2014年度より米国名門カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)における国際看護研修がスタートしました。
研修中の様子や、参加者のリサーチレポートを紹介します。
研修期間 | 2015年2月18日~3月1日 |
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参加人数 | 7名 |
研修先 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンフランシスコ市、ロサンゼルス市 |
DIARY
2015年2月18日~3月1日の研修中の様子などを紹介しています。
February 18 2015|サンフランシスコへ出発
2014年10月より半年間に渡って事前学習を行い、準備してきた第一回米国国際看護研修がいよいよスタート。
February 18 2015|サンフランシスコへ出発
2014年10月より半年間に渡って事前学習を行い、準備してきた第一回米国国際看護研修がいよいよスタート。
研修は2015年2月18日より2月25日まで米国サンフランシスコ市において、2月26日から2月28日までロサンゼルス市において行われました。
学びの成果を発揮するために、決意を胸に日本を出発しました。
Departure
羽田空港より米国サンフランシスコ国際空港へ出発
Arrived in San Francisco
サンフランシスコ国際空港では、サンフランシスコ総合病院の元病院長のジーン・オコンネル先生と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校看護学研究科の教授べサニー・フェニックス先生が温かく迎えてくれました。
Close
February 19 2015|UCSFでの講義がスタート
待ちに待ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校での講義が始まりアメリカの高度実践看護師やその教育について講義を受けました。
February 19 2015|UCSFでの講義がスタート
待ちに待ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校での講義が始まりアメリカの高度実践看護師やその教育について講義を受けました。
午後はサンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタルの視察をしました。アメリカと日本の病院の違いを学び、看護師に質問をすることができました。
We attended the lectures at UCSF
初めてメトロに乗り、美しい街並みに感動しているとついにカリフォルニア大学サンフランシスコ校に到着しました。
開校式ではデイビッド・ブラホフ研究科長が歓迎の挨拶をしてくださいました。
そしていよいよ講義が始まりました。
UCSFの教員やUCSFで学ばれている日本の大学院生が講義をしてくださいました。あまりに早い英語とレベルの高さに全くついていくことができずに不安でいっぱいになりました。
しかし皆で必死に講義を受けました。
アメリカにおける看護師の役割や仕組みを学び、ナースプラクティショナーに憧れを抱きました。
San Francisco General Hospital
サンフランシスコ・ジェネラル・ホスピタルを訪問しました。
病院内の部署も医療従事者らの仕事も細分化されていると感じました。
一部屋に1~2人の患者さんが入院しており、また各部屋にトイレ・バスが付いていることに驚きました。日本の病棟では、看護師が慌ただしく動き回っていますが、アメリカは看護師の仕事が細分化されているためにナースステーションは小さく、慌ただしい雰囲気はありませんでした。また高齢者の患者さんが多い日本と比べて、アメリカは比較的に患者さんの年齢が若いと感じ、日本の超高齢化社会を実感しました。
見学が終わったあとは、個人にわかれてリサーチの質問を行い、学びたいことを学ぶことができ、感謝の気持ちでいっぱいになりました。英語でインタビューを行うことは、ハードルが高く、緊張の連続でしたが、「分りたい」「学びたい」との気持ちが大切であることがわかりました。
February 20 2015|講義と市庁舎表敬
アメリカ研修3日目。
February 20 2015|講義と市庁舎表敬
アメリカ研修3日目。
終末期ケアと専門職連携教育の授業を受けました。午後から長期療養型の病院であるラグナホンダホスピタルへ行き、その後サンフランシスコ市庁舎を表敬訪問。サンフランシスコ市より創価大学看護学部へ栄誉認定証の授与式に、代表として参加させて頂きました。
