丹木の歳時記2025 霜月(四)
今から55年前の晩秋に世を去った作家がいます。三島由紀夫です。終戦から5年後の1950年に金閣寺が放火によって焼失する事件が発生。1956年、三島はこの放火事件を題材にした『金閣寺』を発表しました。三島の代表作となったのみならず、近代日本文学を代表する傑作とされています。
この小説をもとにした1958年の映画「炎上」は市川崑監督作品。主演は八代目市川雷蔵で、11月8日に92歳で亡くなった仲代達矢氏も出演しています。
三島はノーベル文学賞の最有力候補にも挙げられていましたが、1968年に日本人として同賞を初受賞したのは師と仰いだ川端康成でした。
この頃から三島の行動は過激化し、民間防衛組織『楯の会』を結成。市ヶ谷の自衛隊駐屯地に乱入し、割腹自殺したのは1970年11月25日のことでした。日本の行末を憂い、決起を呼びかけたものの、呼応する自衛隊員は誰一人いませんでした。時代錯誤ともいえる手段で何を訴えたかったのでしょうか。
存命なら今年で100歳。たぐいまれな才能の持ち主が国家や時代と向き合う他の方法はなかったのか――その作品を手にすると、改めてそう思わざるを得ません。
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