前田先生座談会
(ロングバージョン)
専門分野:政治学、平和学、国際関係論。
担当科目:Global Issues、Peace Studies、国際政治論、平和学、テーマゼミ(アメリカ研究)、演習Ⅰ~Ⅳ、人間の安全保障ワークショップ、人間の安全保障フィールドワーク、国際平和・外交チュートリアルなど。
研究テーマ:惑星政治学、平和の政治思想、大衆文化と世界政治、批判的安全保障研究。
宮下清美さん、江崎智慧さん
法学部国際平和・外交コース3年
グローバルな視点で法学を学ぶ

―――創価大学法学部に入学を決めた理由を教えてください。
宮下 「中学生の頃から国際的な環境・雰囲気に興味があり、将来はJ I C Aなどの国際協力機関や、外交官になりたいと思っていました。そこで国際協力の分野で活躍している方に話を聞くと、法学部出身の方が多かったので、自然と法学部を志望していました。他大学の受験も検討し、オープンキャンパスにも行きましたが、創価大学の学生は勢いがあり学ぶ意欲に溢れていて、ここなら私が目指したい道に進めると感じました」
江崎 「決め手は2つあります。兄が創価大学の理工学部に入学してからすごく成長したのです。まわりの人に感謝できるようになったり、専門分野の学びに情熱を燃やす姿を見て、自分も創大で学びたいと思いました。そしてもうひとつは、池田先生を通じて外交という仕事を知ったことです。イデオロギーが全く違う国を訪れて、心を通わせる行動に感動しました。もともと英語も好きでしたし、国際政治学を学んでみようと思いました」
―――高校の授業とは、どんなところが違いますか?
江崎 「高校では先生から「教わる」のが主でしたが、今はアクティブラーニングといって、能動的に取り組む授業が中心です」
宮下 「自分から何かを掴みに行く姿勢が必要になることが違いだと実感しています。その姿勢があるか、ないかで得られる内容の質が変わってくるからです。また、高校生の時は、学んだことが社会とどう関わっているのかが見えづらかったですが、今は自分と社会の関わりや、世界で起きていることと、身の回りの出来事の関連性を見えるようにもなりました。ニュースの見方まで変わってきて、学びが楽しくなりました」
学ぶほど興味が湧く
サプライズのある授業

―――前田先生は、日々の授業でどんな工夫をしていますか?
前田 「毎回の授業で、学生たちを一回は驚かせたいと思っています。スルメイカのように後からじわじわと(笑)影響が残る授業にしたい。そのために用意しているのが、授業の後に持ち帰ってもらう「リアクションペーパー」です。授業の内容に関して設問を4〜5つ用意してあり、自分の言葉で回答しなければいけません。次回の授業でみんなにシェアした方が良い内容は共有させてもらいます。学生たちには「授業を一緒に作る意識」を持って臨んでもらいたいです。そして、自分一人では気づけないことを、他のメンバーのコメントや質問から学んでほしいのです。毎回の授業はこの繰り返しですから、江崎さんも、宮下さんも大変だったと思いますが、よく頑張って取り組んでいました。力がついたと思います」
江崎 「大変でした(笑)。感覚としては、「え、そうなの?」と良い意味で悩むことが多くなりましたね。海外のメディアなどを通じ、あまり報道されていないことまで包み隠さず教えてくれるのが有難いです。世の中で「複雑だ」「難しい問題だ」と言われることも、何がどう複雑なのか明確に知ることができます。わからないことも多いですが、自分の頭で考えるようになりました」
前田 「例えば、サウジアラビアやナイジェリアの状況は、日本ではあまり知られていません。一方、我々はそれらの国から供給される石油や天然ガスを化石燃料として使っています。電気もそうだし、車で移動するにも、化石燃料によって日本人の生活の豊かさが成り立っています。ですが、相手国では悲惨な生活をしている人々が沢山いるのです。その状況に、間接的に加担しているとわかった瞬間、学生たちは悩み始めます。SDGsで「低炭素社会を目指す」、「持続可能な社会を目指す」と宣言する言葉の重みが初めてわかるわけです。国際政治学では、国の大統領など権力者や制度などからの視点で世界を見ることがほとんどで、その国に生きる人々の生の声を届けていない。私の授業で大事にしているのは、「そこをみんなが自覚できるかどうか」なのです」
国際問題のカギを握るのは
「惑星政治学」の視点

―――前田先生は「惑星政治学」を提唱していますよね。
前田 「国際政治学で問題を取り上げる時、一般的には人間(主に為政者の行動など)に焦点を当てます。これに対し、惑星政治学では地球と人間の共生関係を考えようとします。なぜなら今の時代、生物多様性や気候変動、コロナといった、ノン・ヒューマンから投げかけられる深刻な課題に人類が直面しているからです。それらとどう向き合うかが重要な課題です。しかし、世の中の動きが早く、学問がそこまで踏み込めていません。創価大学ではそれを乗り越えていきたいですし、少なくともわたしは学生たちと一緒に考えていきたいです」
江崎 「国際問題は、SDGsや国際法など法規的な部分から取り組むのがベストと思っていました。ですが、前田先生のもとで惑星政治学(国際政治学)を学び、人間以外に目を向けることが問題解決の糸口になると気づきました。完全に新しい視点で、すごく視野が広がりましたね」
宮下 「法学部ですが、普段から人間以外の存在が関わる気候変動や土壌の健康(土壌安全保障)などの分野もかなり勉強しています。人間と生物の共生を実現していくための時代を先取るような学びができていると感じています」
―――大学での学びを経て、自分自身の変化を感じることは?
江崎 「物事を多角的に見るようになりました。例えば、僕は以前、ヒップホップが好きでよく聴いていました。ところがアメリカ情勢を学んだことで、ヒップホップに対するイメージが変わってきたのです。前田先生の授業では幅広い分野を扱うため、ふとしたところから興味や関心事が見つかったり、自分と周囲との関係性がわかってきます」
宮下 「日常生活で問題意識が出てきました。スーパーマーケットで買い物をしていると、「この果物は南アフリカ産だけど、そんなに遠くから運ぶ必要があるのかな」とか、「自分が使っている電気はどこから来ているのだろう」とか、「銀行に預けるお金はどこに使われるんだろう」とか。今までは考えなかったことに意識が向くようになりました」
1年間の長期留学に挑戦!
世界を肌感覚で学ぶ
―――創価大学の法学部に入って良かったなと思うことは?
江崎 「疑問や自分の関心事に、どこまでも寄り添って考えてくださる教授と出会えたことです。この大学に通う学生も、いろんなことに関心を向けているので刺激になります」
―――挑戦したいことや、卒業後の進路について教えてください。
宮下 「私は文部科学省の「トビタテ!」という留学の日本代表プログラムに採択していただき、約1年間トルコのアンカラ大学に留学します。トルコは世界で一番難民を受け入れている国。また、アメリカやフランスとの関係が微妙だったりと、複雑な要素が多いので興味深いです。学問をしながら生活の中で種々の問題を感じたいですね。現地では政治経済学部で学び、難民支援のインターンシップにも参加したいと考えています」
前田 「法学部の学生の約半数は、1年生の時から英語力を上げて、3年生の夏から1年くらい交換留学や長期留学をしています。それが経験の幅や深みにつながり、オンリーワンの存在に一人一人がなっていくので、今の時代の就職活動にもよい影響を与えていると感じます」