夜はピア39に行き、クラムチャウダーをみんなで食べました。ピア 39から見える夜景は非常にきれいでした。レクチャーや医療施設など発見が多く、忘れられない一日となりました。
Lecture on Interprofessional Education
UCSFには、IPE(専門職連携教育)というプログラムがあり、その一つに看護師、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士の5種類の医療従事者がチームとなって、学生とディスカッションする機会があることを教えて頂きました。この機会を通して、学生たちはそれぞれの職種の役割や責任などの理解を深めることができるそうです。
レクチャーを通し、チーム医療の重要性を改めて学ぶとともに、それぞれの役割を最大限に生かし、患者中心の医療を行うための教育の大切さを学びました。
Laguna Honda Hospital
病院は沢山の緑に囲まれ、サンフランシスコを見渡せるような丘にありました。
Farm Houseでは、ヤギやブタ、アヒルなどの動物たちがおり、ふれあうことができるようなスペースがありました。
また、一息できるベンチが設置されたベランダがいくつもあり、そこでBBQを行うこともあるそうです。
部屋は個室が多く、一つ一つの部屋に、大型のTVが設置されていたり、どの部屋も2、3人で共有していましたが、トイレやお風呂は部屋のそばに備え付けられていました。
部屋のそばにあれば、患者さんの自立度が落ちてしまうこともオムツに依存することも少なくなるのではと感じました。
また、見学中、ベットで寝ている患者さんはあまり見受けられませんでした。
驚いたことはそれだけではなく、今まで英語で私たちに施設の説明をしていた看護師さんが、ふと患者さんにスペイン語で話しかけていた光景を見たときは本当に驚きました。
英語だけでなく、中国語やスペイン語を話すことができる看護師がいることを教えて頂きました。カルフォルニアで働く看護師の方々とお会いし、グローバルマインドを持った看護師を姿で教えて頂きました。
City Hall or Piar39
1915年に建てられた100年以上の歴史を持つサンフランシスコ市庁舎です。
今回、サンフランシスコ市から創価大学の看護学部へ栄誉認定証(Certificate of Honor) をいただき、その授与式に代表として参加させて頂きました。
サンフランシスコ市の行政執行委員のMalia Cohenさんから、認定証が授与され、心温まる激励をして頂きました。
失敗を恐れず挑戦しつづけ、将来、社会の中で輝く女性に、そして信頼厚き頼れる看護師になっていきたいと決意しました。
February 21 2015|地域の方との交流
午前中は地域の交流会に参加し、その後サンフランシスコ市内を視察。
February 21 2015|地域の方との交流
午前中は地域の交流会に参加し、その後サンフランシスコ市内を視察。
夕方にはサンフランシスコで看護師として働いている地域の方との懇談会に参加。
夜は地域の方のお宅に招待して頂き、楽しく夕食をいただきました。
Discussion Meeting
このディスカッションミーティングは、地域のお宅に子供から高齢の方まで、様々なバックグラウンドを持った人々が集い合い、いくつかのトピックについて意見共有をしたり、自身の今までに経験したライフヒストリーなどを語り合ったりする場です。定期的に開かれており、和気あいあいとした雰囲気の中でお互いの理解や親睦を深め合うために行われています。初めて参加した私たちに対して、歌や演奏を披露してくれ、温かく歓迎してくれました。
City sightseeing
ディスカッションミーティングの後は、市内を視察しました。ファーマーズマーケットと呼ばれる市場や、港町、ビーチや海が見えるレストランなど、さまざまな場所に案内していただき、心身共にリフレッシュができた一日でした。
Group Meeting with Nurses
サンフランシスコで看護師として働いている方々との懇談会に参加しました。そこに参加していた看護師の方々は、国籍、年齢、働いている年数、場所も実に多様であり、私たちの質問に対して様々な視点から答えてくれ、アメリカの看護を知る貴重な機会となりました。
また、話の中で、みな看護師としてやりがいを感じながら働いているということを強く感じ、自分自身もこのように輝きながら患者に希望を与えられる看護師になりたいと改めて思いました。
February 22 2015|サンフランシスコ市内視察
サンフランシスコ市内を視察し、サンフランシスコの街並みや文化に触れました。
