Vol.104

誰も取り残されない世界のため、教室の知識を現場の力に

宮内正枝(みやうちまさえ) 文学部人間学科 3年

国際社会で活躍するための語学力や問題解決力を伸ばすGCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)は、創価大学独自の学習プログラムです。GCP生の一人である宮内正枝さん(文学部人間学科3年)は、学内での学びとそこで抱いた疑問を土台に、タイでのスタディーツアー、NGOでの活動など、多様な経験を積み重ね、「現場目線」で世界の子どもたちを取り巻く社会課題に向き合う力を伸ばしています。

創価大学への入学にあたり、グローバル・シティズンシップ・プログラム(GCP)の選抜試験を受けようと思ったのはなぜですか?

 ユニセフのCMなどをきっかけに、小学生の頃から国際協力に興味を持っていました。創大のGCPを本格的に意識したのは高校時代です。当時、人が密集する教室で学ぶことに限界を感じていたこともあり、国際貢献につながる力を少人数クラスで学ぶGCPは、自分の可能性を広げられる場だと感じました。また、「人からは見えにくい形で置き去りにされている人」や「社会で周縁に追いやられてしまう人」を支えるための力を学問の側面から身に付けたいと考えたことも、GCPへの出願を決意した理由の一つです。

これまでGCPの授業を受ける中で、どのような力が身に付きましたか?

 授業を通して、女性や子どもの労働問題、気候変動、難民問題といった地球規模の課題への問題意識が高まり、自己や社会と真摯に向き合い続ける忍耐力が身に付いたと思います。しかしその一方で、学べば学ぶほど社会課題の“現場”から遠ざかっていくような感覚も覚えるようになりました。
 私はケアが必要な家族と生活するヤングケアラーだったのですが、自分自身が置かれている環境と、社会で言われる“ヤングケアラー”の姿にギャップがあり、自分が社会から置き去りにされているように感じていました。GCPでの学びを通してその経験を思い起こし、私と同じように社会課題に直面する人の現実は、今教室で吸収している知識とどれほどの乖離があるのか、授業で得た知識は偏っていないか、と疑問に思うようになったんです。

その“現実”を肌で感じる機会が、タイでのスタディーツアー参加だったのでしょうか?

 そうですね。周縁化された方々が生きる環境を自分の五感で感じたいと思い、1年次の9月に国際NGO「野毛坂グローカル」がタイで実施したスタディーツアーに参加しました。
 現地では、ミャンマーからの移民のコミュニティ、移民労働者が働くごみ集積所、スラム、大学、行政機関、地域医療センター、国連機関などを訪れ、さまざまな社会課題の現場に触れることができました。過酷な環境で懸命に働く移民の方の姿に衝撃を受け、同時に、福祉や人権分野のプロが生き生きと問題解決に取り組む姿も目にしました。タイの行政機関では、女性の担当者がジェンダー問題の解決方法をとても楽しそうに語り合っていたことが印象に残っています。もっとシリアスに、理念と現実の矛盾を感じながら働かれている姿を想像していたので、「こんな雰囲気の“現場”もあるんだ」とイメージが覆されました。深刻さと同時に、それに向き合う方々のリアルにも触れ、あらためて私も国際協力に携わりたいという思いが強くなりました。

スタディーツアーからの帰国後、GCPでの学びに変化はありましたか?

 授業で受け取る知識や情報に対する解像度が上がったと思います。スタディーツアーで移民、高齢者福祉、ジェンダーなど多様な課題の現場を訪れたことで、一つの話題に対して「タイではこんな制度だったな」「高齢者と若者には言及されているけれど、中間の年代はどうだろう」と知識をつなぎ、問題を整理してより深く捉えることができるようになりました。

昨年は、スタディーツアーを実施した野毛坂グローカルによる「SDGs『誰ひとり取り残さない』小論文・イラストコンテスト」で事務局長も務められたそうですね。

 野毛坂グローカルの活動を知ったのは、私が高校3年の時にこのコンテストの小論文部門に応募したことがきっかけでした。大学1年までは参加者でしたが、昨年度初めて運営側で携わることになりました。
 このコンテストは、「誰ひとり取り残さない」をテーマに、若者が主役の自由な作品が集まるコンテストです。昨年度は新たにAIを使った作品を募るAI部門を創設し、事務局長としてその議論のまとめ役も務めました。とても挑戦的な判断でしたが、AIを使った作品を既存の部門から切り分けることで、公平性を保ちながら、日本語以外を母語とする人や障害などの理由で表現しづらさを抱える人も参加しやすくなりました。新しい一歩を踏み出せたと思っています。

事務局長の経験からどのような学びがありましたか?

