2019年07月18日

「授業WATCH」 前田幸男教授「国際政治論」

「授業WATCH」  2019年7月9日(火)

前田幸男 教授 「国際政治論」第27回
(2019年度春学期火曜・金曜開講)


 法学部の専門科目で学生の履修(受講)は2年次から。とくに国際平和・外交コースのコース指定科目です。
 前田教授は国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程に在籍中にイギリス留学を経験し、その後同大学院から博士(学術)号を取得しています。
 授業の冒頭で前回講義の「リアクション・ペーパー」(RP)を学生に返します。RPは講義を理解するうえでポイントとなる質問4、5問が記載されていて、学生は授業終了後そのRPを次回の授業時に提出します。短文で記載されている質問ですが、結構重い内容で、講義を俯瞰したうえでしっかり理解していないと書けません。予習→授業(講義)→RP作成と重厚な授業方法で確実に学生の学びが深まります。

 今回のテーマのひとつは「グローバル・ジハードとその封じ込め?」でした。
 私の大学受験時代の科目の一つに「世界史」がありました。その中で“聖戦”=“ジハード”=“イスラム教を広めるためイスラム教徒に課された布教方法の総称で、その意味を表現したもの”と今でも覚えています。一般的にイスラム教徒が非イスラム教徒と戦う場合にも用いられ、政治的な争いの場合でもそう称することがあります。
 「グローバル・ジハード」。前田教授の講義では「対テロ戦争を遂行するための戦略的用語」と定義付けられ、それが時代の流れとともに大まかに三波にカテゴライズされると言います。
 ・第一波ジハード:1960年代から1990年代。その主要な敵は、アラブ世界の親欧米・世俗的政権(それらに近い敵も含む)。
 ・第二波ジハード:1980年代以降、ビン・ラディン及びアルカーイダによって担われた戦い。主要敵は欧米などの「十字軍」、キリスト教徒。
 ・第三波ジハード:2010年以降。担い手はタウヒード・ジハード団のザルカーウィと、IS指導者のバクダディ。主要敵はシーア派親欧米政権などの近い敵。
 現代に近くなるほど、対イスラム外世界という側面よりも、イスラム世界の中での考え方や欧米に対するスタンスの違いよる「内戦」と言えるほど構造は複雑化しています。しかし、世界の大多数のイスラム教徒の人々にとってのジハードとは、信仰を通した自己練磨であり、異教徒を殺害するという理解は、本来のイスラム教の大いなる誤解になるという点を強調していました。それがイスラムの敵の殲滅という意味に理解され、その外側の世界の人々がイスラム教を危険視するようになっていくのは、きわめて現代的な状況であるという点も合わせて指摘していました。

 単語の多くは聞いたことがありますが、それぞれの意味や複雑に絡んだ関係はすぐには理解できません。またこれらの思想と運動は世界の多くの国々、その時の政権やリーダーの考え方など政治的な要素と密接に絡むため、まさに国際政治の歴史と潮流、基本知識を把握していないと理解できません。
 前田教授は、長い時間軸と地理的な広がりを含んで縦横無尽に講義を進めるため、最初に書いた重層的な授業方法で学び理解している学生たちは、興味津々、目を輝かせて聴いていました。

 前田教授のスピードにひとりだけついていけない事務長でしたが、ジハードと言えばシャーリア、十字軍と言えばビサンティン帝国、ローマ教皇ウルバヌス2世…大学受験時代、大好きだった「世界史」。あの時覚えたことが次々と蘇り、嬉しい時間でもありました。

■前田幸男(教授)■
http://www.soka.ac.jp/faculty-profiles/yukio-maeda/

専門分野    政治学・国際関係論
担当科目    Global Issues、Peace Studies、基礎演習、テーマゼミ、演習Ⅰ~Ⅱ、人間の安全保障ワークショップ、

       人間の安全保障フィールドワーク
研究テーマ  パスポート・ビザによる移民管理、大衆文化と国際政治、平和の政治思想、批判的安全保障研究

ページ公開日:2019年07月18日