February 22 2015|サンフランシスコ市内視察
サンフランシスコ市内を視察し、サンフランシスコの街並みや文化に触れました。
街中にいる人一人ひとりの服装や振る舞いなどからそれぞれの個性が感じ取られました。多様性というものが表れている様子がアメリカの国民性を示していました。
Lombard Street
世界で最も曲がりくねった道として知られるロンバードストリート。
坂の上からはサンフランシスコの街並みや港、海岸線などが見えて見晴しの良いものでした。坂の下から見上げると、その道の横にある木や花が道を彩っており、華やかな風景となっていました。
坂ひとつをこのように変えてしまう点に、アメリカの創造性を感じることができました。
Fisherman's Wharf
サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフは、多くの人で混雑しており、とても賑やかなものでした。
港付近にはサンフランシスコの有名な老舗チョコレート店であるギラデリ・チョコレート・カンパニーもあり、サンフランシスコの食文化に触れることができました。
研修後半に向けて英気を養うこともできました。
Golden Gate Bridge
サンフランシスコ市とサウサリート市をつなぐゴールデンゲートブリッジ。
夕日に照らされるその光景は、まさに黄金色であり、荘厳なものでありました。
周りは山や海に囲まれており、遠くには街の灯りも見え、この橋が自然と人の文化を繋げ調和しているようで、とても感慨深いものがありました。
February 23 2015|精神疾患療養施設を視察
午前中は、コミュニティに根差したトランジショナル精神療養施設を視察しました。
February 23 2015|精神疾患療養施設を視察
午前中は、コミュニティに根差したトランジショナル精神療養施設を視察しました。
UCSFの学生と共に昼食をとり、午後は小児肥満、小児のペインマネジメントについての講義が行われました。
夜は、UCSFシグマ・セタ・タウ(看護国際名誉学会)のレセプションに招待していただき、看護界のトップの方たちと懇談させていただきました。
Schrader House
シュレダーハウスという成人を対象としコミュニティに根差したトランジショナル精神療養施設を視察しました。社会復帰を目指し、施設利用者とコミュニティの繋がりを大切にしていました。
利用者は、自らの意思でスタッフに断りなく地域に戻ることが出来ます。
シュレダーハウスでは、“ハドル”と呼ばれる看護師や医者、ソーシャルワーカー等の各専門職者が集まり、利用者に対する治療方針を話し合うミーティングが行われます。
Lecture in UCSF
午後はUCSFにてカレン・デュダスタッド先生による小児肥満とリン・リン先生による小児のペインマネージメントについての講義が行われました。アメリカでどのくらいの小児が肥満に陥っているのか、またそれに対してどのような取り組みがされているのかを学びました。
そしてリン・リン先生の“不確かさ”というテーマの小児ペイマネジメントの講義は興味深いものでした。
Sigma Theta Tau International at UCSF Reception
シグマ・セタ・タウインターナショナル支部のレセプションに招待していただきました。
シグマ・セタ・タウとは、米国インディアナ大学で1992年に創設され、インディアナポリスに本部を置く看護国際名誉学会であり、看護界では国際看護師協会(ICN)に次いで2番目に大きな組織です。
看護界のトップの方たちと食事を交えながら懇談させていただきました。
February 24 2015|講義とUCSFベニオフ小児病院視察
今日の最初の講義は、“看護における看護実践の転換”、そして次の講義は、“他職種教育と実践モデル”についてでした。午後は、UCSFベニオフ小児病院を視察しました。
February 24 2015|講義とUCSFベニオフ小児病院視察
今日の最初の講義は、“看護における看護実践の転換”、そして次の講義は、“他職種教育と実践モデル”についてでした。午後は、UCSFベニオフ小児病院を視察しました。
Lectures
これまでの看護師をとりまく様々な環境や歴史そして、これからの患者の満足度を高めていくため、根拠を押さえながら、看護師を囲む労働環境や他職種との連携の重要性やその教育方法を学びました。
UCSF Benioff Children’s Hospital Visit
UCSFベニオフ子供病院の院内には、子供の不安や恐怖が少しでも緩和するような工夫が見られました。
例えば動物の写真の書いてある壁や、子供たちが走り回れるガーデン、音楽スタジオなどや、親の負担を少しでも軽減しやすいような工夫が随所に凝らして有りました。
