Vol.105

感染症からアフリカの子どもたちを守る ―「Waka Waka Kenya」の挑戦

西松和郎(にしまつかずお)経済学部経済学科4年
飯田美幸(いいだみゆき)経済学部経済学科4年
山本結月(やまもとゆづき)国際教養学部国際教養学科4年
前沢有咲(まえざわありさ)国際教養学部国際教養学科4年

 アフリカ地域などに広がる感染症「スナノミ症」に苦しむ人々に治療や予防の知識を届けようと、創大生による学生NGO「Waka Waka Kenya(ワカワカケニア)」がケニアの農村でプロジェクトを展開しました。メンバーは8~10カ月にわたるケニア留学中、スナノミ症が蔓延する村に通い、感染症だけでなく、貧困、差別、教育など多様な問題を目の当たりにしたといいます。治療の手応えとともに、支援の難しさにも直面した4人のメンバーに、活動の経緯や現地での取り組みなどについて聞きました。

Waka Waka Kenyaの概要と創設したきっかけを教えてください。

西松 私たちは、2025年に創大からケニアへ交換留学する学生4人で結成した団体です。ケニア留学が決まった後、私が個人的に現地の課題を調べる中でスナノミ症*を知り、病気が進行すると歩けなくなるだけでなく、学校などで差別されるという現状に強い憤りを覚えました。自分が取り組むべき課題だと思う反面、一人では立ち向かえない大きな課題だとも感じたため、同じ時期にケニアに留学する仲間に声を掛けることにしました。

スナノミ症患者に治療薬を塗布する様子

*1ミリほどの小さなスナノミが足の裏などの皮膚に寄生することで起きる感染症。進行すると歩行困難、手脚の壊死、脳機能低下などを引き起こす可能性があるが、靴を履くことなどで予防が可能。アフリカなど熱帯の貧困地域で感染が拡大する一方、政府機関による有効な対策は行われず、WHOが「顧みられない熱帯病」の一つに挙げている。

 

飯田 私たち4人は、全員が貧困や途上国支援に関心を持って学んでいます。創大のゼミやGLC(GLOBAL LEADER COLLEGE)などで顔を合わせてはいましたが、しっかりと関係性ができたのは、西松君に「ケニアでスナノミ症の問題解決に一緒に取り組まないか」と提案されたことがきっかけでした。私たち3人もスナノミ症の知識はほとんどなかったのですが、西松君の話を聞いた時、同じように理不尽さや憤り、悲しみを感じ、自分にできることがあるなら行動を起こしたいと参加を決めました。

スナノミ症治療キャンペーンの様子

「Waka Waka Kenya」とはどんな意味ですか。

前沢 「Waka Waka Kenya」という団体名は私がアイデアを出しました。2010年のFIFAワールドカップ公式ソングだった「Waka Waka(This time for Africa)」という曲が好きで、調べてみると歌詞の中にカメルーンの掛け声で「進め!行け!」という意味のフレーズがあり、現地の人と前進していこうという私たちの気概にピッタリだと思って提案しました。同時に、Waka Wakaがスワヒリ語で「光る、輝く」という意味を持つことも知り、顧みられていない苦しみに光を当てる存在になりたいというチームの願いとも重なりました。日本語でも「若」を連想させ、私たちのフレッシュさや平均年齢の若いアフリカも象徴する名前だと思っています。

治療中の子どもたちの様子

活動をするにあたり、創大のSDGsグッドプラクティス*の助成のほか、学外の企業や団体などからも協力を受けたと伺いました。

西松 SDGsグッドプラクティスは、私たちの活動にフィットする制度でしたから、助成にはとても感謝しています。この制度がさらに拡大すれば、創大生が自分たちで社会課題を見つけ、行動を起こす流れが加速すると思います。さらに、クラウドファンディングや団体・企業との連携にも取り組み、医療・衛生メーカーのサラヤ㈱様に治療薬や医療資材を、靴専門店の㈱チヨダ様には感染を防ぐための靴を提供していただきました。

第4回SDGsグッドプラクティスの表彰式

*「SDGs」の達成を目指して、本学学生による貢献度の高い取り組みの表彰や、将来有望なアイデアへの助成、実現支援を行うことを目的に年1回開催。学内外の枠を超え、社会課題の解決に挑む学生の実践を広く奨励するもの。


山本 スナノミ症の研究や治療活動に取り組んでいる団体を探し、ヒアリングも行いました。私たちが考えている活動が本当に効果があるのか、専門的な立場から意見をいただき、実現性を高めることができました。また、クラウドファンディングを広報するため、さまざまなアフリカ関連のイベントに参加し、地道に普及活動をしました。

