2022年度の「ビジネス&ロー・ワークショップⅠ」

-産業界の様々な業界からの講師によるワークショップを通じて、各業界の法律問題を認識し、その解決策を真剣討論する形のワーク型講座-

担当教員 松田佳久

 
 「ビジネス&ロー・ワークショップⅠ」は創価大学法学部法律学科の4つのコースのうちの1つである「ビジネス法務コース」の中核の一つです。この講座では、産業界の様々な業界から講師としてお越しいただき、学生はグループを作り、講師から出された課題をグループで検討して、場合によっては解決策まで発表します。課題は、講師の属する業界の法律的な諸問題です。受講生は各業界の法律問題を認識し、それについて考えることにより業界をより深く知ることができます。そして、それが、自身がどの業界に興味があり、どの業界に進みたいかを判断する一つの材料になります。

 今年度(2022年度)は120名の受講生でした。この講座は経営学部と連携をしており、経営学部生も30名ほど受講していました。経営学部生は経営をやるためには、法律も勉強する必要があるということで、この講座を受講しています。

 今年度は、出版業界、流通・小売業界、不動産業界、社会保険労務士、広告業界、不動産鑑定士、貸金業業界、銀行業界、税理士、建設業界、新聞業界、証券業界、旅行業界から講師としてお越しいただきました。

 出版業界は経済法令研究会の地切様にお越しいただき、出版に当たって必要な著作権等の問題が課題として出されました。
 流通・小売業界では不当景品類及び不当表示防止法に関する問題が課題として出されました。
不動産業界では不動産取引において宅地建物取引業法上、どのような規制を受けるかについて課題が出されました。また、2018年1月に起きた「かぼちゃの馬車」事件についても勉強しました。「かぼちゃの馬車」とは、㈱スマートデイズがサブリース事業で展開していた女性専用シェアハウスのブランド名です。このサブリース事業では不動産投資家に対して35年間の家賃収入を保証しており、不動産投資家にとっては非常に魅力のある契約であったといえるものでした。ところが、㈱スマートデイズは、30年間の家賃収入を保証するという契約を交わしたにも関わらず、2017年に不動産投資家へ払う賃料の減額を請求し、2018年以降は賃料の支払いを止め経営破綻にまで陥ってしまいました。その結果、不動産投資家自身が多額の借金を抱えることになり、世間を騒がせた、という事件です。この事件がきっかけで銀行等からの資金融資の審査が厳しくなり、不動産購入に向けられる資金が減少し、不動産業界が痛手を受けているとの点につき、受講生は興味をもったようです。

 社会保険労務士としては、創価大学OBの澤田庸一先生にお越しいただきました。解雇整理や社員の採用における雇用助成金などが課題として出されました。創価大学OBということで受講生は社会保険労務士という資格にとても興味を持ったようです。
広告業界では、広告会社と依頼主との契約や広告会社の内部組織のことや収入源など(電通と博報堂のライバル通しの関係についてもお話があり、受講生は興味を持ったようです)、貸金業界では厳しい取立てが社会問題になっている点、銀行業界では融資した資金(貸金債権)の回収問題、建設業界では災害復旧に建設業界が一役買っているが、二次災害により建設会社社員が命の危険にさらされている問題、新聞業界では新聞情報の重要性とその活用の問題、旅行業界では旅行契約に関する問題、証券業界では株式・社債といった金融商品に関する問題などが課題として出されました。

 不動産鑑定士は昭和アセットリサーチ株式会社の神山大典様にお越しいただき、不動産鑑定評価の不当鑑定問題が課題となりました。また、不動産鑑定士は20代・30代がかなり不足しており、引く手あまたの状態である点が示され、受験を目指したいという受講生も出てきました。
 税理士としては創価大学OBの小泉清先生が担当なさいました。税理士業務に関係する課題が出されました。法学部では毎年税理士希望者がおり、その受講生にとってはとても参考になったものと思います。
 

聴講する受講生(講座のはじめの30分程度は業界について学びます)
証券業界からの講師の飯島様による講義風景
日経新聞社の圓尾様による講義風景

日本旅行業協会の堀江様による講義風景

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