病院は単に病気を治療する場所ではなく、患者やその家族の心もケアしていくべき場所であるということを改めて感じました。
February 25 2015|リサーチプレゼンテーション
February 25 2015|リサーチプレゼンテーション
Preparation for presentation
午前中は、UCSFにて各々プレゼンテーションの準備を行いました。
Presentation
研修参加メンバー全員がこれまでの学びの成果を発表するプレゼンテーションを行いました。
一人終えるごとに質疑応答を行い、お互いのリサーチへの理解を深めました。
Farewell Party
ジーン・オコンネル先生、べサニー・フェニックス先生らに感謝の気持ちを込め、佐々木先生、忍田先生と共に、全員でフェアウェルパーティを行いました。みんなで作成した色紙をプレゼントし、大変喜んでいただけました。
最後に交わした熱いハグは、今まで苦悩を乗り越えてきたメンバーにとって何にも代えがたいものになりました。
February 26 2015|ロサンゼルスへ出発、SUA訪問
SFからLAに出発!大自然に囲まれたアメリカ創価大学(SUA)の広大なキャンパスに感動しました。キャンパスツアーの後、羽吹学長と懇談会を持って頂きました。
February 26 2015|ロサンゼルスへ出発、SUA訪問
SFからLAに出発!大自然に囲まれたアメリカ創価大学(SUA)の広大なキャンパスに感動しました。キャンパスツアーの後、羽吹学長と懇談会を持って頂きました。
Training Course in LA
感謝と感動の学びの地であるサンフランシスコにお別れをして、ロサンゼルスに飛び立ちました。
歴史ある街並みと坂が多くあるサンフランシスコから一変、ロサンゼルスは有名なハリウッド、ビバリーヒルズ、サンタモニカなどがある大都市です。
そして創価大学の姉妹校である、Soka University of America (SUA)があります。
Longing for SUA
中学生の頃から憧れていたSUAへ行くことができました。大自然に囲まれた広大なキャンパスには最高の教育環境が整っていることを実感しました。
図書館の一部は24時間開館しており、思う存分学ぶことができます。
SUAのいたるところに寄付者の方の名前が刻まれており、多くの方のサポートで創価教育が行われていることがわかりました。またそこで学ぶ学生も「恩返しをしたい」との思いで必死に学んでおり、大変に触発をされました。伸び伸びと学ぶことができるSUAにより一層憧れを感じました。SUAの学生は3年次に留学をしますが、その人たちへの応援メッセージを書くコーナーがカフェテリアにあり、お互いに支えあい学んでいることがわかりました。日本とアメリカは遠く離れていますが、創価教育を学ぶ同志としてSUAの学生に負けないくらい勉学に励もうと決意することができました。
Heart shaken sunset
Laguna Beachに行き、見事な夕日に大感動しました!そして、世界一の看護学部を建設するとの決意を新たにすることができました。
そしてこの研修に参加させていただいたことへの感謝とまた力をつけてアメリカに帰ってくると語り合いました。
この研修は一人では乗り越えることができません。仲間がいたからこそ困難なことにも負けずに前進することができました。
仲間とはこの研修に参加した7人の学生だけではなく、1期生、2期生、看護学部を目指してくれる未来の後輩、そして支えてくださる全ての方々です。
恩返しをするために努力を続けます。雄大な夕日とこの時の想いは生涯忘れません!!
February 27 2015|ゲッティセンターやサイモン・ウィーゼンタール・センター訪問
アメリカ研修最終日。J. ポール・ゲッティ美術館や、サイモン・ウィーゼンタール・センターを訪れました。
February 27 2015|ゲッティセンターやサイモン・ウィーゼンタール・センター訪問
アメリカ研修最終日。J. ポール・ゲッティ美術館や、サイモン・ウィーゼンタール・センターを訪れました。
歴史を学ぶ事や美術に触れることは貴重な機会であり大事なことだと思いました。UCLAにも訪れ、広大なキャンパスに圧倒されました。
また、グリフィス天文台に行き、LAの夜景を一望することができました。沢山の方に支えていただき、最後の最後まで充実した忘れられない研修となりました。
Getty Center
ゲッティ・センターとは石油王のJ. Paul Gettyによって作られた美術館です。