ケニアでは具体的にどのような活動をしたのでしょうか。

西松 スナノミ症が蔓延するケニア西部のエスンバ村を月1回ペースで訪問し、11月と4月には現地のNPOと連携して治療プロジェクトを実施しました。そのほか、関連団体の視察、メディアでの発信、効果を検証するアンケート調査などのデータ収集も行っています。2度の治療プロジェクトでは、スナノミ症専用治療薬による治療のサポート、予防のための靴・石鹸の配布や土床のセメント化、紙芝居などを使った啓発活動を展開しました。

現地でのアンケート調査の様子

活動を通して、特に心に響いたことを教えてください。

前沢 患者の方々に直接「ありがとう」と伝えてもらえた時は、とても感動しました。また、私たちが開いたサッカーイベントで、治療した子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿を見て、やってきたことは無駄ではないと実感しました。

「スナノミ症が治ったらサッカーをしたい」という願いを込めた絵
スナノミ症が治った子供たちによるサッカー大会の様子

山本 エスンバ村には水道もなく、道路も整備されておらず凸凹ですが、農地がたくさんあり、養鶏が得意なおばあちゃんや石鹸を作る女性がいて、人々でにぎわうマーケットもありました。日本と比べて物質的に豊かではなくても、創意工夫や優しさ、人の繋がりなど、精神的な豊かさを感じることが多くありました。

飯田 1度目のプロジェクトで治療や床のセメント化を行った患者さんが、きれいに治った足を見せてくれた時は、思わず涙が出るような感動がありました。一方で、一度完治しても予防できずに再発してしまうなど、問題の根深さも目の当たりにしました。

住宅のセメント化と治療を実施した患者さんと

西松 患者さんが涙ぐみながら喜んでくれた話を聞いた時は、今まで取り組んできたどんなことよりも心の充足感を覚えました。ただ、300人以上を治療することができたものの、まだまだ患者は多く、与えられるインパクトの限界も感じました。これまで大学の教室でさまざまな社会課題解決について議論してきましたが、実際にアクションを起こすのは人生でこれが初めて。難しいこと、うまくいかないこともありましたが、その過程も含めて本当に大きな学びが得られましたし、すべてが楽しかったです。

治療後に靴を履く子どもたち

活動中はトラブルもあったのでしょうか。

西松 「トラブルがあった」と言うより、「トラブルしかなかった」と言うのが正しいかもしれません(笑)。特に印象的だったのは、情報共有の難しさです。現地のスタッフに依頼したことが正しく伝わっていなかったり、アンケートの質問に回答してもらえなかったり、想定通りには進まないことが多く、頭を悩ませました。

山本 難しさという点では、政府機能とデータの欠損が印象的でした。首都ナイロビから遠く離れたエスンバ村周辺はまだインフラも行き届かず、スナノミ症患者の数も正確には把握できていません。データがないために物資が適切に配分されず、対策の効果検証も難しいという現実があることを知りました。

治療前に足を洗う子どもたち

飯田 私が担当した中では、プロジェクトで配布する靴に関するトラブルが印象に残っています。ケニア人の足のサイズ感が把握しきれず、事前にサイズを調べて調達しても、スナノミ症で足が腫れていて合わなかったというケースもありました。心地良く履いてもらえる靴を届けるのは難しかったですね。

患者さんのお宅へ家庭訪問する様子

前沢 靴に関しては、そもそも村の人に靴を履く習慣がなく、渡しても「貴重なものだから汚したくない」となかなか履いてもらえないという問題もありました。啓発活動をしても長年の習慣や考え方は簡単には変えられず、行動変容の難しさを痛感しました。アウトサイダーである自分たちがどこまで問題に干渉すべきか、モノを提供する一方的な支援では本質的な問題解決につながらないのではないか、とジレンマを感じましたね。

ケニアの地元ラジオおよびテレビからインタビューを受ける様子

交換留学先での大学生活の思い出は?

山本 出会う人がみんな本当に温かくて、とても幸せな留学生活でした。将来の進路や授業の難しさに悩み、落ち込んでしまうこともあったのですが、そんな時は友達が「あなたが好きなマンゴーを買ってきたよ」と差し入れをくれたり、授業後に先生が「変えられることに目を向けて、今を楽しく子どものように生きていきなさい」と声を掛けてくださったり、周りの人の優しさに助けられました。できることならまた戻りたいくらい、本当に楽しかったです。

現地NGO代表のエドワードさんと

飯田 大学があるナイロビは交通渋滞が酷く、乗合バスがものすごく大きな音で音楽を流していたりするカオスな雰囲気なのですが、エスンバ村は高い建物も街灯もなく、夜は美しく壮大な星空と静けさに包まれます。そんな風にケニアのいろいろな表情を見られたことも面白かったです。

