第1回法学部・法学会講演会を開催しました
2025年11月7日(金)に、新潟国際情報大学教授の佐々木寛先生をお迎えし、2025年度の第1回法学部・法学会講演会を開催いたしました。新潟おらって市民エネルギー株式会社・代表取締役の横山 由美子様にもご参加いただき、学生との活発な交流を行っていただきました。概要は以下の通りです。
【講演題目】
文明論的な複合危機と「エネルギー・デモクラシー」
――「はみ出す」個人の連帯が、新たな社会の回路を開く――
登壇者: 佐々木 寛 氏(新潟国際情報大学 教授)
日時: 2025年11月7日 場所: 中央教育棟 AB103
1. 現代を覆う「複合危機(ポリクライシス)」の本質
私たちは現在、気候変動、戦争、そして新自由主義がもたらした「心の危機」という、重層的な「複合危機(ポリクライシス)」に直面しています。佐々木氏は、特に「今だけ、金だけ、自分だけ」という価値観の浸透を深刻視します。人間が資本主義の中で「商品」化され、自己肯定感や「社会を変えられる」という自己効力感を失っている現状は、民主主義の土台を崩しかねない「文明論的な危機」であると警告しました。
2. エネルギー・デモクラシー:ピラミッド型からネットワーク型社会へ
この危機への処方箋として提示されたのが「エネルギー・デモクラシー」です。これは単なる電源の切り替えではなく、社会構造そのものの変革を意味します。
・ 原発型社会(中央集権・ピラミッド型): 明治以降150年続く日本の姿であり、中央が意思決定し、地方にリスク(原発や基地)を押し付ける構造です。
・ エネルギー・デモクラシー型社会(地域分散・ネットワーク型): 地域でエネルギーを自給し、管理する「自治」に基づく社会です。エネルギーを自給することは、
戦争に突き進む構造(資源争奪)を回避し、真の安全保障を構築することに直結します。
3. 「はみ出す」勇気が生み出す具体的な変化
社会を変える原動力として、佐々木氏は既存組織の枠組みから一歩「はみ出す」個人の重要性を説きました。
・ 金融・事業の現場から: 新潟県津南町の小水力発電事業(約13億円)では、通常なら融資が難しい案件に対し、「次世代のためにかっこいい仕事をしたい」とい
う個人的な思いで枠を「はみ出した」銀行員の協力により、事業が実現しました。
・ 経済の地産地消: 新潟県では年間約7400億円の光熱費が県外・国外へ流出しています。これを再生可能エネルギーに切り替えることで、地域に仕事と富を戻
し、経済的自立を勝ち取ることができます。
4. ファシリテーションの技術による「革命」
なぜ対話の技術(ファシリテーション)が「革命」となり得るのか。それは、既存の「権力構造」を解体する力があるからです。
・ ニーズでの連帯:イデオロギーで対立するのではなく、各主体の「何が必要か」というニーズを探り出し、繋ぎ合わせることで、本来交わらない組織(政党や市民
団体)を動かすことが可能になります。
・ ブーの打破:学校や家庭で重要な話題を話せない空気こそが権力の装置です。ファシリテーションを用いて、こうした話題を「ぶっちゃけて」話せる場を作ること
は、民主主義を最小単位から再生させる身体的技法となります。
5. 世界のモデルと「東アジア自然エネルギー共同体」の夢
・ デンマーク: 高度な教育と、1週間かけて合意形成を行う「対話の文化」が、地域熱供給などの高度な自治を支えています。
・ 南オーストラリア州: 蓄電池とデジタル技術を活用し、消費者が「生産者(プロシューマー)」となることで、電力会社の独占を排した民主的な電力システムを実
現しています。 佐々木氏は、核と原発が集中する東アジアにおいて、市民社会が繋がって「自然エネルギー共同体」を創出することが、EUの出発点(石炭鉄鋼共
同体)がそうであったように、東アジアの平和構築への鍵となると展望を語りました。
6. 学生へのメッセージ:自己効力感を持って「はみ出そう」
「おらって(私たち)」が主語となる社会を作るには、一人ひとりが「自分たちは社会を変えられる」という手応え(自己効力感)を持つことが不可欠です。 やりたいことにまず着手し、後からお金や仲間がついてくるような生き方、そして専門性や立場の枠から「はみ出す」楽しさを知ることが、この複合危機の時代を生き抜く智慧であると、学生たちへ熱いエールを送り、講演を締めくくりました。