この美術館はサンタモニカ山脈国立リクリエーション地域に立地し、LAの街を一望することができます。私たちが訪れた期間には、Turnerの展示を主に行っており、Gogh やMonetによる作品をはじめとした沢山の有名な美術品を見る事ができました。また、どの角度から見ても、ずっとこちらを見つめている絵は非常に印象的でした。
展示される絵に応じて部屋の壁紙やランプなどが変わっており、ヨーロッパの貴族の生活を創造させる部屋もありました。本物の美術品に触れ、感性を磨き、学びを深める、非常に良い機会になりました。
Simon Wiesenthal Center
展示や実際の映像を通して、ナチス・ドイツの大虐殺・ホロコーストを学びました。何気ない平和な日常が一変し、人々がお互いに傷つけあい、町の雰囲気は変わり果てて行く映像が映し出されており、本当に怖く、衝撃を受けました。今までホロコーストの名前は聞いた事があったものの、深く知る機会は無く、今回の展示を通し、さまざまな事を考える機会をいただきました。正しい思想をもつことの大切さや、政治に関心を持ち、慎重に政治家を選んでいくことの重要性を感じました。
ホロコーストの歴史を学び、もっと知りたい、また、知らなければならないと思い、これからも学びつづけていきたいです。
Griffith Observatory
グリフィス公園の中にあり、山の山頂にあるグリフィス天文台。中に入ると展示や映像が沢山あり、地球や宇宙の事を見て、触って学ぶことができました。まるで宇宙空間にいるようでした。日が落ちた後、グリフィス天文台からはLAを一望することができ、それはシャッターには収まらないくらい、美しく感動的な光景でした。
RESEARCH REPORT
7名の参加者による、リサーチレポートを掲載しています。
終末期の患者とその家族を尊重した看護師の関わり方
天笠 もも
終末期の患者とその家族を尊重した看護師の関わり方
天笠 もも
終末期における看護師は"imfomation broker," "advocator," "suoporter"という3つの役割を果たしていることが明らかとなった。終末期において患者や家族、他職種とのコミュニケーションが非常に重要である。
Field Research
現地では、UCSFにて緩和ケアの授業を受け、さまざまな医療施設で緩和ケアの専門看護師や終末期ケアで働く看護師にインタビューを行った。
終末期における患者家族の意志を尊重した看護をどのように行っているか、また事前意思決定における看護師の関わり方を聞いていった。
インタビューで得た情報を、先行研究を元に、カテゴライズしていった。その結果、看護師は情報仲介者、代弁者、支持者という3つの役割になっていることが明らかとなった。
Learning
終末期医療における治療方針が患者と家族間で異なることが頻繁にあり、その中で、看護師は時間をかけて話し合いを行っていった。
何度も何度も家族会議を開き、患者や家族の思いに耳を傾けていると言っていた。
こうすべきだとか、こうしてはいけないと否定するのではなく、患者や家族がありのままの思いを表出できるように関わっていた。
事前に意思決定を行う際、患者の思いを先に聞き、その人がどうしたいかを聞く前に、その患者さんとはどんな人なのかということを知っていくことが大切だとある看護師から教えていただいた。
トータルペインの緩和をしながら、その人らしく最後まで生を全うできるよう、他の医療従事者と連携し看護を提供していた。
また、3つの役割は患者家族を尊重した医療を行う上でどれも欠かすことのできない重要な役割であると感じた。
さらにアメリカの高度実践看護師とのインタビューを通し、経験豊富で知識が多く、技術の高い看護師は、より患者・家族の意志を尊重した看護ができるということを強く感じた。
アメリカの看護師による肥満を予防するための健康教育
片岡 明日香
アメリカの看護師による肥満を予防するための健康教育
片岡 明日香
ここ30年で、肥満患者が急激に増えたアメリカにおいて、看護師は肥満予防に対してどのような健康教育を行っているのか、看護師へのインタビューや講義等を通して現状を調べた。
Field Research
アメリカにおける看護師は最も誠実で倫理的であるとの評価を国民から得ている。
更に、最も人数の多い専門職であり国民に与える影響は大きいと考える。
そこで、UCSFでの講義や病院視察、ナースプラクティショナーやパブリックヘルスナースへのインタビューを行い、これらを通して看護師の教育者としての役割やどのように肥満患者に対して行動変異を促していくのか等の現状を明らかにしようとした。
Learning
ナースプラクティショナー(以下NP)とパブリックヘルスナースへのインタビューを通して、肥満については非常にセンシティブなトピックであることから彼らを決して非難せず、意思決定をサポートしていくことが彼らの行動変容を促すことに繋がることがわかった。
