2019年10月01日

「授業WATCH」 土井美徳 教授 「政治学史」

「授業WATCH」  2019年10月1日(火)

土井美徳 教授 「政治学史」第3回
(2019年度秋学期火曜開講)
 
 法学部の専門科目で学生の履修(受講)は2年次から。とくに公共政策・行政コースと国際平和・外交コースの指定科目です。古典古代ギリシアから20世紀の現代まで、代表的な政治理論をたどりながら、政治学の重要なテーマを考える授業です。

 今回の授業テーマは「政治学の誕生~古典古代ギリシアの政治思想」。ソクラテス-プラトン-アリストテレスという系譜、特にプラトンを抜きには講義できません。大学入試科目が「世界史」だった事務長は授業中に出てくるこの時代の用語にワクワクしました。

 前回授業で配布された「事前学習のワークシート」には3つの質問が書いてあります。「①民主主義の長所について」「②民主主義の短所について」「③プラトンは民主主義をどう考えたと思うか。プラトンにとって理想の政治とは」
 学生さんは記入して持ち寄り、授業開始後20分間、まずは隣の学生さんとシェアし、考えを整理します。ここでのディスカッションは活発(写真)です。そこで一旦止めて講義開始です。

 アテネとそこに形成された「ポリス」(人間相互の社会的関係における政治空間)、紀元前6~5世紀頃、クレイステネスやペリクレスの時代に誕生したとされる「民主主義」の淵源などを講義したあと、冒頭の①、②について何人もの学生さんに発表を求めました。「長所は、民意が反映される、自己決定感がある、自律した市民を育成できる、政治参加によって市民の公共性や能動性が高まる」、「短所は、少数意見が反映されないため無関心層を生む、人々の判断レベルによっては衆愚政治化する可能性が大きい」、…的を射た意見がたくさん出ました。
 今日の授業前半のホシはまさにここ。土井教授の講義に力が入ります。「民主主義は、担い手となる市民の資質が問われる。多数の民衆によって支持された“一人”の統治者によって、専制政治が招来する可能性があります。また、政治家が大衆の好みや感情に迎合してポピュリズムに陥る危険性もあります。過去の多くの歴史的事例が示すとおりです」とし、この課題を考えるうえで、③について「プラトンの政治観」を紹介していました。「プラトンは民主主義が“衆愚政治”に陥る危険性を指摘しました。彼にとって理想の政治とは“哲人政治”であり、政治権力と哲学的精神が一体となることを目指していました」。


 さらに続いて、「では、プラトンのこうした政治観の課題とは何か」と、さらに学生たちに問いを発します。何人かの学生から、「結局、担い手の人間しだいで左右されるのではないか。どのようにしてそうした哲人を輩出するのか。仮にひとたびは登場したとしても、持続可能性がないのではないか。制度や仕組みで正義を実現するという視点が欠けているのではないか」と、活発に意見が出ます。これを受けて、土井教授は、プラトンに続いて、アリストテレスの政治学を紹介し、政治体制の重要性について語っていきます。講義の最後では、フランス革命や近代の思想家の民主主義の考え方へと話をつなげ、民主主義を時代横断的に考察しようと試みていました。

 授業のホシを伝えるために、準備シートを使って最初に「自分で考えること」を促し、それを学生間で「互いに共有しあい」、その学生参加型の議論のうえに立って、教員が講義を進めるという、この方法はとても有効だと思いました。“Think, Pair, Share”という協働ラーニング法を通して、現代を生きる若い学生が、政治学の古典と対話する、そんな授業でした。
 さらに、土井教授は前回授業までで学んだ用語などを、学生さんにたびたび質問します。裁縫で言うところの“半返し縫い”的な授業進行は、よく頭に残ります。そしてここ!というポイントに差し掛かると、一層熱く明解に語ります。聴き終えて頭も気持ちもクリアになりました。

■土井 美徳(教授)■ 土井美徳 教授

専門分野   政治学
担当科目   公共政策論、公共政策ワークショップ
研究テーマ  エドマンド・バークの政治哲学、イギリス立憲思想の形成、現代デモクラシー論の展開
 

ページ公開日:2019年10月01日