研究科長
あいさつ

人間主義の哲学を持った法律家の育成

 創価学会初代会長牧口常三郎先生は、第二次世界大戦中、自身の宗教的信念から、軍部政府からの神札を受け入れるようにとの要請を入れなかったため、治安維持法によって逮捕され、獄中でその生涯を閉じられました。また第2代会長戸田城聖先生も、牧口先生とともに逮捕され、戦後まで獄中生活を強いられました。第3代会長であり、創価大学創立者である池田大作先生は、選挙違反を指示したとして逮捕されましたが、全くの事実無根、不当逮捕であり、後に無罪判決を勝ち取られました。

 偉大な先師は、いずれも不当な権力の横暴や人権侵害と闘い、法の内容が正義・公平に適い、法の適用が適正になされることの重要性を身をもって示されました。ここに創価の法曹養成の淵源があると言って良いでしょう。牧口常三郎先生は「法律とは悪に対する善の防禦柵である」と喝破されています。これは、古代ローマの著名な法学者であるユヴェンティウス・ケルスの「法とは善および公平(公正)の術である」との法格言にも通じるものと言えるでしょう。

 翻って現代社会を見渡せば、テクノロジーの発達にも関わらず、人間は戦争、自然災害、病気、貧困等の危険に常にさらされており、人権が守られ人間らしい生活をするために乗り越えてゆくべき課題が山積しています。法的知識を有する人材が何をもって社会に貢献できるかが常に問われています。

 創立者池田大作先生は「『人間のため』、『民衆のため』、『正義のため』― この信念こそが法律家の永遠の原点である」(創価ロージャーナル第1号巻頭言)とされています。何のために法律を学ぶのか―これこそが未来を生きる法律家に必要とされる信念だと確信し、皆様とともにさらに深めていきたいと思います。

 志ある皆様が、本法科大学院に入学され、創価大学法科大学院の三指針である『邪悪を正す冷徹な知性』、『人間を愛する温かな慈愛』『勝利を決する強靭な魂』をあわせ持った法律家として成長し、新たなる価値創造にチャレンジされることを大いに期待しております。

法科大学院研究科長 田村伸子