 AI部門に関する議論では、多数派や役割のあるメンバーの意見が優先されないよう気を付けながら、全員の意見を引き出して共通認識をつくるよう意識しました。この経験から、答えのない問いに直面した時は、挑戦や否定を恐れずに自分から意見を出し、歩み寄り、多様な意見を尊重した上で合意点を見つけていく大切さを学ぶことができました。
 過去に経験してきた議論は、多数派が少数派を説得するようなものが多かったので、AI部門について議論を尽くして合意形成できたことは、私にとって大きな成功体験になりました。異なる意見を持つ相手と合意点を見出していく力は、まさに国際協力の現場に不可欠な力だと思います。それが自分にもできたことが自信になり、国際協力に携わりたいという希望がさらに高まりました。

昨年10月に朝日新聞のニュースサイトが配信するポッドキャストにも出演されていますが、どのような学びや思いを持ちましたか?

 出演したのは、世界を舞台に活躍する方々に取材する番組です。私が参加した回では、写真家とNGO代表のお二人に話をうかがいましたが、お二人の「何かを決めることで、そこからこぼれてしまう人が生まれる」「撮影した写真が意図せず誰かを傷付けてしまう場合がある」といった言葉を通して、国際協力に携わる人が抱える悩みや葛藤、支援することの難しさを知りました。しかし、だからこそ、傷付けられてしまう人に目を向け、誰も一人にならずに済む環境をつくっていきたいと考えるきっかけにもなりました。

先日は東京で開催された模擬アフリカ連合(MAU)日本大会に参加し、9月にはトルコに留学も予定されています。学びの場が広がっていますね。

 MAUにはリベリア代表として参加し、英語はもちろん、課題発見や議論の仕方まで、これまでの学内外での学びと経験をフルに発揮することができたと思います。大学に入るまでは意見を発表するのが本当に苦手なタイプだったのですが、GCPで先生に「No questionはNo interestだよ」と発信力を鍛えられたおかげで、積極的に議論に参加できました。会議に先立って作成したポジションペーパー(議題に対して各国の立場を明らかにする書面)では、私たちリベリア代表が最優秀賞を受賞できたんです。すごく嬉しかったですね。
 現在は、元々持っていた問題意識と大学での学びを踏まえ、特に移民や難民の子どもが抱える精神的苦痛の緩和に関心を持っています。そのためトルコでは、移民や難民、災害に関連する政治経済、音楽の精神への影響力について学んできたいと思っています。

将来の目標を教えてください。

 全ての子どもが希望を持って生きられる社会づくりに携わることです。先ほど、移民や難民の子どもに関心を持っているとお話ししましたが、世界的に先の見えない状況が続く中、特に移民、難民の子どもたちは社会に見放されてしまうことの多い存在だと思っています。不安な日々を必死で生き抜く人たちが少しでも安心できるような人の繋がりを、国際NGOなどの活動でつくっていきたいです。

創価大学をめざす後輩たちへメッセージをお願いします。

 創大は、生命尊厳、平和創造の哲学があり、前向きなエネルギーがあふれる場所です。この大学には、本当にたくさんのチャンスと、挑戦することにとても肯定的な雰囲気があります。今のみなさんがどんな状況にあっても、創大では諦めなくても大丈夫! 私自身、創大で一歩ずつ挑戦を積み重ねる中で、初めは夢でしかなかった国際協力が「実現できるかもしれないもの」になり、さらに今では「実現させよう!」と思えるようになりました。創大を世界一にする楽しい挑戦をみなさんと一緒にできたらうれしいです。お待ちしています!

<文学部人間学科3年>

宮内正枝

Masae Miyauchi

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幸福な死/カミュ
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