丹木の歳時記2023 弥生(四)

その新入生が上京したのは40数年前の3月31日。創大の先輩と東京駅で待ち合わせ、滝山寮の入寮式までの数日間、先輩のアパートに泊めてもらう予定でした。ところがいくら待っても先輩は現れません。携帯電話もない時代。お互いに別の改札にいたことは後になって分かります。やむなく彼は中央線の赤い電車を目印にホームへ向かい、帰宅ラッシュの混雑に驚きながら国鉄八王子駅に降り立ちました。今のような駅ビルやデッキはなく、駅前には「織物の八王子」というモニュメントが立っていました。西東京バスに乗り、創大簡易郵便局のあった栄光門で下車。まだ肌寒い夕暮れの坂道を上がった先が滝山寮です。玄関に出てきた3年生の寮の代表に訳を話すと、南寮の入寮予定の部屋に案内してくれました。寮の案内パンフレットには、整然としたスタディルーム、ミーティングルーム、ベッドルームの写真が掲載されています。ここで12人の友と1年間寝食を共にするのかと思うといやが上にも期待が高まります。ところが足を一歩踏み入れた瞬間、彼が夢見た美しいイメージは音を立てて崩れ去っていったのでした。(以下、次号に続く)
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