丹木の歳時記2025 文月(四)

全国で「クビアカツヤカミキリ」の被害が拡大しています。そう聞いても、実物を見たことがなく、名前すら知らなかったという方が多いかもしれません。しかしこのカミキリムシは繁殖力が非常に強く、幼虫が桜や梅などの樹木の内部を食い荒らして枯死させるため、環境省は2018年に特定外来生物に指定しました。すでに八王子市内でも目撃例があり、万一見つけた場合はその場で捕殺するよう求められています。もちろん飼育は厳禁で、違反すれば罰金や懲役といった刑罰が科せられます。
実は、これとよく似た例が100年以上前の大正初期にもありました。日本の昆虫が北米で大繁殖し、農作物に深刻な被害を与えたのです。時は第一次世界大戦中の1916(大正5)年。夏目漱石が胃潰瘍のため49歳で死去し、アインシュタインが一般相対性理論を発表した年でもあります。
この年、アメリカで大発生したのが、「ジャパニーズ・ビートル」と呼ばれ恐れられたマメコガネです。日本では天敵が多く、大発生することはありませんが、天敵のいない北米では爆発的に繁殖。成虫はブドウや豆類の葉を食べ、幼虫は根を食べるため、農作物に甚大な被害を及ぼしました。
元の生息地では“ただの昆虫”でも、環境が変われば“害虫”になってしまう。虫に悪意はありませんが、かといって野放しにするわけにもいきません。もしキャンパス内でクビアカを発見した場合は、心を鬼にして捕殺するしかなさそうです。












「丹木の歳時記」への感想はこちらまで
E-mail:publicrelation@soka.ac.jp
Facebookの「いいね!」やツイートも執筆の励みになります。
Instagramでも丹木の里の四季折々を紹介しています。創価大学公式アカウントはこちらから