| 研修期間 | 2026年3月3日(火)~3月14日(土) |
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| 研修先 | エスリンゲン応用化学大学、オルガ・ホスピタル、テュービンゲン大学医学部付属病院 |
| 参加人数 | 14名 |
エスリンゲン応用化学大学 講義
エスリンゲン応用科学大学(EUAS)にて、「プラネタリー・ヘルス」や「自殺幇助(じさつほうじょ)と自殺予防」についての講義を受けました。
「地球の環境の変化が、生活する人々の健康に影響を与える」という視点をプラネタリー・ヘルスの講義で学ばせて頂き、その中で「人は、健康な惑星(地球)の上でしか健康でいられない」という一文が、今の世界の現状を言い当てているなと思いました。10年前のドイツでは、訪れた3月頃は雪が降りまだ寒かったそうですが、今は暖かい気温と気候に変化していることを話されていて、日本のみならず世界中で地球の変化は観測されているのだと、地球温暖化の規模感と危険さに改めて畏怖しました。その後で、「看護における専門的な義、価値、そして倫理的義務は、人々とその健康、及びウェルビーイングに基づいている。したがって、それは地球を守ることに基づいている。看護師はプラネタリー・ヘルスに向けた社会変革のリーダーであるべき」という一文から、患者さん一人一人の健康をケアすることが地球規模の視点と地続きであることに、看護師の役割の可能性を感じることが出来ました。
総合病院視察
バーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルトにある総合病院(3つの内、オルガ・ホスピタルという病院)の小児・母子医療専門の病棟の訪問・見学を行いました。
ドイツを訪れて初めての病院見学でしたが、日本の総合病院より大きく、およそ3,000人の看護ケアに携わる医療従事者がいると聞き、ドイツの医療の発展の度合を肌で感じました。病室の並ぶ廊下には小児患者の写真が飾られていて、全て看護師の手作りであることに驚くと同時に、「患者」としてではなく「家族」のように温かさを持って接している印象でした。この病院は「グリーンホスピタル」として、前述した「プラネタリー・ヘルス」の考え方が根付いていて、患者の食事のメニューの一部(デザートなど)を任意制に変更したり、週末にメニューの量や種類を減らすなどを行うことで食品廃棄を減らすような取り組みをされていました。
ヘルスセンター・高齢者施設の視察
エスリンゲン・アム・ネッカー市のヘルスセンター・高齢者施設の見学・視察をさせて頂き、ドイツの高齢者福祉の特徴や価値観について学びました。
ドイツでは「看護師」「患者・利用者」のような区切りを作らず、どこまでも「その人」を見ていると思いました。ドイツの哲学者、カントの「尊厳」である「人を物扱いしない」という価値観が随所で見られ、移民を多く受け入れている国のため、訪れた高齢者施設では50以上の国籍の医療従事者が勤めているという状況でした。多文化共生を、施設ではどこまで求めているのか質問をしたところ、スタッフに何か国語も教育させるのではなく、「ドイツ語」のみを使用して教育をしているそうです。統一性を持たせることで、スタッフ間の、またスタッフと利用者間の国籍が異なる場合でも共生が出来る工夫がなされていました。
大学病院視察
テュービンゲン市にあるテュービンゲン大学医学部付属病院の見学・視察をさせて頂きました。看護部長や代表の方々の講義を受け、ドイツでは国家医療ネットワークという、普段使用しているSNSのようなネットワークとは別のものを使用して、遠隔医療を行っていることを知りました。日本では患者情報をインターネット上に上げる行為は固く禁止されていますが、ドイツでは国独自の法律とネットワークで厳重管理がなされているために、看護師が患者の在宅訪問・健康状態の評価・データ収集した結果を医師にネットワーク上で報告することが可能になっているそうです。双方向でのやり取りも容易に行うことができ、SNS共有でない特殊な仕組みになっているため、ここまで遠隔医療が発展しているのだと、日本と異なる医療の姿がとても新鮮でした。
市内観光
ドイツ研修では、ドイツの医療や福祉を学ぶだけでなく、旧市街や古城、ゲーテハウスなどを訪問し、観光を通じてドイツの文化に触れることができました。
エスリンゲン応用科学大学のあるエスリンゲンの街並みは、13世紀~16世紀の建物がそのまま残されていて、三角屋根の建物や教会がまるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚をもたらしてくれました。一方フランクフルトのような大都市に移動すると、あたり一面がビル街で、日本でいう東京のような都心の賑わいがありました。どの場所に行っても日本では見られない風景ばかりで面白かったです。行く前に想像していたよりずっと、現地の人達が温かく、目が合うと微笑みかけてくれる人が多かった印象でした。時折「こんにちは」「ありがとう」と日本語で挨拶をしてくれた際はすごく嬉しかったです。
参加者の声
【参加動機】
日本と同じ主要国であるドイツの看護・医療体制が日本とどれほど違うのか、また似ている部分がどれほどあるのか、自分の目で見て学びたいと思いドイツ研修への参加を決意しました。以前「日本と国民性が似ている」と聞いたことがあり、加えて近代日本の法律や医療はドイツに習ったものが多いため、先人のように原点の地で看護を学び、私自身の看護観の形成の糧にしたいと考えました。私が1年生の時にエスリンゲン応用科学大学 社会福祉・教育・看護科学学部の先生方が来学された際、講演で「ドイツは医師も看護師も多い国である」ことや、医療費が世界で2番目に高い国であるということなど、先進国でもこんなに違いがあるのかと驚きました。その体験から、教科書やインターネットで検索できることより、現地で多くの経験をしたいと思い、勇気を出して参加しました。
【研修を通じて学んだこと】
私は今回のドイツ研修を通して、その国の文化や価値観は看護によく表れていて、看護のあり方を一様に良し悪しはつけられないことを学びました。訪問・見学させて頂いた病院や施設を通して、前述したような「日本に無いもの・ドイツ特有のもの」を多く発見し、「日本にも導入すべきだ」「より良い看護の形だ」と日本では決して体験出来なかったことをさせていただきました。しかし、日本には日本独自の医療体制があり、法律や社会の仕組みに合わせ独自に発展してきたその体制を「古い」「遅れている」と歴史や制度を知らずに否定は出来ないと思いました。日本の医療の良さを感じる場面も多くあり、看護技術だけでなく、開発された・導入された背景も学びたいと思うきっかけになった研修でした。
【今後の夢】
私はドイツ研修を通して「看護師は患者を一人の人として捉え、家族のように温かな励ましを送る存在として接することが出来る」ことを深く理解しました。「共に勝利の人生を開く」看護を実践するための第一歩を刻むことができ、日本の看護の素晴らしさを実感することもできました。今後の私自身の看護への活かし方や抱負として、「人間として目の前の一人一人を理解していく」ことを念頭に、一つ一つ、意味の無いことは無いという気持ちで学部の授業や課題、実習に取り組む決意です。また、今ここからの挑戦で、日本の医療の発展に尽力する人材に成長していきたいと思います。