法学部「地球平和共生ワークショップ」の授業で国連事務総長特別顧問である高須幸雄氏(元国連大使、元国連事務次長)が講演されました

現国連事務総長の人間の安全保障担当特別顧問であり、日本ユニセフ協会会長の高須幸雄氏が10月8日、法学部の「地球平和共生ワークショップ」の授業において「国連と人間の安全保障 SDGsと未来への課題」とのテーマで講演をされました。

高須氏は、最初にSDGsに達成にあたっては、人間の安全保障がもつ一人一人に注目する普遍性を基盤に、包摂的で持続可能な社会づくりを進める必要性を確認されました。そのためには「国全体ではなく一人一人の所得成長や生活や尊厳の改善状況がどうなのか」という観点が重要である。しかし、SDGsの達成度測定にあたっては国全体の平均値ではなく、国内の地域や類型グループに細分化されたデータに基づき測定する必要があるが、データが欠如していることもあり、差異は無視され一人一人の改善状況を測定するには限界があると指摘されました。そこで、より実質的にSDGsの理念実現を加速化するためには人間の安全保障の視点から、国全体だけではなく、地域ごとの優先課題を客観的データや住民の主観的評価に基づき、洗い出し、この解決のため、特に子どもや女性の人権を重視した活動、連帯の強化が重要であると述べられました。

この観点から、SDGsの理念である「誰も取り残されない」日本の実現を目指して、日本国内で誰がどこでどう取り残されているかを可視化するために人間の安全保障指標を作成し、各地域(まず都道府県別、次いで市町村別)の課題を洗い出す取り組みを紹介されました。この指標は生命、健康・保健といった命指数、子どもや女性の人権を含む尊厳指数、自己充足度・社会的連携度という主観的評価も含む点が特徴である。SDGs宮城モデル(市町村別)の中で算出した指標をもとに宮城県気仙沼市では「誰も取り残されない気仙沼」を目指し、女性のICT就労支援や子どもの権利条約の学習などが実施されていることについてお話がありました。さらには市民も参加して、自然との共生と人間の安全保障を基盤とする「気仙沼サスティナブルシティ推進プラン」がこのほど作成されたことが紹介されました。最後に、学生に対し、一人一人が主体であり、他者への敬意と思いやりをもって多様性を認め尊重しあう社会を目指し、自分を大切にして行動して欲しいと結ばれました。

参加した学生からは、「SDGsが『国の平均』だけでなく、その内にいる『すべての人』に適用されるべき目標であるという先生のお話の通り、国という大きな主語の中では見過ごされてしまう人々がこれほど多く存在するという現実に、厳しさを感じました。」と言った感想や、「気仙沼市の自然共生を目的とした事業をしていることにも大変関心をもちました。このようにローカルな角度から地域課題にアクションを起こすことが、全国での普遍的価値として広がってほしいと思います。」といった声がありました。

Share