同士の関係だけでなく、大地や環境まで含めて考える必要がある。そこに「惑星政治学」の面白さがあります。

前田ゼミでの学び

2025年にブラジルで開催された国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP30)への参加の経緯を教えてください。また、現地ではどんな活動をしましたか。

 若者が気候の危機に脅かされることのない未来のために活動している「若者気候訴訟」のメンバーの方に連絡してお話を伺う中で、COPに参加する枠を提供していただいたのがきっかけです。COP30は「アマゾンCOP」と呼ばれるように、熱帯雨林に注目し、その保護に経済的価値を与えるという画期的な場となりました。世界が初めて本気で熱帯雨林に向き合おうとしていることを、私自身ひしひしと肌で感じることができました。
 また、私はGCPの教材でアマゾンの先住民について学んでいたので、彼らがどんな思いでいるのかを知りたいとも思っていました。公式の交渉と並行して行われた「アウデイアCOP」では、先住民たちが主体となって意見交換や抗議活動が行われていて、私はブラジルで暮らす日本人ジャーナリストの方に同行いただき、アマゾンの先住民15人に取材しました。ポルトガル語で「あなたたちにとって森とはどんな存在ですか」と尋ねると、「森は命の源であり、命の母のような存在だ」、そして、「世界中の未来の子どもたちのためにも、森を守る必要がある」と彼らは答えてくれました。自分たちの生活のためだけではなく、未来世代のことまで考えて責任を負う。世界中の大人が持つべき倫理観を、先住民の方々はすでに実践しているのだと感じました。ブラジルに行く前、私は先住民を「被害者」だと思っていました。でも、現地で出会った方々は、自分たちの土地や森を守るために、法律家と連携し、声を上げ、行動している、とても力強い人たちでした。その姿を実際に見られたことは、大きな学びになりました。

国連気候変動枠組条約の締約国会議(COP30)に参加
現地で出会った先住民と

2026年9月からポーランドに長期留学するそうですね。

 私は学費や生活費を自分で賄っていますが、留学のために3つの奨学金に挑戦し、そのうちの2つに合格できたことで、長期留学の夢が叶いました。私が留学を実現することが、経済的な理由で留学を諦めそうになっている人に1つの選択肢を示すことにもつながるという思いが、最後まで挑戦する原動力になりました。
 留学先のポーランドのヤギェウォ大学は政治学の名門で、環境政策の授業も充実しています。環境政策を研究する教授を訪ねたり、大学院進学も見据えた学びを深めたりしたいと思っています。
 また、ポーランドは、環境先進国の多いEU圏内で最も石炭依存率が高い国です。しかし、ポーランド政府は2049年までにすべての石炭鉱山の段階的な閉鎖を発表しました。「元石炭労働者の再雇用の機会はあるのか?」「政策的にどんな配慮が有効なのか?」という視点を持ち、石炭産業関係者100人にインタビューすることを目標としています。取材結果は、ニュース・報道メディアプラットフォームの「8bit news」で発信させていただく予定です。

ポーランド留学先の仲間と
ポーランドのヤギェウォ大学

卒業後の進路と、これからの目標について教えてください。

 将来は、環境配慮型の社会を、上流の制度設計や市場設計から構築できる人材になりたいと考えています。究極の目標は、「環境政策」が特別な政策として存在しなくなる社会です。環境に配慮することが当たり前になり、企業でも政府でも、あらゆる部署や分野に環境への配慮が組み込まれていく。最終的には、「環境配慮」という言葉さえ必要なくなる。そんな社会を一生かけてつくっていきたいと思っています。
 そのために、大学院への進学や国際NGOへの就職など、さまざまな可能性を考えています。排出量規制や環境金融など、企業や政府の行動に影響を与える制度にも関心があります。
 そして、どれだけ政策の上流に行ったとしても、現場の声を忘れない人でありたい。学生の今だからこそ、実際に現場へ行き、人の話を聞く経験を重ねたいと思っています。
 

創価大学への進学を考えている後輩に、メッセージをお願いします。

 「創価大学」という看板を背負い、私たちが社会にもたらした価値によって、大学はつくられていくのだと思います。発展途上のこの大学を一緒に押し上げていく。そんな覚悟と強い意志を持って、前例のない挑戦を一緒に重ねていきましょう。

<法学部法律政治学科3年>

川瀬杏子

Kyoko Kawase

[所属]
GCP15期(グローバル・シティズンシップ・プログラム)、法学部前田幸男ゼミ
[好きな言葉]
Impossible is not a fact. It’s an opinion. (by Muhammad Ali)
[性格]
猪突猛進
[趣味]
ASMRの視聴、特にタッピング音やスライムの音を聞きながら寝ること
[最近読んだ本]
地球星人/村田紗耶香
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