前田先生コラム
(ショートバージョン)

Q、紛争や内戦は、なぜ起きてしまうのですか?

A、人々の生活が不安定になると内戦が起きやすくなります。生活に密着した支援が必要です。

表面的な現象だけでは、真実は見えてこない

例えばシリア内戦の場合は、直接的には大統領と反政府側との対立や、イスラム原理主義勢力の利用などのポイントを上げながら説明できますが、惑星政治学の観点では、900年ぶりの大干ばつによる影響を考えます。農業が立ち行かなくなり、食糧が手に入らず、抗議のような形でアサド大統領へのデモが立ち上がった時、大統領側がそれを弾圧したことから、シリア内戦はターニングポイントを迎えたのです。一連のメカニズムについては、様々な報告書が出されています。国家の権力者とマイノリティの関係を考え人権弾圧に勇気をもってNOを言うことも重要ですが、他にもやらなければならないことはたくさんあります。例えば、水の供給ができるのか、農業ができるのか、そしてそもそも食っていけるのか。生活に密着した部分を改善することが、実は紛争解決の近道になるかもしれない。そこで、日本のJ I C Aをはじめ、国際協力機関の技術協力など幅広い活動が重要になってきます。

国際協力が必要な理由

世界中が不安定になると、人の大移動が始まります。自然災害により住む場所を奪われた「気候難民」がまさにそうでした。援助が必要な状況で、ただお金を渡すとか、橋や道路を造ればいいかというと、そういう時代はもう早々に終わっています。そこに住んでいる人たちが自然の力を借りながら自活できるようにする、それが非常に重要になっています。学生たちには、故・中村哲医師の活動を支えたペシャワール会が、アフガニスタンで行った「緑の大地計画」で本当に中村さんがやりたかった核心部分をしっかり学んでもらい、援助のあり方を考えて議論しています。中村哲さんは現地に用水路を作る活動を行い、万が一、決壊しても、現地の人たちで修理できるよう指導しました。すると、農業が持続可能になります。できるだけ現地の人同士で話し合い、立ち上げを援助することで、紛争やテロは解決に向かうでしょう。

惑星政治学は地に足のついた学問

最近の国際トピックスを挙げると、いみじくもアメリカの軍の撤退後の統治をめぐって揺れているアフガ二スタンですが、マスメディアの報ずる日々のニュースはまた別のトピックに移り、アフガニスタンも忘れさられかねません。マスメディアの届ける表面的な理解に留まらず、そこで生きているものたちへの想像力を働かせてほしいと思っています。現地の人々がしっかり食っていければ、内戦が悪化することはないと思います。ペシャワール会のように、現地で長年活動している人たちの蓄積してきた知識と知恵に耳を傾ける時ではないでしょうか。メディアではあまり報道されない話ですが、日本には、江戸時代から伝わる治水術など、素晴らしい技術があります。過去の知恵を駆使したり、現地の人が続けていけるメンテナンスなども伝えられるといいですね。地球・大地(Earth)とともにヒトはどのように生きてくことができるのかを考えること、これが惑星政治学の視点でもあります。惑星政治学で問題解決できる人が増えると、本当の意味で世界が変わっていくと思います。

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