丹木の歳時記2025 文月(二)

韓国の国花でもあるムクゲが咲き始めました。そこで思い出されるのは「韓国のファーブル」として知られる石宙明(ソク・チュミョン)です。1908年生まれの石が来日したのは1926年のこと。鹿児島大学の前身である鹿児島高等農林学校で学ぶためでした。ここで彼が出会ったのが、昆虫学者の岡島銀次(1875-1955)です。岡島の講義は、石が昆虫学者を目指すきっかけとなりました。卒業後、朝鮮半島に戻った石は、高等普通学校の生物教師を務める傍ら、朝鮮に生息する蝶の採集と分類に没頭します。その標本数は実に75万匹に及ぶものでした。1936年には、九州大学の昆虫学者・江崎悌三(1899-1957)を福岡市の自宅に訪ねた記録も残っています。しかし1950年、朝鮮戦争の戦乱の中で石は命を落とします。彼が集めた貴重な標本の大半も、この時に焼失してしまったとされていました。ところが昨年、驚くべき事実が判明しました。石が採集した蝶などの標本129点が、およそ90年近くもの間、九州大学に保管されていたのです。この標本は、1930年代に石が九州大学に寄贈したものとされています。現在、標本はソウルにある国立生物資源館に移管され、それらをもとにした新たな共同研究も開始されました。蝶によって結ばれた日韓の昆虫学者の交流は、今も時代を超えて息づいています。












「丹木の歳時記」への感想はこちらまで
E-mail:publicrelation@soka.ac.jp
Facebookの「いいね!」やツイートも執筆の励みになります。
Instagramでも丹木の里の四季折々を紹介しています。創価大学公式アカウントはこちらから