そして、NPの役割として健康教育が重視されており、医者や他職種と比べて患者との健康教育の時間が多く取れることがわかった。
更に、サンフランシスコの取り組みとして、日曜に公園に行きエクササイズを行うプログラムが推奨されていることがわかった。
今回のリサーチを通して、看護師の献身的で患者中心のケアを行おうとする姿勢は看護師への信頼感を高めているのではないかと考える。
更に、肥満予防については、ここ30年で急激に増加したアメリカ肥満問題の背景が原因で彼らが彼ら自身の体をコントロールできない事態に陥っているかもしれないということがわかった。
ただ彼らの行動変容にアプローチしているだけでは効果的ではないのかもしれない。
患者との会話における“沈黙”に対する看護師の視点の定義
村上 明日香
患者との会話における“沈黙”に対する看護師の視点の定義
村上 明日香
患者満足度向上のため、会話中の沈黙についての看護師の認識を調査した。
すると、看護師は沈黙を有用なものとしてみなし、正しくその意味をとらえようとしていた。ここから看護師の視点からの沈黙を「コミュニケーションをする者の間で交わされる非言語であるが、重要なメッセージを伝えるもの」と定義した。
Field Research
患者さんの精神的満足を高めることは看護師の役割の一つである。
ある調査で、看護師は不適切な人員配置により十分にコミュニケーションが取れていないことが分かった。
コミュニケーションを効果的に用いれば患者満足度は上昇すると考え、非言語コミュニケーションの一つである沈黙について看護師の認識を調査することとした。
実際に看護師として働いた経験のある人に会話における「沈黙にはどのような意味があると考えるか」「沈黙がおこったときには看護師はどのように振舞うか」を中心にインタビューを行った。
すると「沈黙には何らかの意味がある」というような内容がすべての回答者から得られた。
とくに、沈黙がもつ意味を的確に分析し、患者がその意味や感情を表出することを待ち、時に助けることが重要であるということが分かった。
Learning
このリサーチから、沈黙を「コミュニケーションをする者の間で交わされる非言語であるが、重要なメッセージを伝えるもの」と定義をした。
看護師は、患者中心のケアを基本として、沈黙がどのような意味を持つのかを注意深く見極め、患者が感情を表出することを待つ。
その方法は状況や患者によって異なるが、その状況に応じて最善の方法を選ぶことが必要となる。それによって、看護師と患者の関係は新たな信頼関係の段階を築くことが出来る。
看護師がコミュニケーションのひとつとしてユーモアを使っているのを明らかにする。
野尻 晴華
看護師がコミュニケーションのひとつとしてユーモアを使っているのを明らかにする。
野尻 晴華
ユーモアの使用には勤務体制や文化が影響していることが考えられた。さらに必ずしもユーモアを使う事が良いのではなく、患者さんの状態が影響することがわかった。
Field Research
ストレスを低下させたり、ポジティブに物事をとらえたりすることを助けると言われている「ユーモア」についてリサーチを行った。
リサーチとビック:看護師がコミュニケーションの一つとしてユーモアを使っているのか。米国の看護師へのインタビューを行った。(内容)「コミュニケーションのひとつとしてユーモアを使用していますか」「ユーモアの効果を知っていますか」アメリカでは人間関係を築くためにユーモアを使用していることがわかった。好意的な反応が見られたがユーモアを使用することが必ずしも良いことではなく、患者さんの状態(泣く、怒る)や立場を理解することが大切であることがわかった。
Learning
米国では、人間関係を築くためにユーモアを使用していることがわかった。しかし必ずしも良い影響だけではなく、ユーモアの効果は患者さんの疾病や状態(泣く・怒る)に左右されると言っていた。また看護師と患者の立場は違うため、看護師のユーモアの押しつけは逆効果であり、どこまでも患者に寄り添い、患者の立場で、同じ目線で物事を考えることの重要性に気づくことができた。
チャイルドライフスペシャリスト
住田 久美
チャイルドライフスペシャリスト
住田 久美
チャイルドライフスペシャリストとは小児科で働いており、子どもの痛みを取り除き、子どもと家族をサポートするスペシャリストである。
Field Research
UCSFベニオフ小児病院を見学させていただく機会があり、お会いすることができないと思っていたチャイルドライフスペシャリスト(CCLS)にお会いすることができた。
そして直接インタビューする機会を与えてくださった。