エスンバ村の星空

今後の活動について教えてください。

西松 メインの活動は、ケニア留学を控えた後輩メンバーに引き継ぎ、私たちは日本でのスナノミ症啓発活動、継続的な資金調達方法の確立、現地で実施したアンケート調査のデータを用いた論文発表などに取り組んでいきます。さらに団体としては、スナノミ症に限定することなく、現地の方々が本当に困っていることに目を向け、「支援」から「共創」「自立」のフェーズへと活動を展開していくことを目標としています。

前沢 論文は、主に私と山本さんが担当しています。現地で収集したデータを分析し、活動の効果を検証して論文にまとめる予定です。国際学会での論文提出、さらに政策提言も視野に執筆を進めています。この1年間の活動では、私たちが目指す共創のフェーズにはほど遠く、靴の配布に意味があったのか、啓発活動は彼らの心に残っているのかなど、不安も多くあります。今回の活動の実質的な効果が分かるのは何十年後かもしれませんが、それまで自分の故郷を想うように現地の人々に寄り添い続けていきたいです。

治療後に靴を提供する様子

創価大学への進学に興味を持つ後輩たちに、メッセージをお願いします。

西松 創価大学には「英知を磨くは何のため 君よそれを忘るるな」という創立者からの指針があります。私は今就職活動中で他大学の学生と話す機会も多いのですが、優秀な人は創大以外にもたくさんいると感じる一方、その優秀さを「誰のため、何のために使うか」まで考え、言葉にできる人はそう多くありません。創大生には「何のために」をしっかり持って頑張る人がとても多く、そこが創大の魅力だと思います。ぜひ創大で学び、その学びでどう社会に貢献していくのかという発想を吸収してほしいと思います。

山本 創大は、本気で人のために行動できる人がいる大学です。もし今の自分にそのマインドセットがなくても、創大にいるだけで周りの人の影響を受け、気が付いたら自分も本気で人のために行動できる人になっているはずです。また、自分以上に自分の可能性を信じてくれる人がたくさんいて、その温かさに私自身も何度も救われました。人のために行動したいと思う人が輝ける創大で、ぜひ学びの先にある世界を自分の目で見て、人生の原点になるような経験をしてほしいと思います。

前沢 創大はアフリカと長年交流を続け、アフリカの大学との交換留学制度がある数少ない大学です。さらに、「何のため」を追い続ける精神を持ち、ただアフリカへ行くのではなく、世界の人々のため、自分の成長のためといった目的意識を持って留学し、行動できる学生が多いことが強みだと思います。ぜひ創大で学び、挑戦し、世界のリアルに触れてほしいですね。

飯田 高校時代まで夢物語でしかなかったアフリカ留学を実現できたのは、創大に入学したからこそだと確信しています。創大に入り、Waka Waka Kenyaに参加したことで、自分の未来を大きく切り拓くことができたと感じています。ここには親身になって応援してくれる先生方、一緒に本気になってくれる仲間、やりたいことに向かって全力で挑戦し、成長できる環境がそろっています。みなさんも創大で自分の可能性を拓いていきましょう。

靴を受け取って笑顔を見せる子どもたち

<経済学部経済学科4年>

西松和郎

Kazuo Nishimatsu

[好きな言葉]
大学は、大学に行けなかった人のためにある
[性格]
野心的で好奇心旺盛だけどめちゃくちゃ冷静
[趣味]
初めての何かに挑戦すること(ヒッチハイク・事業開発・皇居ラン)
[最近読んだ本]
この一冊ですべてわかるーマーケティングの基本/安原智樹

<経済学部経済学科4年>

飯田美幸

Miyuki Iida

[好きな言葉]
英知を磨くは何のため 君よ それを忘るるな
[性格]
目的志向、素直、感受性豊か
[趣味]
散歩、ピアノ
[最近読んだ本]
大いなる人間復興への目覚め/池田大作 アクシニア・D・ジュロヴ

<国際教養学部国際教養学科4年>

山本結月

Yuzuki Yamamoto

[好きな言葉]
You are capable enough to pursue what you want
[性格]
「何のため」をたくさん考える
[趣味]
編み物・風景を撮ること
[最近読んだ本]
開発経済学 実証経済学へのいざない/高野久紀
貧困と闘う知/エステル・デュフロ

<国際教養学部国際教養学科4年>

前沢有咲

Arisa Maezawa

[好きな言葉]
Ubuntu(「あなたがいるから私がいる」という意味のアフリカの伝統的な思想)
[性格]
利他の精神を最大のエネルギーにする楽観主義な性格
[趣味]
映画・ドラマ鑑賞
[最近読んだ本]
The Samurai’s Garden/Gail Tsukiyama
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