丹木の歳時記2026 葉月(二)
以前、日本の学者がイギリスの大学を視察した折のエピソードを読みました。学者の案内役を務めたのはBBC(英国放送協会)のディレクターです。視察中、一言も日本語を話さなかったそのディレクターは、最後の懇親会の席では流暢な日本語を話し、『平家物語』や『徒然草』にまで言及したそうです。柔道家でもあり、武道を通じて日本の古典にも精通していたと言います。
もし私たちが、イギリス人の学者を本学に迎える立場になったらどうでしょう。相手とシェイクスピアやディケンズ、オースティンの作品について流暢な英語で語り、クリケットにも通じている――そのような姿を想像すれば、このディレクターの教養の深さが分かります。
では教養とは何でしょうか。このエピソードを紹介した心理学者・梶田叡一氏はこのように述べています。「歴史、文学、身体・言語感覚など、それら全てを動員して目の前の事象を、深く広い基盤に立って理解できる、この『知的な厚み』こそが教養である」(2026年1月11日付『聖教新聞』)と。
夏休みに入りました。学生の皆さんは、教養の基盤を培う貴重な時間です。やがて「知的な厚み」を備えた人となるために、ひと夏を良き芸術に触れ、旅や読書に費やしてはいかがでしょうか?
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