インタビューでは、自分の病気を受け入れられない子どもとの直接的な関わり方・子どもにとって一番つらい治療・CCLSの技術・家族との関わりについて聞くことができた。
彼女の子どもや家族に対する思いやりと包み込むような優しさを感じ、とても刺激を受けた。
Learning
子どもたちは入院すると、彼らの色々なコントロールを失ってしまうため、年齢や個性に合ったやり方で感情を表現できるようにしてあげることがとても大切である。子どもたちにとって一番つらい治療は、鼻から管を通す経鼻チューブである。その理由としては、息ができないように感じてしまうからである。そのような痛みを伴う治療を行うとき、シャボン玉やiPadを用いて、痛みから気を逸らすことのできるようにする。家族との関わりでは、子どものいないところで今抱えている不安をすべて吐き出してもらい、アドバイスをしたり、病院に在籍しているソーシャルワーカーと連携し、退院後のサポートをしたりしている。
Learning
子どもたちは入院すると、彼らの色々なコントロールを失ってしまうため、年齢や個性に合ったやり方で感情を表現できるようにしてあげることがとても大切である。子どもたちにとって一番つらい治療は、鼻から管を通す経鼻チューブである。その理由としては、息ができないように感じてしまうからである。
そのような痛みを伴う治療を行うとき、シャボン玉やiPadを用いて、痛みから気を逸らすことのできるようにする。家族との関わりでは、子どものいないところで今抱えている不安をすべて吐き出してもらい、アドバイスをしたり、病院に在籍しているソーシャルワーカーと連携し、退院後のサポートをしたりしている。
患者のレジリエンスを高めるための看護ケアについて
高橋 友里奈
患者のレジリエンスを高めるための看護ケアについて
高橋 友里奈
先行文献を元に、アメリカでは実際に患者のレジリエンスを引き出すためにどのような看護ケアを行っているのか、看護師に対してインタビューを行った。
Field Research
現在病院で働いている米国看護師7人に対して、①患者のレジリエンスを高めるために看護ケアを行っているか、②それはどのような看護ケアか という質問を主に、半構造式インタビューを行った。
また、先行研究の結果から、「レジリエンスを高めるケアには、あなたは~ができるということを伝える”I can”因子、あなたはこういう人間であると認識させる“I am”因子、あなたにはこのような存在がいるということを認識させる”I have”因子という大きく3つに分かれた支援の方法がある。」(Grotberg, 2003)ということが明らかとなった。
Learning
インタビューの結果、アメリカでは3つの要素の中で”I can”因子に含まれる看護ケアが、患者のレジリエンスを高めるケアとして日常で一番多く提供されているということが明らかになった。
アメリカでは児童虐待予防のために、家族と社会の関係性を重要視しているのか
浦田 博之
アメリカでは児童虐待予防のために、家族と社会の関係性を重要視しているのか
浦田 博之
アメリカでは児童虐待への予防策として社会からの積極的な関わりがあることが文献検討により考えられる。フィールドリサーチにより、実際に社会から家族への介入を重要視しているのか、それは日本にとって良い影響を与えるものであるのかを明らかにする。
Field Research
専門の異なる看護師3名へのインタビューによって、アメリカの児童虐待への予防の実情を調べた。
インタビューの内容としては、「児童虐待を防ぐためにどのような観点から、どういう実施を行っているのか」、「児童虐待を防ぐためには、家族と社会が互いに関わり合える関係性を築くことが重要であるか」の2つを主な質問とした。インタビューの結果、専門が異なる看護師の中においても、児童虐待に対する介入への考え方、実施に内容が異なる点がある結果となった。
また、家族と社会の関係性は児童虐待を防ぐためには重要であるという回答を3名の看護師全員が述べた。1名の看護師は、看護哲学とアセスメント能力もまた児童虐待に大きく役立つという意見を述べた。
Learning
フィールドリサーチの結果から、多様文化国というアメリカの特徴が一人ひとりの専門性を尊重するという形で、医療や看護にも大きな影響を及ぼしていること、それが同じ職業の中でも、より多角的な視点から患者一人ひとりを支えることを可能にしていることが明らかとなった。
また、家族の要求だけでは無く、社会からの関わりもアメリカでは重要視されていることも明らかとなった。これらの特徴は、日本にも、より患者の個別性に合わせた医療や看護をもたらすことができると考えられる。互いの文化の尊重の重要性、グローバルマインドがもたらす医療や看護への影響を学ぶことができた。