丹木の歳時記2025 皐月(二)

最近、あまり姿を見かけなくなった野口英世さん。千円札でおなじみだった人物です。その出身地である福島県の猪苗代湖畔には野口英世記念館が建ち、生家も保存されています。明治9年(1876)11月9日、英世は父・佐代助と母・シカの長男としてこの地に生誕。母が目を離したすきに囲炉裏に落ち、左手に大やけどを負ったというエピソードはよく知られています。猛勉強の末に20歳で医師の資格を得た英世は、明治33年(1900)12月に渡米。梅毒の研究で画期的な成果を挙げ、ノーベル賞候補にも名を連ねました。研究に没頭する野口のもとに、ある日、日本から一通の手紙が届きます。ほとんど文字が読めなかった母・シカが綴った、帰国を待ち望む手紙です。「はやくきてくたされ はやくきてくたされ はやくきくたされ はやくきてくたされ いしよ(いっしょう)のたのみて ありまする にしさむいてわ おかみ(拝み)ひがしさむいてわ おかみしております きたさむいてわ おかみおります みなみさむいてわ おかんております はやくきてくたされ いつくるト おせてくたされ これのへんち まちてをりまする ねても ねむられません」。人の心を打つのは、美しい修辞や技巧ではないことを、この手紙は教えてくれます。大正4年(1915)、15年ぶりに帰国した英世は、ついに母との再会を果たしました。11日は母の日。普段なかなか口に出せない感謝の気持ちを伝える良い機会です。












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