丹木の歳時記2026 文月(三)
「ミネルバのフクロウは、夕暮れがくるとはじめて飛び立つ」。ドイツの哲学者ヘーゲル(1770-1831)が著書『法の哲学』の序文に記した言葉です。ミネルバとはローマ神話の知恵と武勇の女神。そのフクロウが夕暮れになって飛び立つという比喩は、私たちが生きる時代の意味を深く理解できるのは、その時代が成熟した後であることを示しています。
身近な例でいえば、大学を卒業してかなりの年月が過ぎて初めて、学生時代の学びや出会いの意味に改めて気づくということにも通じるでしょう。
さて、先日、中央図書館の前でフクロウの羽根らしきものを見つけました。フクロウは夜行性なので、昼間にキャンパスで見かけたことはありません。どこから飛んできたのか、それともキャンパスの雑木林にひっそり暮らしているのかは分かりません。
フクロウの主食はアカネズミやヒメネズミなどの野ネズミです。フクロウが暮らせるということは、それを支えるだけの餌となる生き物が豊富であるということでもあり、生態系の豊かさを物語っています。
フクロウは古くから知恵の象徴とされてきました。夜の図書館を訪れて万巻の書を紐解き、帰り際にそっと一枚の羽根を残していった――そんな想像を誘う出来事でした。
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